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第21話「残酷な真実」




ガタガタと馬車が揺れる。


自身の種族の地ウォーブルー大陸へ向かうこの馬車は何やら陰鬱な雰囲気をまとっていた。



「(……ノイムさんになんて言えばいいんだろう)」


それはこちらに来る前の弟の事であった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー





「お前最近ノイムさんとあまり一緒じゃないよな」





弟は2ヶ月前、気になるドワ子がいると兄である自分やフレンドに言っていた。


ノイムさんはかなり鈍感らしく、俺やフレンドの反応を見ても弟の好意を理解出来ていなかった。


1ヶ月後には通話するまでになった弟とノイムさん。

弟を通じて俺もたまに通話して遊んでいた。


時を経て、二人が恋人同士になるのに時間はかからなかった。


そんな二人は側から見ても微笑ましく、そして羨ましくもあった。



弟からそれを聞くまでは。




「正直面倒になってきたわ」


「……お前何言ってるんだよ」


「なんか口説き落とすまでは楽しかったんだけど、落としてやりきったと思ったら夢中だったのが冷めた」



弟は夢中になるのも飽きるのも早いタチだった。




弟は高校一年、ノイムさんとは3歳年が違う。


俺とノイムさんは同い年だ。


俺との会話は非常に噛み合う。


ノイムさんは弟に一途だ。

弟の事について話す時、決まって彼女は弟を褒める。


「マイクはねぇ、たわしの知らない色々な事を教えてくれるのだ!この前はねぇ…」


そんな彼女を飽きたと言うこの弟が正直信じられなかった。





「それに俺、このゲーム飽きたから引退するつもりだし。

次遊ぶ時に別れるわ」



「……そうか」

それしか言えなかった。




それからは、クラバトでノイムさんと遊ぶ事が増えた。


弟に拘束されていたノイムさんの時間が、フレンドや俺に行き通った結果だった。


「にいさま、なんで最近マイクはログインしないのだ?」


ビデオ通話の向こうの彼女が問いかける。

本当の事を言える筈がなかった。


「勉強が忙しいみたい」


「にゃーぅ、なら仕方ない。高校生は一回しかないからな!」


そう言って元気に微笑む彼女が、とても悲しげに見えた。


「それにしてもノイムさんのネタキャラは通話してもボロが出ないね」


話題を逸らすように俺が言うと彼女はこう言う。


「性に合ってるかキャラに引っ張られてるのか、とにかく自然体に近くなってしまったみたい……?」


誕生日は自分の方が後なのに、彼女の方が幼く見えた。


弟もそう言っていた記憶がある。


このギャップに弟は惹かれてしまったんだろうな。


その気持ちはもう存在していないと知っていると、形容し難い感情が湧き出てくる。


「あはは、それでこそノイムさんだ。話を戻しちゃうけど、ノイムさんはマイクと話せなくて寂しくないの?」


ただ聞いてみたくなった。


「……もちろん、寂しいぞ」


その時の彼女の顔は、何か悟っているような。


苦しそうな顔をしていた。




俺だったら、そんな顔させずにしてあげられるのに。


そう思った自分がいた。

無自覚に惹かれていた事に気がつく。


「……なんか意地悪しちゃったみたいだ、ごめんね」


「っ……にいさまは気にしなくて大丈夫だぞ!たわしが寂しがりだからいけないのだ!」


その動揺で、本当の彼女を見た気がした。



ーーーーーーーーーーーーーーーー



「なぁ、ノイムさんの事だけど」


「何。もうどうでも良いんだけど」



愛の反対は無関心とは良く言ったものだ。






「なら俺がもらっても文句言うなよ?」


「うわー優秀な【にいさま】が悔しがってるの見て見たいわ。別れるの延長した方が面白そう。」



普段俺に勝てない弟がこの時ばかりは勝てたと嬉しそうな顔をする。


挑発してるのかわざわざノイムさんを真似てにいさま呼びするのがムカつく。


「別れてない状態で兄貴が落とそうとしても無駄だと思うぜ?ノイムは愚直なぐらい一途だからな!」


「知ってる」


一途故に苦しむ彼女の顔は、もう見たくなかった。





その数日後、異世界に転移するなんて思っても見なかったが。




「(あーー……ノイムさん大丈夫かな……)」



無言で考えるポーズや頭を抱えるポーズ、虚空をただひたすら見つめるソウルを他の乗客が訝しげに見ていたのは言うまでもない。


第5話のフラグ回収です。

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