第67話「報告エトセトラ」
「っヒメカツー!!離せ!ヒメカツをどうするつもりだ!!」
「ワード!!ワード!!!」
「お前達こそ、何をしている!!ここは女王のお膝元だぞ!!!不敬と知っての振る舞いか!!言うことを聞け!!」
「ッこの世界の王族を無理矢理立ち退かせておいて何が王族だ!!お前らなんか!ただの異物なんだよ!!」
「言わせておけば!!!」
目の前のエルフの男が槍装備を構える。
「《雷鳴突ーー》」
「っ《ソウルダンス》!!!ワード!!逃げて!!」
「この女ぁ!くそっ!」
ヒメカツが《ソウルダンス》で周囲の足をもつれさせ、絡めとる。もちろん発動されかけた技もキャンセルだ。
「絶対!!っ絶対助ける!!!待ってろヒメカツ!!」
オーガリア大陸へと続く跳ね橋へと駆け出して懐にあった二人用のオルゴートを起動する。バイクのような起動音が響き、空中でパーツが生成される。
「待てぇ!!反逆者ぁ!!」
「待つかよッ」
跨いで、前屈みになり、オルゴートを無我夢中で動かす。
交通の利便性が向上した、車離れが激しい元の世界でオルゴートを扱える人間は多く無かった。
現実世界でのバイクの扱いと変わらないオルゴートを、運転出来るアドバンテージ。それもありきではるさんは俺を派遣した。
助手席にいるはずだったヒメカツは、いない。
自分の不甲斐なさに歯を噛み締めて、アクセル全開でコクホウ大陸へ突き進んだ。
「コウモリブタ!!はるさんへ連絡!!」
ここで止まる訳にはいかなかった。
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「ヒェ」
たわしの口から情けない声が出る。
こんな薬草をかざむが作ったなんて全く信じられん。
なんか意思疎通してるし……。
「えへへ、凄いでしょ!嬉しいとプルプルすして、怒るとムキムキポーズするんだ!!」
「にゃ、にゃー、凄いねぇ!かざむ頑張ったねぇ!!よーしよし!」
そう言って満遍な笑みを浮かべながらキラキラした目で見つめてくる弟を褒めない奴はいないのだ。
かざむが見てない背後で薬草が怒るポーズしてるし。
撫でられてかざむの尻尾が小刻みに震えている。
主人が褒められて嬉しいのか巨大植物も震えている。
知能高くねーか……?
「おっほほほ、流石ノイムちゃんの弟ねん!」
「嬉しいが嬉しくないぞはるなんちゅ!」
なんならこの薬草、他にもいるらしい。
遠くにいるテロルが薬草に土下座して葉っぱを要求すると仕方ねぇなぁと一枚分けているのが見える。
いや、だから、知能高ぇのだ。
桃桜の葉に新しい仲間が加わった。
たわしがはるなんちゅと一緒にいるとにいさまが声をかけてくる。
「はるなんちゅさん、戻りました」
「おかえりなさい!それで、どうなったのかしらん?」
「あー、キララの話ですかね?それじゃあ中にでも……」
「あらやだ鈍チンねん!ノイムちゃんとの仲よーう!!」
たわしはッ…ダンゴムシッ…!!
