第31話「命の重み」
爛々と輝く目で腕を動かし始めるヘンゼルさん。
「ノってきたノってきたァッ!」
彼が書き込んでいるのはモリブタバザーにあった『軽い板材』だ。
鍛治設備で精製された副産物の木炭で書き込んでいく。
そこには植物のツタを使ったトラップや拘束具などの記載がされていた。
その後の強固な拘束はアイスで精製された氷を使い、凍傷を狙うようだ。雷魔法で体を焼くというエゲツない処刑方法まで書き込まれる。
最後のだけ見なかった事にしたい。
「んで捕縛方法なんですけど、あいつらの船全部奪ったんなら、泳ぐ事でしかここに来る方法が無いと思うんですよ。
鎧とか付けてたらマーマン以外沈むと思うので、付けないって想定で行きます」
ガリガリと板材に書き込む音が室内に響く。
「この町周辺には殆ど街灯と言えるものがありませんから夜の襲撃はないと思います。
……月明かりが強いのが気になりますが。
まぁ向こうも混乱してるだろうし、襲撃しにくるなら明日かと」
勝負は日中になるだろうという見解だ。
ソウルの脳裏に奪還作戦時のある言葉が蘇る。
ーーやっぱり、殺さなきゃいけないんでしょうか。
「……蘇生はするつもりですか?」
少しの空白。
季節感の無い暖炉の薪がパチパチと爆ぜる音だけが木霊する。
そんな静かな湖面に雫を落とそうとヘンゼルは口をわずかに開いて、少し眉を潜めた。
波紋が湖面に広がる。
「正直、自分も測りかねてます。
なので、……捕まえてからの対応で、蘇生無しの処刑をするかを決めようかと」
「……取りあえず、生け捕りですね」
人を殺すという行動は、相当の覚悟が必要だ。
それが例え誰であろうとも。
「さて、それでは植物のツタの収集を行いましょっか。これが無いとせっかく立てた作戦も意味がないですから!」
暗くなった雰囲気を払拭するようにヘンゼルさんが立ち上がる。
「もう女性たちをあんな目に合わせたくないですもん!あ、ツタ採取と罠設置を手伝える人募集中でーす!」
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夜の静けさが満ちる森、月明かりのわずかな光を反射する魔物の目が輝く。
レベルが高いプレイヤーのみで構成された採取組の気配を感じるなり弱いモンスターは駆け足で逃げ出した。
「……ドラゴンフライも、ファンシーキャットも逃げていくのか」
そこでソウルに一つの疑問が湧く。
町のお菓子が食べたいからと、わざわざ死地に飛び込む弱いモンスターがいるのか?
ランブの町の襲撃事件が不可解に思えた。
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「あっ、ここですここ!」
しばらく道無き道を進んでいくと、ヘンゼルさんがウキウキした表情で駆けていく。
カイガラ草原の一部に存在しているジャングルのような林。
その中心部には巨大なガジュマルの木が無数のツタに覆われつつ鎮座していた。
「早速採取しましょー!」
千切れないように手で引っ張りつつツタを採取していく。
総勢10人程で取り掛かるとガジュマルの木に巻き付いたツタが山のように取れた。
それと同時にツタで覆い隠されていたガジュマルの木の表面が一部露出する。
そこには石版が見えていた。
「何でしょうねこれ」
ゲームの時はポリゴン化されたフィールドを破壊する事自体出来なかった。
「この辺瓦礫多いですからその一部かと思いますけどねぇ」
グレーテルさんがさらに石版が見えるようにツタを引き剥がす。
そこにはルトテッカ大陸の文字で何かが書かれていたが、この場にその文字を読める人は一人もいなかった。
「やたらデカイし、運べないですね。また今度にしますかぁ…ご協力ありがとうございました!」
ツタを抱えたヘンゼルさんが、撤収の合図を出す。
それを皮切りにして、それぞれが持つ転移石を使ってトージの町に引き返していく。
人がいなくなり、静寂が息を吹き返した聖域。
異常な成長速度で新たなツタが石版へ巻き付いたこと以外、何も変わった事は無かった。
大変お待たせしました。
とりあえずひたすら多忙ですが、完結は必ずさせます。




