第48話「新世界へ」
「この街は現在何らかの不具合が生じている」
「えっ、あのロボットは不具合のせいなのだ?」
「私の姿を象った石像があっただろう?本来ならキララは元の世界に帰りたい、というプレイヤー達のシェルターになる予定だったんだ。石像が帰郷派の人間を見分けて、移住派の人間は放置する筈でな。だがおかしな事に伊乃夢。お前は移住派だったのに保護の為に狙われている。
そして殺された。
保護を目的としているのに、な。
という訳で伊乃夢には博物館の調査をしてもらいたい。私の予想だと動力室に原因がある筈だ。」
スタディグが博物館のマップを出してくれる。
「現在のお前の体が安置されている場所がここだ。他のプレイヤー達もこの展示ケースの中で生存を余儀なくされている」
「えっ、安置?!たわしの身体今どうなってるのだっ!?」
「心臓を中心に出血多量、エンプティヒール等の回復、もしくは蘇生魔法の行使が一定の時間内にされなかったから伊乃夢は死んだ。簡単に言えば、ケース内を血液で汚しまくった後血抜き済みドワーフ娘として転がってるぞ」
「うわぁ…」
血抜きされているという事は身体中の血液が外に出ているという事。聞いた話によると体重の3分の1が血液の重さらしい。五歳児くらいの大きさのたわしは2リットルくらい?
ケース内の人に多大な迷惑をかけてしまっているようだ。早く戻らねば…。
「そんな話は置いといて、だ。
全員帰郷派と移住派で分かれている筈なんだが、どうやら一緒くたになって放り込まれているらしい。他の奴に協力を仰ぐなら帰郷派の奴はこのケース内に置いていけ。一番の安全地帯だ。」
スタディグの言葉が電子文字となり電子地図の上に配列されていく。
「脱出方法はないのか?」
「本来なら中の物が外に出たり持ち出されないようになっているから、その警備システムを止めなきゃダメだろう。だが今の私はカルテットを守るこの空間を維持する為に現界出来ない。制御パネルも原因の動力室にあるから、ここで操作する事は無理だ」
スタディグ自身は物質へ直に触れなければ材質や構造がわからない。現地でたわしが調べないと脱出方法がわからない有様だった。
「さて、スキルが発動するか確認してくれ。そうだな……伊乃夢に渡したピアスに《鑑定》をやってみろ」
スタディグに促され、言葉を発する。
「《鑑定》」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
エーテルメモリー・ピアス
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ランクSSS
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
空の輝きや星の動く場を指し示し記憶するエーテルメモリーをピアス型にしたアクセサリー。
現在地周辺の地図を自動的に作成したり、記憶したいと思ったもの全てを記録する事も出来る。
通常のエーテルメモリーと違い、智神スタディグの欠片が混入されている事でピアスで触れた物体の材質を解析したり、スタディグと通話を行う事が可能。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これがエーテルメモリーっ?! 高レベル難易度 天空の花 の?!」
テロリストが頭につけている天空の花。
あれはエーテルメモリーの周辺に咲く花だ。
肝心のエーテルメモリーは…例えるなら運動会の玉転がしくらいの大きさ。
つまりめちゃくちゃデカイのである。
フィールドオブジェなので採取も不可能だった。
そんなアイテム自体に価値があるエーテルメモリーを使ったピアス…。
「ランク高すぎ盗られるの怖すぎで笑えないのだ!!」
「む、そうか。なら外れてもいいように追尾機能をつけておこう」
スタディグが一瞬ピアスに触れた。
「詳しい事はまた話す。すまないがもう時間が無い。暫しの別れだ伊乃夢よ」
スタディグとカルテットの姿が透けていく。
「いってらっしゃい、世界の希望」
カルテットが慈母の微笑みを讃えながら、たわしに手を振り、エールを送ってくれた。
完全に視界が白くなった時、頭の中にシステムの声が鳴り響いた。
『名声称号【世界の探求者】【叡智の従僕】【創世の祝福】を獲得しました。
【世界の探求者】の称号により、何らかの異変が起こった際、痕跡が光を放ちます。
【叡智の従僕】の称号により、全ての時代のルトテッカ言語が自動で翻訳され、その知識を理論的に即座に理解します。
【創世の祝福】により、自分や仲間の作成アイテムの効果が2倍になります。
お待たせしました。