「っっくく、ノイムちゃん顔がしわくちゃだよ……、
……彼女と一緒に生きる事になりました。はるさん、桃桜の葉に入れてください。」
「そう……、これからノイムちゃんをよろしくねん!泣かせたら掘るわよーぅ!!」
にいさまは元いたチームを脱退して桃桜の葉に移籍した。
「んにゃ…、あ、はるなんちゅー、ワードとヒメカツはー?」
「二人ならセラ親子と合流したみたいねん。
ただ、今のツードの街めっちゃきな臭いわよん」
トージの街でお子さんを迎えに旅立ったサブリーダーのセラさん。
どうやら行き先はオーガリア大陸の中都市ツードだったようだ。
「なんでも向こうにいるプレイヤーがゲーム時代の王族をパラディール城から追い出しちゃったんですって。……もっとヤバいのはここからでねん。街のNPCは軒並み奴隷にされちゃって奴隷扱いして働かせてるみたいなの。
王族だけはプレイヤー感での内紛で逃がせたみたいなんだけど、解放派は占拠派にバレないよう過ごしてるってワードちゃん達が言ってたわん。」
はるなんちゅが窓を開けて空気の入れ替えを行う。外ではテロルとかざむ、セシィマッマとタクトパッパが戯れている。
「……?そんなやばい場所からなんで皆移動しないのだ?解放派とか関係なく街を出て行けば良いんじゃ……」
「出してもらえない、らしいわん。王族を中都市から逃がした人間のプレイヤーを反逆者として捕まえて、見せしめに拷問よぅ。
その反逆者を外に逃がそうとする者も、漏れなく全て反逆者。」
「トージよりはマシかもしれないがそれでも酷いことには違いない……、あれ、ツードって空と繋がってるから隙を見て住宅への転移石で逃げればいいんじゃ?」
にいさまがよくわからないという顔をして質問するとはるなんちゅがため息をついて肩を落とすす。
「それが出来たら苦労してないのよーぅ。原因不明、転移石は使えませんって感じ。んで更に言うならセラの娘ちゃん、どーも反逆に加わっちゃったみたいでねん、指名手配中で外もうろつけない訳」
「うにゃー、八方塞がりじゃないか」
「そそ、んで」
『はるさぁぁぁぁぁん!!!』
会話を裂くようにして少しノイズが入ったような声が聞こえてくる。
開け放たれた窓から緑色のコウモリブタが飛び込んではるなんちゅの胸にダイブした。
『俺の代わりにヒメカツが捕まっちまった!!守れなかった!!!』
コウモリブタが悲しそうな顔ではるなんちゅを見つめる。
「落ち着きなさいワードちゃん。まず追手はいるのか、それとアジトがバレてはいないか報告なさい」
『アジトはバレてねぇ……っ、追手もオルゴートで撒いたからもう他の奴は地平線の彼方だ……』
通話の遠くからバルルルッと機械が駆動する音が聞こえる。
「そのまま転移は使わずにボーフゥに入りなさい、そしたらアタシの転移石で帰ってくる事。敵のチームは掴んだのかしら」
『敵のチームはクラバト攻略ブログ一位のローゼリアを筆頭にした新しいチーム、というかもう宗教団体だ。ローゼリアの信者ばっかりだぞ。ただ宗教というより、こう、まるでさ……こう言うとはるさんには申し訳ないんだけど』
「いいわよぅ、言ってごらんなさいな」
ゴニョりと言葉を濁しかけるワードとは対照的に、ローゼリアの名前を聞いたはるなんちゅの声の鋭さが増す。
『えっと……まるで、はるさんが今従えてるトージ組みたい、なんだよ。会話してみても、洗脳されてるようにしか見えないんだ……』
はるなんちゅの元で暮らすトージ組、女性の尊厳を踏み躙った罪で今は農奴として生活していたはず。
あまり関わった事は無かったがワードさんは思う所があったようで、そうはるなんちゅに伝えた。
「道理で過激な奴しかいないのね、それならもうプランAで行くから帰ったらすぐ準備するわよぅ。ソウルちゃんも手伝ってねん」
「あの、はるさん、プランAって?」
「あらやだアタシとした事が!!プランAはねん、アタシの魅了の力に物を言わせた全面戦争よぅ!モンスターによる数の暴力で圧殺してやるわん!!」
「プランAってカッコよく言ってたけどただのごり押しじゃねーかぁ!」
大変お待たせしました。ようやく一番書きたかったツード編に入る事が出来ました。今年もあと僅かになってしまいましたが、完結までどうぞよろしくお願いします。




