第54話「創世の祝福」
解体術や料理系スキルの事をリュウさんに話す。
「まずは解体術を使ってみてくれ」
解体術を発動すると頭に無感情な音声が流れる。
『使用する対象を選択して下さい』
自分の視界にメニューが映し出される。
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・床
・アクリル質ガラス
・リュウ
・ドワル
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多分このドワルさんって人はさっきのマキュア使ってくれた子だな。
どうやらたわしの視界に入っているものが選択肢に入れられているようだ。
……人間も解体の選択肢に入るのかよぉ!!
好奇心で試したくなったが今はその時でないと思考を変える。
指でアクリル質ガラスを選択した。
『使用する道具を選択してください』
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・フライパン ……0%
・包丁……0%
・素手……0%
・キリングハンド……0%
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「リュウさん……アクリル質ガラスを選んだ後使う道具セレクトする場面が全部0パーセントなのだ」
「成功率の事か?0パーセントなのだとしても小数点以下が表示されてないだけなのかもしれんとりあえず発動してくれ」
フライパンを選ぶとホログラムをまとって手にフライパンが出現する。
このフライパンはタクトパッパが作ってくれた鉄フライパンだ。
かなり頑丈なハズ。
選んだ後メニューがスナイパーライフルスコープのようなアイコンに変化し、壁にあったたわしのものではない血痕のガラスに照準を合わせる。
少しでも確立が上がるかと思い腕力強化とガラス対策に皮膚強化を同時に使用する。
腕が硬化し筋肉が一回り肥大化する。
限界まで反対側に押し倒したゴムやバネのように力を移動させ、解き放った。
バァァァァンッッ!!!
と大きな音を立ててフライパンがヒットする。だがしかし。
「傷1つついてない……」
「とりあえず今日は1000回当ててみるぞ。時間はまだある」
鬼なの?鬼なのリュウさん??
インドアにキツイ、スポ根マンガのような要求になんとか答えた。
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流石に千本ノックは辛いのだぁ……。
解体術のレベルが4に上がったものの、相変わらず数値は0パーセントであった。
休憩中メニューを眺めていると『ここで調理』の選択肢が目に入る。
現在アイテムボックスが使えないようになっている。スキルを使えば取り出せる事が先程のフライパンで明らかになったので、出来るかと思いメニューの『ここで調理』を押すと寝転がっているたわしの隣にオーブン付きコンロが出現した。
サブ職の活動も出来るか試す人が増えた。
サブ職を持っている人はメニューで『ここで調理』のような選択を選ぶとアイテムボックスにあるサブ職の作業台がホログラムを纏って現れる。
……これ、使えるのかな。
【創世の祝福】
カルテットから授けられたこの名声称号、改めて鑑定を行う。
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創世神カルテットに祝福された証。これを持つ者とその仲間の作った作成アイテムの効果が2倍になる。
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素材を出すのもスキルのみに頼るしかない為、劣悪ではあったが武器も防具も作れた。
タクトパッパはリアル知識があるものの、ファンタジー武器を作る事は出来なかったようでスキルに頼らざるを得なかった。
加えて都合良く手持ちに材料が全て揃っている人も少なく、装備可能性レベルが低い武器や防具が多く目立つ。
周囲から完成品を見て驚愕と感嘆の声が上がらないのを考えると祝福が適応されてないように思えた。
祝福は指定しないとダメなのか?
