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第10話「それいけ!隣の馬車ご飯!」




黒髪の勾玉のようなポニーテールを揺らしながら歩くノイムと、緑色のサラサラヘアーをなびかせながら歩くソウル。


大陸をつなぐ駅が存在しており、プレイヤーは馬車を使っての移動となる。


コクホウ大陸へ行くゲートとウォーブルー大陸へ行くゲートでお別れだ。


「ノイムちゃん、気をつけて行ってくるんだよ」


「にいさまこそ、命大事にな!」


そう言葉を交わすとソウルはウォーブルー大陸のゲートを通り抜けて行く。


それを見送ったノイムもゲートに移動しようとしたその時、


あいつ(コウモリブタ)が来た。



脳天直撃クリーンヒット、たんこぶが出来そうだ。


「痛いからやめろって言ってるでしょうがァッ!」


早よ出ろやという顔をしつつこちらを養豚場の豚を見る目で見てくるコウモリブタ。


豚はお前だぞ………。


「にゃー…、もしもし?」


痛い頭をさすりながら通話に出る。


かざむの弾んだ声がコウモリブタから聞こえてくる。




「なんか変なお兄ちゃんが家に来てくれて、中都市ボーフゥまで連れてってくれるって!」



「おおうマジか」




あんなにシリアスな展開でにいさまを送り出したらコレである。


すまないにいさま…。


「だから俺、中都市ボーフゥで待ってるね!」


「にゃ、了解、道中気をつけるのだぞ」


「うん!」


通話が終了し、コウモリブタは飛び立っていった。




「変なお兄ちゃん、ねぇ」






なんだか妙に引っかかるフレーズであった。




多くの人が駅馬車周辺でごった返している。早く行かねばなるまい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ゲートを通り抜けて馬車に乗り込む。


ゲームだった頃は一瞬で移動出来たがこっちではそうもいかない。


定員になるまで待たなければならないし、道のりも少し長い。



さっきの戦いで指揮を取っていた金髪ショートヘアの女性と銀髪のスレートヘアの男性のオーガペア。


咄嗟に低レベルの魔法使いプレイヤーを連れて来ることを提案していた群青ショートヘアのドワーフの少年、その隣で戦っていたエルフの少女が乗り込んでくる。


そのまま、彼等は先程の戦いでの反省点などを話し始めた。



定員に達した駅馬車が発車した。


1時間ほど揺られてコクホウ大陸に着く計算だ。


移動している間に駅弁ならぬ馬車弁でも食べるか、と自分が作った料理を取り出す。


出来立てのままなのか弁当からは湯気が発生していた。


謎肉を使ったプルコギやライスローズを精米して炊き上げた艶々とした米、

メガシャキレタスのお浸しにビックポテトのカレーきんぴら。

トドメには、グレントマトとカモンチーズのモッツァレラ?サラダが詰まってる。


どれもゲーム内では無かった料理だ。




「いっただきま、」




隣近所からお腹が鳴る音がした。


乗客四人がたわしのお弁当を凝視している。


「…もしかして、皆ご飯食べれてないのか?」


皆頷く。


これは、商売の匂いがするぞ…!



「あーゲフンゲフン、たわしは聖人君子ではないからな、タダでは流石n」

「いくらなら売ってくれる⁈」


「今手元に3万Gあるの、一つで良いから!」


たわしの持ってるお弁当適当にスキル使って作ったからランクCだぞ⁈


精々5000Gが良いところなのに…!



義賊をメイン職業にしたのはお金が欲しかったからだ。


今でもお金には目がない。


たわしはたわしの癖にガメツイのだ、亀の子たわしなだけに。



「じゃあ一つ3万Gなら売って良いのだ!全員分あるぞ!」



そしてこの欲望に忠実な笑顔である。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

12万も稼いだ。


うひひ、儲けたのだ、ゼニゼニ……。ガメガメ……。




「ほぼ1日ぶりのご飯だったんだ、売ってくれてありがとう。」




凄い罪悪感がした。


どうしよう土下座したい。



オーガのお姉さんが口を開く。


「今食材アイテム殆どないのよ。NPCからの供給も転売で高騰してるし、

料理スキルが失敗すると材料ロストしちゃうしね」


ドワーフの男の子が弁当を売ったたわしをキラキラした目で見つめる。


「こんなに沢山の材料を使った料理を原価レベルで売ってくれるなんて、君は良い人だなぁ!」


え?おい嘘だろ?たわし、ボランティア?


「ちなみに、今の食材アイテム一個あたりのお値段はいくらなのだ……?」


恐る恐るたわしが聞くと、先ほどのお色気たっぷりのオーガのお姉さんが答えてくれる。


「そうね……例えば、メガシャキレタス一つで大体一万Gだったわね。


肉や卵は入手方法が分かってて手早く収穫出来るから、大体一個4000円くらい。


ライスローズは一輪で9000G、ビックポテトは7000Gだったのよ?」




唖然とするたわし。





「この弁当のボリュームだと一つ当たりそれくらいの量使ってるよね……」



華奢なエルフ娘が感無量の表情でお弁当を口に運んでいる。



「俺たちは食料を買い込もうと半日前にフィンクス大陸からこの大陸に来たんだが、


ちょうど大手チームがケセランパ大陸に来た後だったみたいでな。


大手チームの買い占めでケセランパ大陸のモリブタバザーは見事に空っぽって訳さ」


弁当片手に手でやれやれのジェスチャーをしながらドワーフの少年が説明する。




「気にくわないのはその連中がランブの町にモンスターが襲来したって聞いてとっとと逃げやがった事だ。

おかげで人が少なくて警備に穴が空いてよ。


初心者のシェルター変わりにしてた酒場にモンスターが入ってきちまった。あの二人が無事だと良いんだが……」


しかめっ面をしたガタイの良いオーガの男が悪態をつく。



提供された情報によって、これまで気がかりだった事が理解出来た。


料理も食料もなかったのは例の大手チームが買い占めてしまったからだと言う事。


連携がすぐに取れず混戦状態だったのはモンスターとの初めての戦闘で大手チームが逃げ出した瞬間だった事。


そして何よりも重要だったのは、





たわしのお弁当の原価は一人当たり一万Gまでに抑えられていた事だ。





「そういう事だったのだなぁ……。教えてくれてありがとうございますのだ!」


純粋な女児の声を上げながら、心の中で算盤の計算をする汚い幼女がここにいた。


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