第39話「スーパー農家タイム」
「ようこそ桃桜の葉のチームアジトへ!歓迎するわん!」
「にゃー!にいさま、上がって上がって!」
「えっと、お邪魔します?」
事件の事後処理が終わったのは太陽が真上から照りつける時間であった。
サブリーダーのセラさんはコウモリブタで他の大陸に娘も来てしまったのが知らされ慌ただしく出発していったのでここにはいない。
とりあえずセラさんとその娘さんの為に残りのお弁当二つをあげることにした。
「皆ー!ご飯にするのだぁー!」
たわしが叫ぶと、寝室にある二階から寝ぼけながらヒメカツとワードが降りてくる。
縁側にはタクトとかざむがお腹を鳴らしながら催促しているのが見えた。
セシィマッマとテロルは一緒にいたようで宴会場の一角から現れる。
「「ノイムさん/ちゃんお帰りなさい!」」
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「このオレンジミートって料理、美味しいです!玉ねぎがとっても甘くて、肉の臭みをオレンジ汁で隠しているのに肉の旨味と匂いが上手い具合に柑橘の匂いと合わさってて……とろけちゃいますぅ……お肉やわらかぁ……」
テロルがうっとりとした顔でオレンジミートを頬張っている。
「とろみ付けの粉作るのに苦労したよなぁ、ビックポテトすりおろして俺の火魔法で水分飛ばして……んでその後にヒメカツが」
「歌スキルで細胞高速振動させて崩して……さらにワードの火魔法とヒメカツの風魔法で乾燥させたんだよ!」
この二人の協力がなければでんぷん粉……片栗粉は完成しなかっただろう。
本当に感謝しきれない。
「あぁ、焦げたヤツは畑の肥料になったぞ」
「こっちでも姉ちゃんのご飯はおいしいね!」
「このポテトサラダ、マヨネーズ使ってるの?」
セシィマッマが問いかけてくる。
「にゃ、マヨネーズもどきを作ったのだ。溶かしたオリーブオイリーと、とろりんたまご、お酢が無かったからスッキリレモン汁を混ぜ合わせて出来たぞぉ」
「なるほど、だから後味があっさりしてるのねん!」
お酢が見つかればちゃんとしたマヨネーズが出来るのだがなぁ。
「ノイムちゃん」
「にゃ?どうしたのにいさま」
隣でお弁当を食べていたにいさまがたわしに声をかけてきた。
「報酬決めたから、もらっていい?」
「にゃ、たわしに出来る事ならば!」
「毎日、俺の為に味噌汁を作ってくれないか」
にいさまが、とても真剣な表情でたわしに言う。
にゃう…?どうしたのだ、にいさま。
「うにゃ?味噌汁?味噌がまだこの世界で見つかってな……、あ、毎日一から作るって事だな!
いいぞ! 味噌御殿作れるくらい一緒に大儲けするのだ!」
その場にいた皆が微妙な顔をしている。
たわしなんか変な事いったっけ……?
「じゃあ、味噌作ったら毎日味噌汁作ってくれる?」
「うん!一緒に頑張るのだー!」
にいさまが声質は得て満足という顔をしている。
日本食が恋しくなったのかな、にいさま。
たわしも恋しくなってしまうではないか!
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「はーい、開墾中止!次は雑草抜きよぅ!」
「はるなんちゅさーん!かざむくーん!もしかしたらただの草じゃないかもしれないですから、ここにまとめて下さい!」
なんとテロルは薬師をサブ職にしていた。
「まだ26レベルで初心者に毛が生えた程度ですけど、頑張ります!」
テロルの工作活動に乞うご期待。
愛の奴隷と化した前科組ははるなんちゅの命令の元、黙々と作業を続けている。
雑草以外にも小石などがあったら除去してほしいとかざむがお願いしているようだ。
はるなんちゅが指示を出した。
テロルが引き抜かれた雑草を一つ一つ種類別に鉢に植え、観察を始めた。
ヒメカツとワードは情報収集に出ておりここにはいない。
二人が向かったのはオーガリア大陸の中都市ツードだ。
山を要塞にしたような町で、付近の火山帯フィールドでは過酷な自然を象徴するかのように他の大陸に比べ強めの低レベルモンスターが設定されている。
ツードの町はボス討伐やレベル上げ、強敵相手のレアドロップ金策などの募集が盛んに行われている。
戦闘狂は募集へすぐ行けるように住宅村をツードの住宅村に設定するものが多い。
猛者が集う修羅の大陸、加えて要塞都市。
ここは今回の転移で一番安全な都市と言っても過言ではないだろう。
たわしの種族の国、フィンクス大陸なのだが中都市キララの住宅村が不便すぎる上、他の大陸に比べてこれと言った花もなさ過ぎるのが特徴的だ。
強いて特徴を捻り出すならば、遺跡や博物館、水族館など都市によってテーマが違う事くらいだろう。だが所詮はポリゴン。
現実世界の方が美しい為、ゲーム時代はストーリー以外で見向きもされない、そんな寂れた大陸だ。
色んな意味で不人気ナンバー1な過疎地域の為、モンスターの手であっという間に全滅させられそうである。
はっ、悪い事ばかり考えてはならぬのだ。
気分を変えようと畑を見ると、雑草が取り払われクワで畝が作られていた。
たわしもお手伝いに入る。確認するだけでもかざむの手際はやはり相当なものだ。クラバトのサブ職に何故農家がないのかと運営に聞きたいくらいである。
種蒔き後は手の空いているメンバーで楽チンジョウロを使い水を撒いていく。
楽チンジョウロは畑全体に水を撒ける道具だ。水は無限に溢れ出るし、使用すれば畑の上に突然どこからともなく水滴が降り注ぐ。
ここまで便利だと逆に怖いぞ!
「ホワァァァ!」
かざむのキノ◯オ声が畑に鳴り響く。
皆がビックリしてそちらを見ると、そこにはゲリラ豪雨に見舞われたばかりのようなかざむがそこにいた。
何故そうなったし。