頭の中で祝福の範囲をケース内にいるプレイヤーに設定する。
「……皆注目なのだー!!簡単なやつでいいからなんか一個作ってステータス見てほしいのだー!!」
そう言った後に完成した人が驚いた形相でこちらを見てくる。
「ノイムさーん!効果が倍になってるぞー!!」
リュウさんが自分の作成アイテムを見て声をかけてくる。
何が起こるかと完成品を見るまで動かなかった人も次々と生産作業に勤しみ始めた。
装備可能レベルが高いとその分装備効果などが高いが、制作難易度もその分高く、スキル頼りだと作ればするものの、スロットが減ってしまう。
スロットは錬金術効果が何回付与出来るかに関わってくる。たわしの怪盗レディスーツは器用さ極振り。スロットはゲーム内最高の3つだ。もちろん付与は全て器用さ+15にしてある。財産の3分の2もはたいて……うぅ……。なんで呪いの防具に……。
そんな大事な装備のスロットまで変質してないか確認したくなった。
通常のステータス確認だと相手のレベルと職業しか見れない。装備やサブ職は見れないのは確認済みだ。
見えないものの詳細を表示する《鑑定》を使って自分の腕装備のスロットが見えないか試してみる。
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腕:チェシャ猫バンド(破損データ)《Lv1》
冒険神キリングの加護が失われた、真紅のバンド。
チェシャ猫の尾を彷彿とさせるようなシマシマ模様が特徴的。
このアイテムは両方の手に見えない鎖を発動出来る呪いがかかっている。
器用さに大幅な補正がかかる。《0.1倍》
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《スロット 〇〇○》
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今まで見えなかった隠れたデータが現れ、たわしは絶望した。
「(たわしの金策が無駄にぃ!!)」
叫び出したい衝動を抑えてのたうち回る。
スロットが……3つ全部……空っぽ……。
たわしがビクンビクンしているとリュウさんがこっちにくる。
「海岸のフナムシみたいな動きしてどうしたんだノイムさん」
「フナムシじゃないのだー!」
その日の夕飯は料理スキルで作られた異世界ごはん彩り各種。
たわしは材料をはるなんちゅに全て預けてしまったので、ご相伴にあずかる事にした。
あぁ、はやくオレンジピールが食べたいのだぁ。
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『ナルホド、コレガ人間ガ食ベルモノカ』
スタディグ像は食い入るようモニターを見つめながらそう呟いた。
小都市ハコナカにある植物園から配達された植物から、実際に使われた材料をピックアップして箱にしまって行く。
近くにある巣箱から子供を奪われまいと働き蜂が石像に毒針を突き立てる。が、その石の肌を穿つ事は出来なかった。
しかし、今日の石像は巣箱を漁る事なく材料を持ち出し、刻み始めた。
疑問を感じ興奮が収まってきた働き蜂だが油断は禁物、先手必勝とばかりに石像のあちこちに毒を流そうとする。
見よう見まねで料理を始め、出来た料理をツタに囲まれた透明な箱の前に持っていく。
『スタディグ様、本日のお品でございます』
働き蜂がお辞儀をする石像の頭にドスドス毒針を突き立てる。
透明な箱の中。エジプトの王族に似た装備を付けた黒髪のドワーフが静かに眠っていた。
石像が料理を置くとツタの一部が剥離し、皿を残して中身を攫っていく。
ツタが球状の水膜を張り、透けた内側で具材が周りつつ分解されていく。まるで水風船の如く膨らんだソレを黒髪のドワーフのいる水槽へと上から落とす。
ドワーフの口へ、ストロー状になったツタが差し込まれ、ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて食事が流し込まれていく。
『……本日モ、オ目覚メにナラナイノデスネ。』
興奮が収まった働き蜂が石像の身体を這い回っていく。
時を告げる時計代わりの植物ミズコヨミが、今日も自身の体内に蓄積された水を逆さまに返し、体内が乾燥し切らないように、
けれども貴重な水をゆっくりゆっくり消費出来るように、ポタリポタリと水滴を落としていく。水分が必要だったのか、水辺に伸びた管からミズコヨミへと水が運ばれていく。
その近くには枯れ果てた幾多ものミズコヨミがあり、一部は土に還っていた。
水さえあれば永続的に子孫を残し続けるミズコヨミは半月で新しい身体を用意し、半月で水の全てを移し替える。
移し替える際にはこうして上下をひっくり返し、必要最低限の量の水を送っていくのだ。
それが行われるのは一日の終わり、丁度24時間である。
『スタディグ様ガ眠リニツイテカラ、今日デ300年デス。記録年数ヲ更新シマス。』
今日も石像は、その虚無を封じた瞳に星空を作り出す。
それらはスタディグが眠りについてから毎日生み出された空であり、そして宇宙であった。
新しく、いつもの星屑ではない、巨大な惑星が一つ生まれた。
石像の身体を這っていた働き蜂は興味を無くしたかのようにその冷たい肌を蹴って空中へ羽ばたき、優雅に舞いながら巣箱へと戻っていった。
『本日ノ、イバラを切除シマス』
巨大な剪定鋏を構えた石像は外部との接触を阻む程伸びた出入り口の黒いイバラに歩み寄る。
既に動力室のイバラは動力源のエネルギーを吸い取り切除してもすぐ戻ってしまうくらいの生命力で再生してしまう為手付かずとなっていた。
放置したイバラはみるみる増殖し、スタディグ達を外に出すまいという意思を持っているかのように毎日出入り口に立ち塞がるようになってしまったのである。
『伐採完了』
いつも通り砂漠の星空が見えるようになり、伐採を終えて充電の為ホームに移動する。
エネルギーを充電する時間が日に日に長くなり、稼働時間が短くなる中でも、スタディグの食事とイバラの伐採は欠かせないルーティンワークだった。
仕事を終えた石像の瞳から、人工の宇宙が消滅し、力なく腕を下ろしてホームに座り込んだ。
今日も明日も、石像は主人が目覚める日を待っている。
作者多忙の為、二ヶ月更新出来なかったので今回は2話お届けします。




