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第69話「大忙しの日」



「おっほほほ、いい子ねん!」


「キュリュィィィィ!!♡」


はるなんちゅが褒めたそのモンスターはいつぞやのスカラベキングだ。昆虫の節々を持つ生き物が唾を飛ばしながら喜んでいる。


うん、可愛くはない。


何をやったのかスカラベの尻尾爆弾は破裂しないまま大量に地面に転がっている。


細い糸が絡まっているように見受けられた。


よく見ると下位モンスターのスカラベベイビーが糸を吐いてコーティングしているようだ。


「ベイビーちゃんも頑張り屋さんねん!!偉いわよぉ〜ん♡」


「キュッキュッ♡」


スカラベベイビーはまだ可愛い分類に入りそうだがアレを触れと言われれば無理だ。

兜付きの芋虫風モンスターだもん……!


はるなんちゅはモンスターを撫でたり、触ったりして益々魅了の力を強めている。


「あっちの子達は上手くやってくれてるかしらねん?あらやだ素敵〜!!」


今度は獣系モンスターの群だ。


「モンスターのフン?!」


下位モンスターのファンシーキャットが空を飛んで次々と仲間を連れてくる。それらを片っ端から魅了してはモンスターのフンを出すように命令し、木桶にフンヌ!と爆撃していく。


桶を中堅モンスターのマジカルトレントが木の根で器用に掴むと自身の根本に撒いて、どんどん成長する。


成長するトレントから定期的に一枚の葉っぱがはるなんちゅに献上される。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

世界樹の葉

レア度A

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

仮死状態であればどんな傷も癒せる奇跡の薬。

錬金術のアイテムとして利用可能。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


鑑定してみて驚いた。

大都市ターノシにあるカジノの交換景品だ。

入手法はそこしかないので、今のこの世界ではかなりの貴重品だ。

うちのチームでは戦闘狂のにいさま以外は大量に持っていなかった。


「ノイムちゃんには全てが終わるまで、生きててもらわないと、かざむちゃんが困るもの!!」

「はるなんちゅ……、ありがとうなのだ……」


はるなんちゅがオホホと扇子で口元を隠す。


トレント工場とは恐れ入った。


コクホウ大陸特有のモンスターは妖精や植物、動物や虫に関するモンスターが多い。


そのモンスターの数だけ彼等の生態があるのだ。


僅かなヒントから一つずつ生態を解明して利用していくはるなんちゅ。




「敵わんよなぁ、はるなんちゅには」


モンスターは戦闘に繰り出させるだけだと思っていたので感嘆した。


「あにゃ、なぁはるなんちゅ」


「どうしたのん?」


「アレ、UFOにつけないか?」


たわしが見つけたのは中堅モンスターのオオホシテントウの脱皮殻だ。


薄ら黒い透明な脱皮を触るとカブトムシの外皮に近い触感がある。


「あん、いいわねこれ。羽部分だから開閉も出来そう!やりましょ!!オオホシテントウちゃーん!!脱皮殻集めてねん!!」



はるなんちゅが指示を出す。

オオホシテントウの脱皮殻をアイテム化させてスカラベキングに跨り速攻で作業場に戻った。


「キュエキュエッ♡」


オオホシテントウ達が恥じらうように脱皮を始める。


可愛くは、ない……。








オルゴートに装着する台数分の殻が集まったのでしっかり乾燥させてから装着した。雨風も凌げるだろう。


脱皮殻を一部持ち手にする為に切り落としてあり、そこが唯一の隙間となっている。

攻撃されれば殻が破壊されるまで持ち堪えられる、その後こちらからもスキルを敵に打ち込んで対応出来そうだ。


試しにどれくらいの耐久があるか実験した。

雷魔法と氷魔法は最上位クラスを8発。

火魔法の最上位クラスは4発耐えれるようだ。




準備を全て完了する頃には8人乗りのUFOオルゴートが10台も出来上がった。


「にいさま!着替えたのだ……な……」


「ノイムちゃん、……どう?似合ってる?」


にいさまの装備も新しく新調するとは聞いていたが、控えめに言って最高なのではなかろうか?


