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第1話「夢は現実に」



「うぇー疲れたー」


学校から帰ってくるなりベッドに体を投げ出す。


電気もつけず荷物の整理もせずそのままゲームをやり始める様は、


来年就職を控えているとは思えないほど自堕落な表装である。


藤葉ふじは 伊乃夢いのむはデザインを専攻して学んでいるごく一般的な専門学生だ。



ゲームに傾倒している時点で、お察しの残念な脳味噌なのは、言うまでもない。



そんな私が夢中になってやっているのは「クラバトカルテット・オンライン」


略称はクラバト。


様々なハードでサービスを展開している、所謂mmoRPGだ。


沢山のプレイヤーがいる中で、異世界で過ごす自分。


その非現実の世界に私は魅入られたのだ。




プレイヤーネームはノイム。




私のキャラクターはドワーフの女の子、略してドワ子である。


このゲームのドワーフは神話でよくいるシワシワの小さいおじいさんではない。


人間で言えば5歳くらいの平均的な身長と見た目で、


緑色の肌を持つ、ゴブリンとドワーフを足して可愛さで割ったような見た目だ。



見た目の幼さ、小ささと愛嬌があり、ちょこちょこ跳ねて走るその姿に惹かれるものも多い。



しかし何故か全体数が少なく、このクラバトの舞台、『ルトテッカ』の人口全体の中で約7%、


中々一般プレイヤー達の目に入らない種族であった。



クラバトには5つの大陸と国があり、都市は一つの国にそれぞれ3つある。



選べる種族はその五つの大陸を統治する種族だけだ。




鬼人オーガの治める過酷な山「オーガリア」大陸には


「大都市カザンカ」「中都市ツード」「小都市チュデス」





魚人マーマンが治める美しき海「ウォーブルー」大陸には


「大都市シェルニ」中都市「トージ」小都市「コモーウ」




猫妖精キャットシーが治める物語の草原「ケセランパ」大陸には


「大都市ケダーマ」「中都市ランブ」「小都市ターノシ」




森人エルフが治める風吹く湿原「コクホウ」大陸には


「大都市シキカゼ」「中都市ボーフゥ」「小都市ヤマアラシ」




小人ドワーフが治める遺跡の森「フィンクス」大陸には


「大都市アウリウム」「中都市キララ」「小都市ハコナカ」




プレイヤーキャラクターは女神カルテットによってこの世界に産み落とされ、


困っている人々を救う使命が与えられる。



そしてスタート地点の小都市で、特定のクエストをクリアすると別の都市や大陸に行けるようになるのだ。


都市の間は広大なフィールドが広がっており、


素材の採取やモンスターの討伐が出来る。



それらで得た素材を使って装備やアイテムを作る事も可能だ。



「さぁて、今日もなりきるぞぉ」


二つ折りのゲーム機の電源をつけ、早速プレイしようとログインする。











いつものスタート画面の音声を聞いた、その瞬間。



私の体は闇に溶けた。













ーーーーーー



気がつくと、闇の中にいた。


(あれ、疲れて寝落ちしてたのかな…)


寝落ちしたにしても暗すぎる。こんなに暗かっただろうか?不安になった私は手を動かす。



(なんか、四方に壁みたいなのが?)


寝落ちした後に、事件にでも巻き込まれた?



これじゃ出荷される直前みたいだ。



そんな自分の想像に、心が震えた。


嫌な考えばかりが、頭の中を駆け巡る。






そして、声と身体が同時に恐怖を発現させた。




「嫌だ!出して出して!お願いここから出して!」



闇の中、半狂乱に陥った私は目の前の壁を叩いて叩いて叩きまくった。


バンッ‼︎という乱暴な開け方をして箱の蓋が勢い良く持ち上がる。





それと同時に室内の明かりが暗闇に慣れた目を容赦なく突き刺した。





「目がぁっ!目がぁあっ!」



堪らず目を手のひらで覆い隠す。

自分の手のはずなのに違和感がした。


なんだか小さい気がする。


光の目潰しと手の違和感がノイムを冷静にさせた。



光に慣れてきた目は、周囲の情報を吸収し始める。


世界が広がっていく。









まず目に入ったのは、自分の入っている箱に敷き詰められたバラ。



こんな痛々しいベッドは持ってない。




それと自分の手、小さくも緑色でもなかったはずだ。



そして、見慣れぬが、見覚えはある天井。



起き上がって周囲を見渡すと、部屋にはこれまた見覚えがある家具たちが鎮座していた。





そう、私は、ノイムは、



クラバト内にある自分の家にいた。





「え……」



乱暴に開けたのはゲームの家具である棺桶風ベッドであった。



中々手に入らない物なので壊れてないかと思い調べたが、特に異常はないようだ。



それ以前にこの状況自体が異常であるのだが、私の残念な脳味噌はまだ把握出来ていなかった。



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