第16話「救世主、現る」
一斉砲火が開始された中都市ボーフゥ住宅村ツユクサ地区。
静かで穏やかな湿原でしかないこの土地に似つかわしくない爆発音が大地に鳴り響く。
「あのオカマ野郎が持ってきた花火ハート形の赤とピンクしかねぇ!」
「赤い閃光がヒメカツの目に悪いレベル!」
持っていた花火を消費したタクト達花火組ははるなんちゅが持ってきた花火に手をつけ始めていた。
モンスターはと言うと、飛行速度が落ち、花火が当たるたびに右往左往してなんとか花火を避けようと動いているのが目に入る。
「そろそろ400メートルってところか。ヒメカツ、町に連絡する」
「了解だよー!」
「セシィ、パチンコは出来たか?出来てるなら花火をあげるんだ」
町から黄色の打ち上げ花火が上がる。
「了解、200メートルまで来たら投石を開始してくれ」
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「いやぁ花火分解しちゃいけませんってこう言う事なんだろうなぁ……」
体が所々焦げた猫妖精の女の子は目の前に広がった花火を眺める。
中身を開封して調合しようとするたびに爆発が起こるのだ。
リアルでやっていたら頭の一つや二つ吹き飛ぶだろうし、運が良くて失明するとかそんな状況である。
この世界の体へのダメージが軽くて良かったと心底思った。
この世界ではパラメーターが物を言うらしい。レベルが93なので何も装備して無くとも普通に硬い。爆発二発ぐらいなら耐えられる。痛いけど。
自分の体にリベヒールをかけて、何故爆発するのかを彼女は失敗から考えていた。
科学的な観点から言えば、乾燥状態にある火薬は非常に発火しやすい事。火薬同士が摩擦する事により熱を持ち燃える。
これはマッチの原理と同じだ。摩擦の熱で燃えるよう設計されている。
湿気ったマッチは燃えないが乾燥させたマッチはよく燃える。
小学生や中学生の頃、理科の実験でやった事だが、火は酸素に触れていると、勢いよく燃えるのだ。
また開封した直後はその周囲に開封した部品から空中に舞った火薬が空中に漂っており、それにも火が燃え移る。
それらの出来事や条件が揃った環境で起こる結果が爆発だ。
「水を使えば早いんだろうけど、それだと今日使えないしなぁ……」
かと言ってこのまま開封しても上記の条件になり発火するだけである。
今の自分に足りないのは火薬を動かさず調合できる器用さだ。
そこをクリア出来れば……。
「結局私じゃ出来ないのかぁ……ん?なんか騒がしいなぁ?」
自分が一人で爆発しているのを他所に、一悶着起きていた。
ドワーフの女の子にオーガが何かを捲し立てている。
すると突然女の子は勾玉のようなポニーテールを器用にうねうねさせていたのだ。
その動きはまさに魚が跳ねているよう。
女の子はそのポニーテールを掴まれたと思ったらもう一人の同じ女の子が股の間をすり抜けてオーガの背後に移動していた。
残像にあんな使い方があるとは。
攻撃を与えられるか使用者の意思で消える為、防御力の概念がない。
発動している時は攻撃が出来ないため、実際役に立たないスキルだ。
それに加えて高い器用さが無いとかなりの確率で失敗するスキルでもあり、尚更みんな使わないスキルでもあった。
「つまりあの子はとんでもないくらい器用さが高いんだ…!」
救世主だ!
そのまま残像を消して背中を蹴ってオーガを倒し、何事も無かったかのように知り合いの元へ歩いていく彼女が神々しく見えた。
あ、オーガは凄い可哀想な事になってた。
南無。
投石組の指示が出ている。
自分は市街地での戦闘組だが彼女を確保する為、急いで話しかけに行くのであった。
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