第40話「博物館」
かざむゲリラ豪雨事件から驚くべき事実が判明した。
25人が楽チンジョウロを二回使わねばならない面積になった畑を弟は4回ほどで水やりを終える事が出来るのだ。
楽チンジョウロをいくら調べようとも皆の持つ楽チンジョウロと同じ素材と見た目である。
ただ一つ、使用時に金属製ジョウロへ刻印されたいくつかの印章が緑に輝く事を除いては。
それぞれのジョウロの輝く印章を確認する。
ゲーム世界では神が存在していた。それぞれの神像や神の憑代であるNPCの巫女を介してストーリーにちょこちょこ現れる。
今のところ出ていたのは5人の種族神と女神カルテットだ。
オーガの男、火を司る武神パラディール。
マーマンの女、水を司る癒神ウォークレイク。
ドワーフの男、土を司る智神スタディグ。
エルフの女、木を司る美神スティングローズ。
キャットシーの雄、風を司る旅神キリング。
そして世界の開拓者である創世の女神、カルテット。
かざむのジョウロには智神と美神、創世神の印章が輝いていた。
「たわしは武神と旅神、創世神だったのだ!皆はー?」
「アタシは武神と美神、旅神の印章ねん」
「俺は武神と智神、旅神だな…ソウルさん、どうだった?」
「俺は武神と癒神、智神ですね」
イマイチ繋がりが見えない。
「……加護みたいなヤツ、なのかなぁ……?」
かざむもよくわからないらしい。
だが同じ加護を持っていても、ジョウロの水はかざむ以外ほぼ一緒だ。
「テロルとセシィマッマ、あとはるなんちゅのペットのヤツを見てみるのだ!」
テロルは智神、旅神。マッマは武神と智神、旅神だった。
ペット達は、旅神のみ。
「……うーん、その人の在り方ですかね?」
「それだとかざむの美神の説明が付かんのだぁ……ついでにテロルももっとヤバイ加護になって……あれ?」
「どうしたんだい、ノイムちゃん」
「旅神ってキリングなのだ?」
なんか引っかかる。
「ウォークレイクも水神じゃなくて癒神っていうのを俺は初めて知りました」
にいさまもなんか引っかかっている。
「ノイムちゃん、今装備してる髪飾りって針子の作ったヤツじゃない?ほら、怪盗レディの……」
サブ職を針子にしているセシィマッマがハッと気がついた顔で確認してくる。
「そうだが……まさかぁ?!」
慌てて外してフレーバーテキストを確認する。
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頭:怪盗レディの髪飾り(装備可能レベル90)
女神カルテットの心を盗んだと言われる冒険神キリングの加護が宿る髪飾り。
器用さに補正がかかる。
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「にゃっ!?冒険神、キリング?!」
「やっぱり!!」
思い出した答えが当たったと喜ぶセシィマッマにバブみを感じてオギャりそう。
「ということは、同じ神でも違う名を重複して持ってるって事か」
「後は賜った時期よねん……」
タクトパッパとはるなんちゅが頭を悩ませる。
「重複している名前、あそこで調べれば見つかるんじゃないですか?」
テロルが声を発する。
「ほら、フィンクス大陸の、博物館がある中都市キララですよ!」
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「出してくれ!俺らは見世物じゃない!」
「装備返してよ!」
『許可出来マセン、ソノ権限ハ貴方達ニ与エラレテイマセン。
餌ノ時間ハ後1時間後デス』
「餌の時間はもう嫌!!気が狂いそうよ!」
「……耐えましょう、絶対、助けは来る。」
この世界に降り立ってから一日が経過した。
キララの住宅村から出た僕達を待っていたのは、街の機能を全て乗っ取った一体の大きなロボット。
住宅村の門は塞がれ、逃げ道は全て封鎖された。
巨大なオリの出来上がりだ。
初めての戦闘に、少人数の戦力、強力な敵。
腕は片腕もぎ取ったものの、様々な状態異常を引き起こすガスにより耐性を積んでいない初級中級レベルのプレイヤーはその場で軒並み全滅。
僅かに残った僕達もそのまま機械のアームに拘束された。
武器と防具をもぎ取られたプレイヤーは攻撃力も防御力も無かった。
格闘家の彼は持ち前の素早さでアームを避けつつ一人孤軍奮闘していたが、所詮は素手。
しかし、機械の身体に攻撃が通っている様子は見られず。
その後、油断した隙を突かれて捕獲された。
ここまでで僕の視界は暗転、気が付けばこのケースの中にいた。
初めての餌の時間は地獄だった。
ロボットは僕達の食べるものを理解していないのか、様々な生きた昆虫や幼虫をケース内に解き放った。
どうやら魔物ではない種類のようだが、精神的にキツイ。
格闘家の彼はカミキリムシみたいなヤツと少し大きくなったシロアリのような虫、ハチノコみたいな幼虫などを見つけるやいなや捕食していた。
気でも狂ったのだろうか。
さらに虫を火魔法で退治していた女の子にコイツを軽く焼いてくれとクワガタやカマキリ、バッタにイナゴ(みたいな昆虫)を並べてドン引きさせた後、焼いてもらった昆虫を甲殻等を剥ぎながら咀嚼した。
その後、彼はガラスケースに向かって技を決めていた。手は青痣に塗れていた。
彼を除いて誰も食べなかった。当たり前だ。
しかしロボットは彼が食べたものが餌になると判断したようで、次の時間は彼が食べた昆虫と幼虫だけを放り込んだ。
彼が火を通した食べ物は全て火が通っていた。
彼は食べた。
皆は食べようとしなかったが、アームが伸びてきて、捕縛され、それぞれの口に1匹の生きたハチノコを押し付けてくる。
僕は食べた。それ以外は全て拒否した。
クリーミーで濃厚な形容しがたい味が口内を侵食した。
彼はハチノコをサッと火で炙って咀嚼していた。
エサの時間終了後、火魔法を使っていた女の子にガラスケースの一部を熱して貰ったらしい。
彼の拳は血豆が出来、破れていた。
3回目の食事の時間だ。
エサはハチノコだけだった。
全て火が通っていて、香ばしい匂いがケース内に充満する。
ガラスケース内にいた4分の1が皿いっぱいに盛られたハチノコ炒めを食べた。
彼はお代わりを要求し、さらに塩と胡椒をかけるよう要求した。
ハチノコを食べた人はもう食虫への抵抗が薄まっているらしい。
彼のハチノコ塩胡椒炒めに目が釘付けだ。
食べ終わった彼は、僧侶の回復魔法で何度も血豆を破っては治す事を繰り返していた。
ガラスケースの一部が、血塗れになった。
そして、数時間後の今。
こんな監視された状況で眠れる人間がいるわけがない。皆精神に限界が来ていた。
たっぷりと睡眠を取っていた彼を除いては。
虫嫌いの人間には地獄絵図だっただろう。
発狂するのも無理はなかった。
こうして冒頭に戻って来たのだ。
次の餌は何が出てきてしまうのだろうか。
お待たせしました、多忙の為また期間が空くかと思われます。ご了承下さい。




