第9話「とあるオンナの進撃」
コクホウ大陸 中都市ボーフゥ住宅村ツユカゼ地区。
そこに丈が短いスカートのような白い着物を着た、
ピンクの髪色の小柄なエルフがいた。
耳にはエルフ特有の尖った耳がついている。
「アタシの魅力に酔いしれなさい!《おいろけアップ》‼︎」
ピンクの髪が春風に吹かれたかのように揺蕩う。
そして目の前のスカラベキングが一瞬悶えたかと思うと仲間に攻撃し始めた。
状態異常 魅了
魅力値が高いとモンスターを魅了する確率が上がるのだ。
そして目の前でモンスターを魅了したこの冒険者こそ、現在魅力値の最高値を叩き出している魅力値トップランカー。
【《魅惑》のはるなんちゅ】
その人である。
《おいろけアップ》は旅芸人の専用スキルだ。使用すると一定の時間魅力値が↑100する。
それを魅力値のトップランカーが使用すれば、どんなモンスターだって魅了されるであろう。
スカラベが仲間をあらかた屠ったのを見届けて冒険者は言う。
「さぁて、ご近所さんを助けに行きましょうねん!スカラベちゃん!」
「ギィィ…♡」
スカラベに乗り込むと近所の家まで走り出す。
「あらん?ここの家誰か居るわねん!」
窓に明かりが灯っているのを確認すると家の周囲のモンスターを追い払いにかかる。
「スカラベちゃん!家の四隅に尻尾爆弾よーぅ!」
「ギィッ!」
尻尾爆弾が爆発して周囲のモンスターが散り散りになる。
「ありがとうスカラベちゃん!さて…
大丈夫ー?助けに来たわよーぅ?」
家のドアをノックすると入室許可が出る。
「お邪魔するわねん!」
瞬きをすると目の前には猫妖精がいた。
「森人のプレイヤーさん、あ、あの、もう外にモンスターはいませんか?」
今にも泣き出しそうな顔で問いかけてくる。
「んー、まだいるだろうけど、大丈夫よぅ。
モンスターがいてもアタシが魅了してあげれるからねん!
あ、自己紹介してないわねぇ。
アタシははるなんちゅ、貴方の名前は?」
おっかなびっくりな様子で彼は答える。
「かざむ、かざむ、です」
「あら?もしかしてリアルネームなのん?」
【は、はい、風に夢って書いて、風夢です……」
「おっほっほ、良い名前ねん!
よし、かざむちゃん、早めにこの住宅村から中都市ボーフゥまで脱出するわよぅ?」
「お姉ちゃんに助けを求めてしまったので、連絡してもいいですか?」
「もちろんよぅ!無事だって事と中都市ボーフゥで待つって伝えて頂戴ねん?」
早速コウモリブタで連絡を取るかざむを尻目にはるなんちゅは思考を巡らせていた。
「(この子年齢が幼さそうよねぇ、見た目のせいもあるんでしょうけど。
一人で良くこんな怖い所で気丈に振舞ってたわねん。
偉い子だわ…。礼儀正しいし……)」
「はるなんちゅさん?」
はるなんちゅが一人でホロリとしている間にコウモリブタでの連絡が終わっていたようだ。
「おっほっほ、それじゃあ行きましょうか!」
外に出た途端、目の前で鎮座しているスカラベキングに飛び上がるかざむ。
まだ体に慣れてないのか50センチ位跳躍した。
「あーん、ほらほら大丈夫よぅ、このスカラベちゃんアタシに夢中だから!」
「ギィィ♡」
恐る恐るスカラベキングに近寄るかざむ。
「怖くないです?」
「アタシと一緒なら絶対大丈夫よぅ!
さ、乗り込んで!」
はるなんちゅがかざむの手を引き上げながら腕の間に抱く。
猫妖精はドワーフよりも小さい種族なのでスペースをあまり圧迫しないのだ。
「「しゅっぱーつ!!」」
スカラベが住宅村の外へと走り出した。
「ところではるなんちゅさん」
「ん?どうしたのん?」
「はるなんちゅさんって男の人ですよね?……なんでアタシ?」
「舌噛むわよーぅ」
「は、速⁈、スピード!スピード落としてぇぇえ!!」
「おーっほっほっほっほっほ!!」
猫妖精の悲鳴と森人の高笑いが住宅村に木霊した。




