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第70話「ツードの街」



「にゃー!!数の暴力なのだぁーーー!!」



持ち前の器用さでUFOオルゴートを操作しながら魔法を避ける。

テントウの殻に火魔法は致命的なので最優先で避けて、其の外は出来れば回避。

ワードさん、はるなんちゅの運転しているオルゴートはまだ無事だがタクトパッパの操縦するオルゴートの殻は取れてしまった。

避けきれない魔法はセシィマッマが昇竜炎の炎をどういう理屈か打ち上げて落としている。母は強し。にいさまの操るオルゴートはたわしが定期的に分身を飛ばしているのでまだ殻にダメージは無い。


全員で話し合った結果免許持ちが操縦する事になったのだが生憎4人しかおらずたわしが本を読み込んで知識・器用さチートで運転する事になってしまったのだ。


1人一台オルゴートをアイテムバックに詰めて出立したのがつい30分程前のこと。

馬を使って進む駅馬車の2倍の速度でオーガリア大陸に入りツードの街を目指していたたわし達はついにローゼリア軍と衝突した。


ツードの街はちょっとした要塞のようになっており入り口は狭く高台は広く点在している。上からの魔法攻撃は覚悟していたもののここまで雨霰に降られれば速攻で殻なぞ砕けてしまいそうだ。

それぞれのUFOは搭乗員のモリブタ通信で接続されており常に会話が行える。


『はるなんちゅ!!たわしの殻は耐久が無くなってきてるのだ!!』『アタシはモンスターちゃんに犠牲になってもらってるから大丈夫よぅ!!』『俺の方はセシィが頑張ってくれてるからなんとかなってるが!もう持たないぞ!!』

『ソウルさん!右から来ますよぉ!!次左前ぇぇぇえ!!!』『オートマより遥かに難しいよこれぇぇえ!!ノイムちゃん!ダメージ、ないよ!!』

『ねぇちゃんん!!怖いってぇぇえ!!』


たわしの車がドリフト走行をするせいか、かざむが超絶ビビっているのが聞こえた。


『とりあえず無事な4人でタクト号をサンドして門に突入するぞ!!中に入ったらそのままパラディール城に突っ込んで退避するんだ!!街に入ったら自動判定でオルゴートは勝手に解除されるからな!』

すぐそこに見えた門に全員でチキチキマシン猛レースだ。


先頭のはるなんちゅが目の前に何十人かいる有象無象のプレイヤーを躊躇無く轢き飛ばす。逃げている人すら執拗に進路を逸らして轢くよう操作しているような気がするが、もしそうなら本当にやっていい事なのか疑問が湧く。人数が減るのは良い事なのだが。


『突っ込むぞ!!全員武器装備してくれ!!タクトは、はるさんの後ろ!ノイムさんはタクトの後ろ!』『わかった!』『タクト!次軽く右に寄って!』『残ったのもやりなさい』『わかったのだぁ!』『ソウルさんはノイムさんの後ろ!!俺はその後ろに着くからな!!集合場所はパラディール城玉座前!!』


土煙と共にツードの街に乗り込み、はるなんちゅのオルゴートが消える。

そして旅芸人の特技、《スポットライト》がはるなんちゅを包み込むと敵の矛先が一斉にはるなんちゅに向く。

『アタシが引き付けるからパラディール城に』『ハルさんっ行っちゃうの?!』『マジですか?!』

そう言ったはるなんちゅは既にスカラベキングに乗馬?しておりオルゴートに負けない速度で集団を引き連れて行く。お陰で行きやすくなったものの、はるなんちゅが移動したのはパラディール城の反対側だ。

現状最強の盾、最強の矛であるはるなんちゅが消えた事にテロルやかざむが不安そうな声を上げるが仕方ない。


『テロル、かざむ!たわしの近くに来るのだ!鎖と羽根で飛ぶのだ!』

『異議ィ!アリぃ!』『わかったぁ!』


『私は昇竜炎でノイムちゃん達に着いてくわ!タクトはソウル君と一緒に後ろ守ってて!』

『気をつけろよ、セシィ』『テロルちゃん!かざむくん!俺の代わりにノイムちゃんを守ってくれ!!』


心配性のにいさまの声に顔がニヤついてしまいそうになる。


「テロル、かざむ!しっかり捕まるのだ!いくぞ!!」

腑抜けた気持ちが晴れるようにツードの門の両サイドに鎖を張って一気に巻き上げた。


「異議アリですってぇぇぇえええ!!」


空中に重力の反動で飛び上がると今度は《漆黒の翼》を発動させる。

チェシャ猫レディスーツの背中に空いたハート穴から黒い翼が飛び出して空を滑空する。

パラディール城は屋上がモブ兵士の訓練場になっていて、玉座の間はかなり近いのだ。


正面から入るよりは簡単だろうと思って空から行こうとしたが、気がつかれていないだけでプレイヤーの影がチラホラ見えるものの、ボスゾーンに送り出してくれるNPCやその仲間達の姿が見当たらない。


「ナイスちゃんと親衛隊の皆さんが見当たりませんね…」「どこ行っちゃったんだろ」「NPCは奴隷にしてるって話があったから、多分奴隷に?」


NPCのナイスちゃんは神の器である巫女の血を引く女戦士だ。オーガ特有の赤鬼肌と豊満な胸、髪色は金髪、装備はビキニアーマーな彼女はパラディール騎士団に所属しており役職は団長、メインストーリーではツードの街の狂言回しを担っていた。

