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第42話「ぬくもりにつつまれて」




日が暮れて来た。



奴隷達は適当なものでいいだろうと思い、大きな鍋に沢山のビッグポテトを入れて蒸した。


マヨネーズもどきとうましおソルトをつけて食べればいいだろう。



タンパク質も取ってもらうため、謎肉も食わせることにした。


一個500gの肉の塊を並べたフライパンで焼く。


その数30個。


それらだけではバランスが悪そうなのでビタミンを取らせるべく、すっきりレモン汁を砂糖、水とまぜあわせてレモネードを作る。




…べ、別に心配なんてしてねーのだ。


病気になられたら嫌なだけだし!






さて、今日の夜ごはんは何を作ろうか。



残っている材料を確認する。



うましおソルト70個

つぶつぶペッパー48個

コムギパウダー84個

あまあまシュガー76個

オリーブオイリー61個

ライスローズ77個

とろりんたまご65個

カモンチーズ52個

まっしろミルク89個

グレントマト58個

やみつきピーマン85個

まんまるオニオン80個

スタミナにんじん92個

メガシャキレタス90個

ビッグポテト47個

すっきりレモン80個

さわやかオレンジ88個

ブロックミート(謎肉)55個


とりあえずスタミナにんじんとメガシャキレタス、まっしろミルクが有り余っている。


ついでにライスローズも。



うましおソルトもあるのだし、今日は疲れた。


少しくらいスキルで作ってもバチは当たらんだろう。



既存のこの世界に存在している料理を作る事にした。


必要なのは七人分なので全ての材料は7つずつ消費させよう。


まずは材料の消費を抑える為に手動でカットしていく。



スキルで開いたレシピからとろうまリゾットのレシピを選択する。


やる事が表示されるのでその指示に従って作るようになっている。


この時、スキルを使用すれば食材のカットから熟成時間や加熱まで、様々な手間を短縮させるのに利用できるのだ。


味が少々落ちて料理効果が少なくなってしまうが、質量倍加というスキルもある。



ランクが落ちる条件はスキルの使用が二回を超える事だ。



今回は戦闘もしないただの食事なので料理効果は必要ないだろう。


心置きなく倍加を使わせて貰う。




まず、材料を全て鍋にぶち込む。



スキル、均一加熱を発動させて材料全てに火を通す。


次の瞬間ボフンと水蒸気で視界が白くなる。


ゲームの体じゃなければ大火傷で重傷になっていたであろう熱気が襲う。



視界がクリアになり鍋の中味は煮えたぎっていた。


はるなんちゅ製の木のおたまで少し味見。



味は落ちていなかったが材料が四分の一消費されたようだ。



ん?四分の一?


……この世界に来た時実験した時と何かが違う気がした。


減る量が減ってるような、……まぁ気のせいだろう。


もうすっかり食べられるが人数が多いので絶対足りない。


蓋をして倍加を発動させた。



味見をしてみる。



レストランで出せるレベルから家庭で食べるレベルにまで味が落ちる。


所謂普通に食べれる程度。


まぁ美味しいかなと感じるくらいだ。


不味いとは思わない。


倍加を使ったので料理効果は少なくなる筈だったのだが、まさかの消失。


……その代わりか、たわしの実験した時より味が美味しいとはこれいかに。



とりあえず完成。



ゲームレシピなので本来の材料じゃ出せない味付けも出来ている。


コンソメの味とかバターの匂いみたいなやつだ。


デザートにさわやかオレンジを配っておく。


食べつつ皆でお互いの成果を話し合う。



「はい!じゃあ私から!雑草ですが、スキルによる交配実験を行なった結果、太陽光を浴びるとめちゃくちゃな速度で成長して巨大化する事がわかりました!


しかも石の上でも成長します!ビバ雑草根性!