鑑定を行ってみると創世の祝福で作られたものなので、元々つけていた最強クラス装備より性能が高かった。


武器も新調されていて、閉所での取り回しがしやすい柄の短いウォーハンマーから開所向きのハルバードに切り替えたようだ。


元々ゲームに無かった武器だが、スキルは斧スキルと槍スキル、棍スキルが適応されたらしい。


二刀流ウォーハンマーの時と違いメイン武器はハルバード1本のみのようだ。ハルバードで対応しにくい相手に関してはアイテムボックスにショートソードを2本入れておく事で解決との事。


防具はどこか日本甲冑に似た朱色の装備だ、セシィマッマの持っていた獣の皮をなめして作られており、トレントから得られる樹脂を使って金属板と癒着、コーティングが施されていた。


動きやすく軽いが防御力も高い、そんな一品となっている。


頭部は鉄の鉢金で守られている。頭を正面からかち割られる心配は無さそうだ。


にいさまの孔雀緑の髪と深いルビーの瞳、魚人特有の薄青の白肌に似合う、素晴らしい装備。


無言で甲冑に触れ、間近でその技術に感嘆しながらにいさまの顔を見上げた。


少し間を開けすぎたのかしょんぼりした顔になってしまっている。

似合わなかったかと思っているのかもしれないが、そんな事は一切ないぞ!


「にいさまの魅力を引き上げて、守ってくれる素晴らしい装備なのだ!!

にいさまがいつもの10倍カッコよく見えるのだぞ!!写真撮って永久に保存したいのだー!!!」


そう言って低い背を伸ばして足にハグをすると、みるみる笑顔になるにいさま。


「本当?はるさんに太鼓判押されてたけど、自分じゃどうにも不安だったんだ」

「ほんとに本当!にいさまのルビー色の目に合わせて朱色にしたのだろうな!控えめに言って最高に似合ってるのだ!!」


上機嫌になったにいさま抱き上げられて、一緒にクルクル回る。にいさまの笑顔を見ると心がポカポカするのだ。


「にゃはー!目が回るのだー!!」


そう言いながらテンション高めにイチャイチャしていると、下から嫉妬の念が籠った声がした。


「おいこらバカップルー!!イチャイチャしてんじゃねぇですよーー!!」


「にいさま、このまま手の力抜いてー」

「え」

にいさまの拘束が緩んだので、回転の勢いで身体を捻り三回転アクセルで地面にビシッとポーズを決めながら降り立つ。


「ふっふっふ〜、非リアのテロル君ではないかね!!たわしになんか用かい!!」



片眉を上げてニヤリとしながらテロルに振り向き対応すると、テロルの顔面が破顔してクスクスと笑い出した。


「っふふ、器用さに物を言わせて、人を笑わせに来ないで下さいっ!危うく目的が頭から飛ぶ所でしたよ!」


てっきり煽ってるんですかー!!とか言われそうな対応したが、テロルはたわしの意を正確に読み取ってくれたようだ。


「そう言ってもらえるなら、やった甲斐があったぜぃ!!」


そう言いながら親指をグッとした。


「危ないから急にやんないの」

にいさまにデコピンをお見舞いされた。ちょい痛い。


テロルがそんなやりとりをクスクスと笑いながら横目で見つつ、懐から試験管を取り出した。


「全くこのリア充共、嫉妬しますよ?

げふん。本題なんですけどコレさっき完成しました。魅了治療薬です。一人5本配布してますが、ノイムさんは必要ですかね?」

「あー、装備のおかげで状態異常にはならんから大丈夫だぞ!」


「まぁそうだとは思いました!なんで代わりにこちらを進呈しますね」


そう言ってにいさまに試験管を5本渡した後、更に懐から取り出される物があった。

種が五つ入った試験管だ。


「巨大薬草の種です。地面と接触すると種のまま大気中の水分をかき集めて、1分後に爆発的な成長をします!思考する面はアレと違って無いので、気軽に使って下さい!」


とうとうバイオテロにも手を出したか。


かざむが育てていた意思のある巨大薬草からもらった葉っぱで新たな品種製作を行ったようだ。フィールドがこっちに不利になった時やいざという時の回復手段に出来るのがメリットなのだろう。かなり助かる。


「味はメガシャキレタスと同じになってますから、青臭い薬草よりずっとマシになってます!」

「にょほぉおおお!さてはオメー神様だな!!めちゃくちゃ助かるぅーー!!」


中都市キララのクイーン戦で、呪文での回復が出来ない状態にされた。その時、拷問に近い治療をしたのは記憶に新しい。一段落ついた後、青臭く苦い薬草をモリモリ食わされた時はマジでしんどかった。


かなり助かるというなんて表現は訂正だ。

咽び泣いてテロルに抱き着いて喜んだ。


「ほらほら、とりあえず食べてみて下さい」


お試しにテロルがくれた通常サイズの薬草を頬張ると、たしかにメガシャキレタスの味がする。噛むと水分と僅かな野菜の甘味が出てくる。更に泣いた。


テロル……愛してる……!!




