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第33話「勝てば良かろうなのだ!」







早朝、明け方の空を祝うかのように彼らは現れた。







カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン




まるまるさんのフライパンを殴るけたたましい音が静まり返ったトージの町に響き渡る。


敵襲の合図だ。




「手筈通りに!」



ぶっつけ本番、やればなんとかなるの精神だ。



ソウルが視認したのは、限定浮き輪とドア付き壁で出来た大型即席船だ。


フロートを潜ってきたのか姿が現れる。


マーマンが動力となって船を動かし、船の上にはフル装備のプレイヤー達。


そして船上で一番高い場所に座っているのはくだんの格闘家のオーガである。



「おい、テメエらぁッ!!!よくも女を奪いやがったなぁッ!!!!

特に殿しんがりやってた小賢しい雑魚バトマス!!!!テメェだけさ絶対に殺してやる!!!!!!」


ダンサースキルの《スピリット・ボイス》により拡散されたオーガの男の怒号がウォーブルー大陸トージの街に木霊する。


ビリビリとつんざく様は獅子咆哮。

百獣の王が全てを貪り尽くさんと言わんばかりの気迫に慄く一部の味方プレイヤー達。



「グレーテルッ!もう今だ!敵のお披露目シーンであろうが関係ないさ!!」


「メタすぎ!《プロミネス・ファイアボール》!!」


グレーテルに続いた魔術師マジックキャスターが木で出来た大型船をファイア系の炎魔法で燃やし尽くす。


敵の方はアイス系の氷魔法で対抗してきたが

人数はこちらの方が僅かに多い。


相手は競り負け、船には容赦なく火がついた。



「対話など必要ない!徹底的に!雷魔法用意!」


ヘンゼルの指示でボルト系呪文の詠唱に取り掛かる魔術師のプレイヤー。


消し止められなかった船の炎は尽きる事なく海上で燃え盛り、海へとプレイヤーを放り出した。



陸を求め、敵プレイヤーが砂浜に泳ぎだす。


「今だ!かかれ!」


「《ライジングゼウス・ボルト》!!」



第二波はボルト系魔法による総攻撃だ。


海を葉脈のように枝分かれしたボルト系魔法が駆け巡る。


「「ぁぁあ゛ーーーーーーッ!!!!!」」


肉が焼ける音、血が沸騰する音、絶叫、それらが全て魔法によって作り出された。


「っぇ゛…」


味方プレイヤーの中には自分の行った所業に耐えられず吐き気を催す者がいた。


人を殺すという覚悟が出来なかったのかもしれない。


それに対比して、決断したプレイヤーの顔はしっかりと前を向いている。


「まだ……まだ……」


プスプスと煙を上げながら電撃で焼かれた皮膚を引きずりながら格闘家のオーガが立ち上がる。


よく見れば、雷魔法で襲撃されるのは予想していたのか、電撃耐性の装備を装備していた事がわかる。


海底に足がつく距離に到達した敵プレイヤー全てが行動を始めようと試みた。



「…ッ《オールリベヒール》」


相手の僧侶が全体脈動回復魔法でなんとか起死回生を試みた。


《オールリベヒール》はリベヒールの上位互換だ。50ずつHPを回復させる単体魔法のリベヒールの効果が全体魔法になっている。




敵の体から幾多もの回復魔法による再生の光が迸った。


再生をしながら行進する様はさながらゾンビのようだ。


雷魔法にも使用不能時間リキャストタイムがあり、その間に回復されてしまう。


「《スピードチャージ》…」


「…まさか」


《スピードチャージ》は味方単体にリキャストタイム短縮を付与する義賊専用スキルだ。


レベルが高いほど効果が高くなる。


敵の義賊が付与した相手は、鬼人オーガの男。


「《縮地》」


オーガ男のスキルが発動する。



《縮地》の効果でスピードと脚力が上がったようだ。


電撃を瞬時に潜り抜けてタイミングよくジャンプしながらこちらへと、



ソウルに向かってくる。




「全然当たらない!」


「突破されるぞ!」


今、大型網を発動をすることは出来ない。


一網打尽にしなければ、突っ込んできたオーガ以外の敵に警戒されてしまうのが目に見えているからだ。


「俺が出る」


ソウルが相手を誘導する。


「どけオラァァア!!!」


パラディンの盾を蹴って戦士の大剣に飛び乗るのを繰り返しながら、空中を移動するオーガ男。


最短距離でソウルを殺しにかかってきているのが参謀であるヘンゼルから見ても一目瞭然だった。


「ソウルさん!助けに行きます!それまで耐えて下さい!」








「《武人の呼吸》、会いたかったぜェ、クソバトソル!」




相手の飛び蹴りを交わしてジャンプする。




向こうは《武人の呼吸》によってリベヒールと同じ効果が付与されている。


リベヒールの効果が無くなる一分間が経過する前にスキルを使用しているため体力にほぼ全快と言っていいのではないだろうか。



前回同様足を狙ってフェイントの飛び蹴りをしたようだ。


続いての攻撃が来る前に戦線から遠ざかる。



駅馬車の駅がある方面にひたすら後退だ。



「ビビってんのかぁ?!逃げんじゃねぇ!!!」




自分バトルソルジャー一人ではこの格闘家は倒せない。


味方の応援が来るまで持ち堪えるしか選択肢はなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一方、ノイムはトージの街の駅馬車に到着していた。


「にゃー、モンスターいるかもしれないから変装して見るのだ!」


ランブの町で入手したファンシーキャットの不恰好な顔の皮、ドラゴンフライの少し損傷した羽。吸血バッタの甲殻をつけてみる。


「猫!蝶?バッタ!略してネチバ仮面なのだ!


きっと今のたわしを期待キメラの新人だとモンスターは勘違いしてくれるに違いないのだ!」







カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン



「にゃ?!にゃ?!何何ー?!」


音がする方を見ると、テロルとはまた違った毛色の猫妖精キャットシーがフライパンを叩いているのがわかった。


猫妖精は皆テロが好きなのだろうか?




それと同時に民家や宿から大勢のプレイヤーが出てくる。


皆揃って海を見つめているようだ。



海には先程は無かった巨大なかたまりが出現していた。


ヒメカツと同じダンサースキルの《スピリット・ボイス》が使われたらしき怒号が町中に響き渡っている。


それと同時にファイア系魔法の大爆発がかたまりに命中。


名乗り直後に攻撃とは卑怯なヒーローもいるものである。


とりあえず民家に隠れつつ、海岸まで行くとしよう。



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