レベルは26でしたが今回のおかげで28レベルに上がったので今後は軽い毒物などにも手が出せるかと思われます!」




テロリストが毒物研究のためアップを始めたようです。



「俺とセシィは皆の要望に合わせて作ってただけだから割愛でいい」


「テロルちゃん凄い頑張ってたから私達も頑張れたよ、お互いお疲れ様!」



マッマは褒める事を忘れない。


聖母だぜ……。


テロルもまんざらでもなくオギャりそうな顔をしている。



ちなみにたわしは大きなクマさんプリントのクマさんパンツを作ってもらった。


マッマ凄いよぉ……バブゥ……。



タクトさんはもはやこのチームにおける産業革命家だ。



報告する程ではないと言いつつ、日常で使う道具を沢山作ってくれた。


これでまだ鍛冶屋のレベル35と言うのだから

とんでもない技術力だ。


さてはオメー、リアル鍛冶屋だな!



はるなんちゅとかざむは農園に進展があったようだ。


ゲーム世界ではリアルタイム一週間で成長していた植物の成長速度がえぐいらしい。


このままで行けば5日で収穫出来るとの事。

また、かざむのジョウロで水をあげた植物はその5日かかる植物よりも、成長を早めている。



「私の雑草を育てさせたらどんぐらいヤバイのできるんでしょうか!楽しみです!」






wktkするんじゃねーのだバイオテロリスト!








たわしとにいさまで作った料理はホットケーキを除いて、はるなんちゅに献上する事にした。


かざむとはるなんちゅはこのチームアジトに居残って留守を守ってもらう事に。


これで何かあった時にリスクを減らす事が出来る。



連絡が無かったら応援を呼んでもらうように決めて、お風呂に入って寝る事にした。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……ノイムちゃん……それは……」


「んー?スク水なのだが?どうしたのだにいさまやー」



「いや、はは、似合ってるよ、うん」


にいさまはなんだか悟りを開いた賢者かのようにいい笑顔だった。



あ、これもしかしてドン引きされてるやつか?





その後、出来たてホヤホヤの可愛いクマさんパンツをはいて、初日にはるなんちゅから渡された寝間着でお布団に潜り込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



この世界に来てもう三日だ。

現実世界に戻るような兆しはない。


ゲームにはいなかったモンスターはいるし、魔法やスキルは変な使い方が出来るし、そのくせ妙にリアル。


怪我をすれば痛みも感じるし、血が流れる。


回復魔法で治して仕舞えば一瞬で元通りだ。





……今のところは。




もし、はるなんちゅが手出し出来ないような敵が現れたら。


もし、この世界で死んでしまったら。



色んな、かもしれないという可能性が怖い。







だからこそ、それに備えられるよう精進しなければないけない。



それに加えて、私のモヤモヤした思いを。



元の世界への未練を断ち切れるように考えなきゃいけない事がある。




この頭の片隅にある恋人マイクへの想い。





マイクがこの世界にいない寂しさも、忙しさのおかげで忘れる事が出来ていた。




けれど、ゆっくり考えられる時間に浮かんでくるのは決まって彼の事で。




目を瞑って、思い出を思い出すたびに少しの水分が私の耳を濡らす。


声や嗚咽は出ないし身動きもせず雫が滴れるだけなので、見つかる事はない筈だ。



眠れない夜は、泣き疲れて寝落ちてしまうのが私の中で夢に旅立つ一番手っ取り早い方法なのだ。



昔の事だ。


心が寒くて寂しくて、演じなきゃ誰も私を好きになってくれない虚しさ。


ありのままの泣き虫な自分の不甲斐なさ。


演じなければ上手く感情を制御出来ない面倒な自分。


そんな彼女にノイムというネタキャラが生まれたのには、理由がある。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