「じゃあこちら預かるわねん!ありがとうテロルちゃんかざむちゃん。


…いいわねん、これで準備完了よーぅ!!」


チャリリーン!


はるなんちゅがコウモリブタに荷物を配達するよう依頼コールをした。

送られたそれぞれの木箱には世界樹の葉やテロル作の状態異常を回復出来る万能薬、レアドロップの幻惑草の粉をまぶした昇竜花火が大量に入っていた。


幻惑草はボーフゥで巨大カラスに使った覚えがある。テロルの工作活動で加工済みだ。

トレントのレアドロップだったとは知らなんだ。


あまり数は収穫出来なかったので粉末にしてまぶした所、昇竜花火にまぶす事で幻惑範囲を高める事が出来たらしい。


はるなんちゅがボーフゥのカラス戦で使用した昇竜花火は中級モンスター、ボムドラゴンのレアドロップなのだが製造方法は……うん!!


たわしあんな所からゲームで盗んでたなんて知らなかった!!知りたくなかった!!



「それじゃあ、食事を取ったら出発するわよぅ!皆ノイムちゃんの食材のカット手伝ってねん!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



はるなんちゅ、セシィマッマ、タクトパッパ、テロル、にいさまが一緒に食事の準備をしてくれる事になった。


やみつきピーマンやスタミナニンジン、メガシャキレタスを薄切りカットしてもらう。


たわしは大鍋を二つ並べて本日2回目の調理だ。


コムギパウダーにうましおソルトと清めの水を用意して固めに練り上げる。

粉が付かなくなるまで練り上げながら硬すぎれば水を追加、柔らか過ぎればコムギパウダーを追加していく。


打ち粉をして耳たぶぐらいの固さになったらセシィマッマから貰った布で包んで休ませる。

その間につゆの準備だ。


「ノイムちゃん、さっきモンスターからもらったんだけど、これ入れられるかしらん?」


「……しいたけ?」


はるなんちゅが差し出して来たのはどう見てもしいたけだった。


「《鑑定》」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あじわいムーシュ

ランクB

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

深い森の奥で見つかる味わい深いキノコ。植物系のモンスターの好物。

水に漬けると良い出汁が出る。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱりしいたけじゃないか……?」


クンクンと嗅いでみると椎茸特有の深みがある、土っぽい菌類の匂いがする。

毒はあるとは書いていないので一つ焼いてみる事にした。


とりあえず石突を切り落として四等分にカットしてオリーブオイリーと炒める。キノコ類は火が通るのが早く油も吸いやすい。うましおソルトとつぶつぶペッパーを軽くかけて炒め合わせて火を止め、一口。


次の瞬間、芳醇なキノコの香りが口腔内を駆け巡った。噛めば噛むほど出汁が染み出してくるのが分かる。


ホームシックを刺激するこの味はまさしく………



「うん、椎茸!!」


早速つゆに投入することにした。

傘はスライスして軸は指で裂く。器用さのお陰でかなり細めに裂けたからいい出汁が出ると思う。つゆは塩と野菜の旨味だけを使ったシンプルな温かいスープにしようとしていたのでベストタイミングだった。


異世界に来てもう少しで一ヶ月。日本人として味噌や醤油が恋しい。


作った塩水を小鍋で温めて沸騰させたら火を止め、加工したあじわいマッシュを投入する。次にセシィマッマやタクトパッパ達にカットしてもらった具材をつゆに入れ、再び火をつけた。


