第47話「ギャグキャラドワーフの異世界転生」
「次はスキルの接続を行う」
映画フィルムのような、たわしの人生史がたわしの身体に巻きつき始める。
現実の〝私″も、ゲームの〝たわし″も、全部含めて、スキルが具現化していく。
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『お、お母さん、ご飯の作り方、教えて』『……凄い料理効果なのだ』
ーースキル『調理』Lv10(MAX)を獲得。
『私より年上の癖に何してる!風夢を虐める奴は私が許さない!!』
『たわしをアイツの所まで飛ばして欲しいのだ!!』
ーースキル『窮鼠猫を噛む』Lv6を獲得。
『待って、お願い、一人にしないで』『たわしはノイムですのだ!よろしくお願いしますのだ!』
ーースキル『偽装』Lv9を獲得。
『どうしたら、愛してもらえるの?』『待って!偽善でもいいから聞いて欲しいのだぁ!』
ーースキル『思考』Lv8を獲得。
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走馬灯のように流れ込む記憶とスキルが頭に次々と流れ込んでくる。頭が痛くて目を閉じようとも流れ込む情報は消えてくれない。
「他の人間に比べて、お前はスキルの取得が多いな。」
スタディグが何か言ってるけど、たわしは未だ止まる事の無い自分の走馬灯を理解して処理するので一杯一杯だ。
接続は待ってはくれない。
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「スタディグ、あの子の接続は終わった?」
創生の女神カルテットがドワーフの種族神スタディグに語りかける。
「いや、取得するモノが多くてな。まだまだかかりそうだ」
「そう……ごめんねスタディグ。私が、頑張ってる子等は元の世界に返してあげたいって言ったばかりにツードのモンスターを弱くしたから」
カルテットの空色のウェーブがかかった髪が重力に従って前に流れる。
スタディグが慌てて屈むカルテットの手を取って顔を見る。
「謝るのはこっちの方だ、気に病むなカルテット。予定より選定の日に出た死人が少なくなったのは我が目測を誤ったからだ。本来ならボーフゥとツードで大量に魂を回収する筈だった」
目の前で大量のスキルを溜め込むノイムをスタディグは見やる。
「弱体を一切されてないカラスコロニスが負けるとは思わなかった。此度のドワーフ娘はどのスキルを賜ったのだろうな」
「私が加護をあげたから、良いものが手に入ってるハズよ」
「……!?カルテット!何故そんな無茶を!!」「キリングの声が聞こえたの」
スタディグの呼吸が一瞬止まる。
「キリングは、なんと」
スタディグの震えた声が何もない真っ白な空間に木霊した。呼応するかのようにカルテットの声がスタディグの緑色の耳に流れ込む。
「この子は、多数を生かす為なら、多少の無茶をしてでも目的を成し遂げる力がある。皆を解放するなら彼女にはカルテットの加護が必要だ、……と。
それを最後にキリングの声は再び途絶えてしまいました」
「……冒険神のアイツが言うなら、間違いないな。動揺してすまない。」
五つの神達の残滓は土地や種族、自然、装備にも存在している。スタディグは他の神達の声が届かないのは、外界と隔絶されたこの空間に至るまでの残滓がないからだと推察した。
キリングは猫妖精の種族神だ。スタディグ以外の種族神の行方が未だ不明の今、彼が一番に接触出来た事は幸運と言って良かった。
旅神でもある彼のお告げは必ず当たる。ならば、このドワーフ娘に託すのも悪くないだろう。
スタディグは歩み寄り、自らの意思のカケラを閉じ込めたピアス型の魔道具を苦しげに頭と身体を抑えて倒れているノイムに取り付ける。
「ギぃッ…!」
脳味噌からむちゃくちゃに伝達される知識に対する神経の痛みに加えて、勝手に開けられたピアス穴への痛みに歯を食いしばるノイム。
「そのピアスは私の脳を経由する事で情報を整理する手助けをしてくれる。お前は私の加護で頭の回転を良くしてなお取得が遅い。一体お前は何者だ。」
痛みが軽くなり、話す余裕が出来たノイムはやっと息を吸う。
そして、ーー
「わッ、タシは、たわしは、ノイム、やめて、藤葉、伊乃夢が縋る、違う、理想の存在。」
スタディグはその言葉に疑問を抱いた。ノイムが、自身を理想の存在だと言ったからだ。
だが、それなら何故、『やめて』『違う』などの言葉が挟まってくるのか。
優秀なスタディグの脳はノイムの言葉を聞くのと同時に理解した。
「……通りで処理が遅い筈だ。二つの人生があるなら処理も2倍になる。」
「そうなのだ、違う、たわしは、私は、ずっと一緒にいた、見捨てないで」
「ノイム、この世界じゃ、お前がベースだ。伊乃夢をどうしたい。そのままじゃ不便だろう、消す事も出来るぞ」
ゆっくりとノイムは立ち上がってスタディグを見る。
「たわしは、消さないで、伊乃夢を、死にたくない」
口から出る言葉は人間が二人いると証明するかのように紡がれる。
「伊乃夢聞いて、嫌、たわしは君の理想なのだぞ、……、
君はずっとたわしに気がついて無かったのかもしれないし本当は今まで通りで良かったのかもしれない。
けどたわしがここにいる事は事実なのだ。伊乃夢。君の理想は困ってる人を一時の感情で見捨てるような奴だったかい?……、スタディグ、待たせてごめんなさいなのだ。
たわしは伊乃夢とずっと一緒が良い。でも、たわしはたわしじゃなくて、
たわしは伊乃夢で有りたい。」
スタディグは理解し難い顔をしつつも、承諾した。
「向こうの人間ってのは、よくわからんな。」
ノイムのピアスに触れるスタディグ。
「良いか、伊乃夢。お前は臆病過ぎるんだ。もっと自信を持て。『お前の助けを待つ者はまだ大勢いる。精一杯悩んで、全力で助けてほしい。』この世界を向こうから助けるのは限界だった。力を貸してくれ。」
ノイムの中にいる伊乃夢が表に出てくる。
「ゲームの始まりと、一緒なんだ?」
伊乃夢はゲームスタートの時に謎の声が自分のキャラクターに話しかけるシーンを思い出した。
「……覚えてくれていたのか。誰の記憶にも残らないと思っていたのに。」
スタディグはじわりと目を潤ませた。
「今までの死人で、お前しか覚えていないとは皮肉なモノだな。
事情を話す。協力してはくれないか、伊乃夢。」
スタディグはノイムではなく伊乃夢に語りかけた。その形容し難い輝きを持った瞳は真っ直ぐ、ノイムの中にいる伊乃夢を見つめる。
「私に出来る事ならば!」
伊乃夢が、己の意思でノイムになる事を受け入れた瞬間だった。
感想ありがとうございます、非常に参考になりました!今まであった違和感の謎が解けた気がします!
皆さんも奮って評価等下さるとありがたいです。