毎日喧嘩をしている醜いお母さんを見て、怒声を聞いて、磨耗していく子供心。


幼く小学生にも満たない年頃から、たわしはそれを受け入れる事となった。


子供なのに、大人にならざるを得ない家庭環境。



かざむは母にもらえなかった愛情をたわしに求めて、たわしは小さなお母さんになった。




その内、お父さんはいなくなり、お母さんは働きに出た。ビクビクしながら、機嫌の良い時に料理を教えてもらって、簡易的にご飯を作った。




たわし達が生きれるように。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



愛ってどんなものなんだろう、愛が欲しい。


きっと愛されるというのは何よりも幸せになれるに違いない。


愛した分だけ、愛は返ってくるものなのだろうか。



ひたすらに愛されたくて、愛される自分を作った。

可哀想な、恵まれない私じゃなくて。


誰からも愛される、自分とは別の存在になりたかった。





結局、愛されたのは最初だけ。


歪んだ愛の形を持った私は、案の定捨てられる。



捨てられそうになると演じるのを止めて縋りつき、別れを告げられるのは私の恋愛事情には日常的光景だった。




泣き虫が面倒。構って欲しいのがウザい。

束縛するな。お前なんて繋ぎだ。結婚とか夢見すぎだろ。お触りはいいのに本番はダメとか堅すぎて萎える。一々うるさい。

その期待が重いんだ。


私は言われた失敗を元に改善を積み重ねていった。


でも結局皆こう言うのだ。



自分が好きになったお前らしさが消えたから別れると。




私なりに考えて従順に、感情を抑えて、束縛しないように、相手の都合に合わせられるようにと動いた結果はいつもこれだった。





初めては絶対に信頼できる人に渡すんだとそこだけは頑なに意地を張ったおかげで純潔は一応守られている。


ここまでしても彼らは離れていく。合わせてたこっちが馬鹿みたいに思える。

それでも愛に飢えた私に求めないという選択肢は選べなかった。


そうやって何人も付き合ってきたが、現代の男という生き物はとんでもない奴らしかいないのだろうか。


やはり、私の想いは報われない。



愛した人と最後まで共にありたいという私の想いが前時代的で古くて重いのだろうか。


生涯続く愛を求める私がいけないのだろうか。



その内、現実の自分とはまるで違う自分になれる世界に私は出会った。


クラバトカルテット・オンライン。


今のたわしのスタイルが産声を上げた世界だった。



そんな理想を詰め込んだ世界で出会ったマイクも、なんだか今までの人達に似てきていた。


最後らへんの彼の印象は、都合の悪い事はなぁなぁで終わらせて、たわしより遊びの方がいいという感じだった。


それが急に遊ぶと言い出した。


たわしは自分ってチョロいなとは思いつつも、素直に嬉しかった。


それと同時に疑問に思う。


何故、彼は。




思考がクルクルして眠気が回ってくる。




やっと眠れる。





モゾリと誰かが寝返りをうつ音が聞こえた気がした。


瞼が重くて暖かい。


感覚が鈍くなって涙の冷たさがなくなってくる。



だんだん、何かに包まれるように、とても心があったかくなって、本能が指示する欲求に従って意識を手放すーー。








幸せで、優しく、暖かく包まれながら、心臓の音を聞く夢を見た。


抱っこされつつ、頭をいいこいいこされながら眠っている夢の中はとても心地よかった。


これが愛なのかな。


羊水に包まれている赤子ってこんな感じなんだろうか。


あったかい、ずっとここにいたい。


いい匂い。しあわせなのだ。



もっと欲しい、ちょうだい。


お腹いっぱい欲しいのだ。



頭を謎の空間にぐりぐりして催促する。



すると、後頭部を撫でていた感覚がおでこから耳の方に撫でる方向にシフトする。

髪の毛を手櫛で梳かれて、気持ちいい。


そのまま、おでこに柔らかな感覚がして、それがどうしようもなく愛おしかった。







日が昇る直前の早朝、目が覚めた。


いつもより、目覚めの良い朝だったが、起きたのが早すぎたようだ。


タクトパッパとセシィマッマ、テロルが奥で川の字になり寝ている。


はるなんちゅはかざむの隣。そして、かざむとにいさまの間でたわしは起床した。




皆よく寝ている。




……もう一眠りするか。


暖かい夢を見れるかもしれない誘惑に負けて二度寝した。






本編は駆け出し最初の作品である為、表現しきれない事が多々あります。

それでも閲覧して下さる皆様方には感謝の心でいっぱいです。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

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