具材に火が通ってきたら、芋製でんぷん粉を水で溶かして回し入れて手早くかき混ぜる。



透明感のある餡が完成した。


たわし以外が茹でると黒焦げになってしまうのでうどんも茹でる。


タクトパッパが作ってくれた、水が10リットルは入りそうな大人数用の巨大な鍋に水を入れ沸騰させる。


「ノイムちゃん、これうどんね?」

「セシィマッマ、ありがとうなのだ!」


セシルマッマに隣来て、うどんの乗ったまな板を運んでくれる。踏み台に乗ってうどんを受け取り、湯気が上がる鍋に投入していく。


「セシィさん!持ってきたよ!」


かざむが危なげな足取りで肉球を床にペタペタさせながらカットされたうどんを運んでくる。


「お手伝いありがとうね、かざむくん」


セシィマッマがかざむが転倒する前に素早く受け取りお礼を言う。


「また持ってくる〜!」


うどんをカットしているにいさまとパッパの隣に空のまな板を携えてうどんを待ち構えるかざむ。


「なぁマッマ、かざむにやらせていいのかー?」


マッマからうどんを受け取り、鍋に入れながら尋ねる。


「確かに危うく見えるけど、かざむくんも役に立ちたいのよ。積極性は伸ばさないとね」

「にゃ、マッマが良いなら良いのだが」


さてあと1回分か。


「持ってきたーーっぁ!」


スローモーションでうどんが舞い上がりまな板の転がる音がした。

鍋、もう一個追加しとこ。






「ごめんなさい……」


頭を下げて耳をペターンとお辞儀させているかざむである。


「大丈夫よ、今回は量が多かったのね」

「落としたの、食べれなくなっちゃた……」

「あらあら、知らないの?かざむくん」


うどんを拾い集めて、軽く打ち粉を払う。


「ソウルくーん、落ちちゃったみたいなんだけど湯掻いていいー?」

「俺は気にしないんで大丈夫です!」


「タクトはテロルちゃんとワードに聞いてみて〜」

「わかった」


パッパが実験スペースに声をかけると遠くからオッケーですよ〜と言うテロルの声が聞こえる。そのまま二階に上がって行く。

ワードさんが睡眠に入ってからまだ5時間程だがあまり寝れなかったようで、タクトパッパと一緒に降りてきた。


「俺もそんなに気にしないから大丈夫だぞ、かざむ君〜」




「皆、怒らない……」

「沸騰させたお湯に入れて茹でれば良いのよ、ノイムちゃん、お願いね?」

「丁度新しい鍋が沸騰した所なのだ〜」


うどんを釜茹地獄送りにする。

先に茹でていた方から一本取り出して食べた。もうちょいかな?


「良かった……」

「今日は大変だからしっかり食べて頑張りましょ!」

「うん!!」


お、良い茹で具合だ。


「《腕力強化》《皮膚硬化》、よっこいせ、誰か踏み台を流しに置いてほしーのだ〜」


たわしが持ち前の器用さで鍋を持って地面に降り立つ。


「かざむくん、出番だよ」

「っ俺やる!!」


かざむがズリズリと踏み台を移動させて流しにセットしてくれる。


「ノイムちゃん、ザル置いたわよ〜」

「マッマありがとなのだ、どっせい!」


はるなんちゅの編みザルに茹で上がったうどんを着地させる。《皮膚硬化》で熱々のうどんを掴む事も容易い。


手際良くマッマが用意してくれた木のラーメンどんぶりにうどんを分けて行き、先にタクトパッパとにいさま、はるなんちゅとテロルの分を完成させる。


上から餡かけをかけて完成だ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

デリシャスうどん

ランクA

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深い森の奥で見つかる味わい深いキノコを使用したあじわい深い餡かけが猛威を奮った一品。汗と涙と親愛が揉み込まれたうどんはコシがあり美味である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

料理効果 取得経験値100%↑

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


経験値は正直ハズレのような気がするが、無いよりは良いのかもしれない。


100%アップなら2倍だな!


マッマとかざむに皆を呼んでもらう。


そろそろたわし達の分も出来上がりだ。


ちょちょいのちょいっと!



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デリシャスうどん

ランクA

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深い森の奥で見つかる味わい深いキノコを使用したあじわい深い餡かけが猛威を奮った一品。汗と涙と親愛が揉み込まれたうどんはコシがあり美味である。

頑張ったのでオマケ付けときます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

料理効果 取得経験値100%↑

     取得レベル低下

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なんかフレーバー変だわ……。

レベル低下とか書かれてるけど大丈夫かー?


……まぁ料理効果は6時間で消えるから気にしないのだ。


机に並べて皆で食卓を囲む。


「手を合わせてください!!」


かざむが号令をした。


「いただきます!」


「「いただきます!!」」




懐かしいかよぉ。


大変お待たせしました

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