50話「ハードモード」
「……ノイム、ちゃ、ん」
「にいさま近い近い近い近いってぇええ!」
目が覚めたらイケメンに抱っこされていた。
しかも恋人の兄という背徳感溢れるフレーズ。
流石にぃ、流石になぁ!!
「にいさまぁ!流石にダメなのだぁ!!」
「ノイ、ガッ、うぇっ、ゲッホゲッホ!!」
たわしの手刀がにいさまの喉仏に刺さる。
痛いだろうが流石に離してくれるだr
余計に強く抱きしめられる。
たわしがいくら踠いても、離してくれる気配は一向に無い。
「ノイムさん、今はそのままにしてあげてくれないか」
タクトパッパの声が聞こえた。
なんとか頭をにいさまの胸から肩の位置に移動させてパッパの方を見る。
「たわしだってここまで色々言われたりやられたりしたら!!
鈍チンで惚けるのも難しいのだぁ!!」
正直今のたわしの顔はめちゃくちゃ真っ赤に違いない。
捨てられる側だったのがいきなり好意を向けられる側になるなど誰が想像出来るだろうか。
ゲーム世界、いや、正確には異世界なのだが、ここに来たから彼が精神的に少しおかしくなったのかもと思ってスルーしてたのは事実だ。
そうしなければ、今まで築いてきた関係を壊してしまいそうで怖かった。
ノイムであった頃は彼女自身で華麗にスルーしてくれていたものの、伊乃夢としてメインを張れるようになってから彼女が殆ど表に出さなかった恥ずかしさや緊張が一気に襲いかかってきたのがわかる。
正直死ぬ、恥ずかしすぎて死ぬ。
助けてぇ……!!
ーーググッ
突然、たわしの腕が強い力で引っ張られる。
「にゃ?」
わぁいにいさまと一緒に空中浮遊だぁ……。
ついでにブランコだぞ手が千切れるぅううううう!!
「ぎにゃぁあああ!!痛い痛い痛いにいさま降りろぉぉおお!!!死ぬ死ぬ死ぬ!!」
カシャンという金属音がしたその瞬間、2メートルぐらいの高さから紐なしバンジーで落下した。
「にいさま……許さん……」
身体の節々がジンジンと傷む。
オーガと会話をしているドワーフの男の子が突然マキュアを唱えるとにいさまに黄色のオーラが降りてくる。
え、にいさま麻痺ってるの?
にいさまの腕の力が緩んだ隙に脱出する。
にいさまが急激に咳き込み始め、口から半透明な黄色の結晶を吐き出した。
それにしてもさっきの謎浮遊は一体何だろうと考えていると、オーガの男性が話しかけてくる。
「お前、生き返れるのか?さっきの能力はなんだ?」
ケース内の空気が緊張に満ちたのがわかる。
「んー、とりあえず自己紹介するぞぉ、たわしお前って名前じゃねーのだ。」
「あ……すまん、動揺していた。申し訳ない。俺はリュウ、格闘家だ。たわしさんと言うんだな、色々聞かないといけないんだ。頼む」
「ごほん、たわしの名前はノイム!たわしは一人称なのだ!義賊をやってるのだ!あとハム○郎とか言ったら処すのだ!
とりあえず、話を聞くぞぉ」
「俺が聞きたいのは三つ。
ノイムさんはどんな感じで死んでしまったのか。
また、どうやって生き返ったのか、
今までと何か変わった事はあるか。それを教えて欲しい」
「一つ目、まずたわし達は楽チンジョウロの紋章が発光した意味を探るためにここに来たら巨大なロボットに襲われた。
ロボットの持つ大量の触手アームを処理した直後に変なガスが撒き散らされて、んー、たわしが吸い込んだのは麻痺だな。
身動き出来ないうちにまだ残ってた触手アームで心臓を抉られて、身体が凄い冷たくなって頭が働かなくなったのだ。
麻痺してなかったらめちゃくちゃ痛かっただろうな。そのまま博物館に運ばれたんだと思うぞぉ」
「待った、そのロボット、腕はどうなっていた?」
「んぇ?五体満足だったぞ?破損してなかったし……」
リュウさんが顔に手を当てる。
「苦労が水の泡か。とりあえず一旦置く。次を頼む」
「二つ目は、気がついたら、一面真っ白な空間にたわしは魂だけでそこにいた。……ゲーム時代にさ、種族神っていたの覚えてるか?そこに、創世神カルテットと、智神スタディグがいたのだ。
で、死んだから元の世界に帰れなくなったって言われた。
このままだと新しいシステムに組み込まない限り消滅しちゃうって話をされたから、たわしは受け入れた。新しいシステムに組み込まれたら今まで過ごした地球での行いと、ルトテッカに来た後の行いを総評して、スキルをもらえたのだ。
あー……ごほん。
んでスタディグが言うには今ルトテッカは何故か他四人の神との交信が途絶えててこのままだとスタディグやカルテットの身も危ないって言ってた。あくまでたわしの予想だけど、創造神が消えたらこの世界終わるんじゃないかと思う。
んで、スタディグ的にキララは元の世界に帰りたい人用のシェルターらしいんだが、この有様、どこかでバグが発生してると思うから解放してこーい、って感じで送り出された。カルテットを守る結界を維持する為に現界出来ないとかなんとか。」
腕が痒くなってきてポリポリかくとカサブタなりかけの傷口が出血した。
さっきのスキルで擦り切れたらしい。
「死んだら元の世界に帰れない……またノイムさんが死んだらどうなるかは聞いてないのか?」
「んー、生き返る事は出来ないって言ってた。まだって単語が頭についてたからそのうち生き返るのではと推測してるぞ」
「そうか…ん?ノイムさん、手首切れてないか?」
「あー、さっきのスキルの暴走でなったのかと。僧侶のお姉様ぁ、治して下さいなのだぁ」
一息置いてヒールがくる。
いつものように皮膚に入った光が繊維状に輝いて……輝きを失った。
「うわぁマジか……すげーハードモード……」
「以前の魔法が効かない身体だから蘇生が出来ないって事か」
「これが三つめの以前と変わった事の説明にはなりそうだなぁ……とりあえず、回答は以上なのだ」
「ありがとう、……脱出しようとは思っていたが割とリスキーだな」
リュウさんは眉間にシワを寄せて考え込んでいた。
うーむ、色々と内緒にしてしまったが良かったのだろうか?
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