第37話「イチから始める農業生活」
ノイムちゃんが出発した。
早速かざむちゃんにお願いしましょうかねん。
「かざむちゃん!お姉さんが、住宅村で畑を作って飢饉に備えて欲しいんですって」
「畑は一個しかおけないんじゃ?」
「ここは現実世界と同じなんだと思うわん、畑の個数制限は無くなってるみたいなの」
黒い毛並みの猫妖精が突然考え込む。
「……はるなんちゅさん、クワって作れますか?」
「あー、品質低くてもいいならスキルでいけると思うわん、問題は先端が木だと折れやすい所かしら」
武器でクワになりそうな物はなかった。
「おはよ……どうしたんだ?」
寝起きの鬼人、タクトちゃんから声がかかる。
「あら、おはようタクトちゃん。
クワを作りたいんだけど、アタシサブ職が大工だから鉄製品が作れなくてねん」
「俺、鍛冶屋だけど」
タイミング良すぎて怖いわよアナタ。
「なら、ちょっとこんな感じの鉄を打てないかしらん?」
家具の黒板に備え付けのチョークでカリカリと簡易的な図を書き込む。
「……その薔薇の模様は無理だが、形だけなら問題なく作れるぞ」
「ほんとですか!」
「あらやだ。趣味が出ちゃったわん」
「早速作るか、はるなんちゅさん、棒はお願いする」
アイテムバックから機能付き家具の鍛冶設備を設置するタクトちゃん。
鉄鉱石を炉に入れて融解させる。
剣用の型に流し込んで冷ましていく。
冷めてかたまり始めたら、水に入れてなます。
高音を一気に冷やす為、入れた周囲の水が瞬時に沸騰し熱い水蒸気となって白い煙を僅かにあげた。
剣型の鉄インゴットを炉に入れ、オレンジ色になるほど熱を帯びたらそのまま引き上げて金床の上に乗せる。
大きな金槌が振り下ろされ、綺麗な金属音が室内に木霊する。
剣の型から真っ二つにされたインゴットは四角形にされた後、灰をかけ、再び炉に入れられた。
「しばらく同じ作業になるから、もう作ってくれて構わないぞ」
あらやだ、手際に見惚れちゃってたわん。
「丸太から角材を生成、かざむちゃん、ちょうどいい太さと長さの棒を選んでちょうだい?」
スキルで丸太をカット、角材にした。
悩むかざむちゃん。
「太さと長さ、事案か?」「タクトちゃん掘るわよ」
かざむちゃんがちょうどいい大きさの角材を選んだようだ。
「これがいいです」
かざむちゃんが選んだのは太さ10センチ、長さ1メートルの角材だった。
「あん、了解よう!」
握りやすいようにカンナを滑らせて角を取って円柱にする。
金属音と木の削れる音が音楽であるかのように室内へ響く。
角が取れてちょっと歪だけど、握りやすくなったわん。
「ん、完成」
ちょうどタクトちゃんも作業が終わったようねん。
「刃先の取り付け口はこの大きさなのねん」
取り付け口を木工刀で一回り小さく掘っていく。
釜でお湯を沸かして、加工した木材の先端を茹でた。
こうすると、お湯を吸った木材が柔らかくなり曲がりやすく伸びやすくなるのよねん。
木槌で刃先を穴に押し叩いていく。
木が伸びて穴が拡張されてギチギチの状態ねん。
このまま水分を抜けば、元に戻ろうとする木が取り付け部分をより強固に留めてくれる。
「完成よぅ」
どうなったかフレーバーテキストを見る。
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鉄製のクワ
ランクB
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土地を柔らかい土にする為の農耕道具。
異世界の知識が一部使われている。
握り棒は少し脆い。
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攻撃力70↑
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あれ、これ、ただのクワでしょ…?
「やっだ、ナニコレ。攻撃力めっちゃ上がるんだけど」
「威力としては弟さんの持ってる武器の1.5倍か……」
「ふぁっ?!」
「じゃあ早速耕しましょ!」
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「あらん、かざむちゃんどこ行くのん?」
畑キットを置こうとしている間にかざむちゃんが庭の外に出る。
「何って、そりゃぁ、こうするんです」
アタシの庭の敷地の隣に出来たばかりのクワが振り下ろされる。
地面がザクリと抉られた。
「……うっそぉ」
「だって、もうここはゲームじゃないんですよ?地面だってほれると思いました!」
「流石あの規格外の姉を持つだけはあるな……着眼点が違う」
ビシッとノイムちゃんに似たドヤ顔を決めるかざむちゃんに苦笑いするタクトちゃん。
かざむちゃんはそのまま作業を再開する。
小さい体を使って一心不乱に耕しているが、体が小さい分だけ作業は中々進まない。
タクトちゃんやアタシも新しくクワを使ってチャレンジしてみるも、これが以外と難しかった。
勢いよくやらねば複雑に絡まった雑草の根を断ち切ることが難しい。
しかし上手くいかず何回も同じ所に振り下ろした分だけ根が千切れ、
そこからまた雑草が生えてくるので後々の畑作業にも支障をきたす。
「あーっ、無理!やっぱ力仕事向いてないわん!魅了で操れたらすっごい楽なのにー!」
「普段使わない部分が悲鳴をあげているな……」
やっと慣れてきた頃には集中力が落ち体力も無くなっていた。
アタシもタクトちゃんも慣れない筋肉を使って疲労困憊。
かざむちゃんは普段の畑弄りで鍛えられているのか、私達よりも面積が多いのに丁寧に土を掘り起こして雑草を根絶させていた。
ある意味職人だわん。
疲れた身体を地面に横たえ空を見上げると、どこからともなく緑色のコウモリブタが飛来してきた。
どうやらアタシ宛みたいねん。
差出人はノイムちゃん。
「はぁい、はるなんちゅよぅ」
「はるなんちゅ、出来るかわかんないけど、もう一つ頼みたい事があるのだ」
初めて聞いたわよぅ。こんなに元気がないノイムちゃんの声なんて。
疲れてるけど、聞かない選択肢はないわん。
「……大丈夫よぅノイムちゃん。ノイムちゃんが頼むって事はアタシしか頼める人がいないんでしょう?
アタシは何をすればいいのかしらん?」
さて、どんな話が来るかしらん。
「っはるなんちゅ……!ありがとうっ!!」
ノイムちゃんはトージの町で起こった事件と犯人の処遇について語った。
お願いは、その戦犯達を魅了して使役出来ないか、と。
「トージねん、行くわよぅ。
魅了耐性積まれてると効かない時があるから、念の為に身包み剥いでねん。
あと、ここからじゃ時間がかかるから、ノイムちゃんの家の転移石使わせて頂戴」