当然かの如く、くっ殺要素も僅かにあり一部猥界ではかなりの人気を誇っている。

今回はナイスちゃんスレ民の妄想で行われていたくっ殺状態が現実になってるかもしれない。


屋上の上でスキルを発動させる。


「体力は一体につき10消費、十体分。《身代わり》。《残像》も十人分。」


グンッと体力が削れるので片腕に抱えたかざむに薬草を食べさせてもらう。


上からたわしと同じ見た目のドワーフ娘が降り注ぐ。その後ろから格闘家のスキル、昇竜炎でタクトパッパとにいさまを足にしがみつかせたセシィマッマが着地の構えでブーストを行っている。


ツードの街で集中砲火が始まった後に連絡が行っていたのか、屋内から大量のプレイヤーが湧いてきた。


「「クモノ」」


たわしと《身代わり》分の分身達が捕獲網を射出する補助呪文を唱えるとたわしを含めた11人分のクモノが生成される。分身達の射出したクモノの威力はとても控え目だがその一瞬が有効に働いた。

セシィマッマから飛び降りたタクトパッパとにいさまがスキルを展開しながら降り立つ。


「《捨て身》《雷神の槍》《斧無双》!!」

「《火炎付与ファイアエンチャント》!《かばう》!」


にいさまはバトルソルジャーのスキルの《捨て身》とゲームにはないオリジナル武器、ハルバードによる槍スキル《雷神の槍》と斧スキル《斧無双》のコンボだ。

タクトパッパはにいさまに戦士のスキル《火炎付与》を行い《捨て身》のバフで防御値が下がった無防備なにいさまの致命傷を受ける姿勢に入る。


燃え盛る炎が渦を巻きそこから雷の素早い突きが合わさった結果、巨大な赤い竜巻になってプレイヤー達に襲いかかる。


そうしている間にも次々と現れる刺客達プレイヤーにクモノを射出して、二人がカバー出来ない所をテロルとセシィマッマが仕留める。


「マッマ!ジャンプして下さい!!《アイス・ロック》!!」「ごめんね!《昇竜炎》!!」


プレイヤーの足元をテロルが凍らせて足止めされた彼等をセシィマッマが昏倒させた。


「ナイスちゃんと城を返すのだぁー!!」「ガォォッ!!」


たわしとかざむの雄叫びがパラディール城に響き渡った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

玉座の間に慌てた様子のオーガの男が長い黒髪を靡かせて駆け込んできた。


「グッド、どうした?」

「マイクさん!侵入者です!…ぁ、すいませ…


ッがァッ!ゆ、許して、下さい。誠に、申し訳、ゲホッゲホッ!」


失言をしたグッドの喉に植物のツタが絡んで、マイクと呼ばれた中性的なエルフの怒りを伝えた。

もがくグッドの謝罪を受け取ったその人物はやれやれとした顔で首からツタを解放した。


「このキャラはローゼリアだ、次は無いぞ」

「ゲホッ、はい……」



「んでどこからだ?」「正面から特殊なオルゴートが5台です!中にいたプレイヤーはわかりませんでした!」


グッドは首筋に作られたアザを抑えながら報告した。


「チッ、《視界共有》……へぇ?」


マイクと呼ばれたプレイヤー、ローゼリアはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。


「ノイムに兄貴じゃねぇか!こりゃ傑作だなぁ!!」


その名前にグッドは聞き覚えがあった。


「(ノイム?!ボーフゥで会ったアイツか!?て事は、はるなんちゅも来てんのか!?)」


「グッド、ドワーフの男女とオーガの男女、性別がわからねぇがキャットシー2匹とエルフだ。攻撃しても逃げねぇってコトは十中八九ツードの状況を理解して侵入してる。


見つけたら殺せ」


「……はい」


そう言って玉座の間を出たグッドは内心パニックになっていた。


「(俺に、はるなんちゅとノイム、その仲間達を殺せだって?)」


ボーフゥの街で仲良くなった桃桜の葉のチームメンバーを思い出す。


『アタシのチーム入らない?グッドちゃん!』

『たわしはもう気にしてないぞ!』『グッドさんも入るのー?!』

『グッドさん、私はチーム入りますけど、どうですか?』

『俺達も入ろうと思ってる』『タクトが決めたなら行くわ!』

『まぁ無理に今決める必要ねぇさ、な?ヒメカツ?』『そうだよー!!ハルさんもノイムちゃんも面白いから入るつもりだけどね〜!!』


ツードの街には高レベルプレイヤーが大量におり、その中でもグッドは弱い部類だ。


ヒメカツさんが捕まったというのはチムメンの人間として知っていた。


無力故に伝令の仕事を与えられたグッドにはそのヒメカツが収監されている場所を調べるので精一杯だった。


『グッドちゃん、自分のチームが嫌になったら来てねん!

アタシはね?逃げる事も出来たのに助けようと帰ってきてくれた、勇気ある貴方を歓迎するわん』


そう言って、優しげで柔和な笑みを浮かべるエルフの、ターコイズの瞳がグッドの記憶から消え無かったのは彼、否彼女の魅了によるものなのだろうか。


「(ヒメカツさんを、アイツらを、助けねぇと)」


遠いボーフゥの地で結ばれたえにしが動き出した。

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