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何がために君は死ぬ  作者: 小説中毒者
第1章 幼馴染
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第7話 実演

字数はそこそこです。

 さて、我ながら、素晴らしいほどにキラキラした瞳で校長を見つめる。


「お主、欲望には忠実よのう……」


「当然!」


 知的好奇心に勝るものはない!これは常識である。え、違うの?

 校長が、前方に手をかざす。


「詠唱は面倒なのでの。破棄させてもらう。少々暑いかもしれんが、我慢せよ」


「え、ちょ、暑いって、それ、ヤバげでは――」


 命の危機を感じた。校長を止めようとも思ったが、あの顔は、こちらの話を聞いていない顔だ。

 全力で校長から走り離れる。今更ながらに、校長をけしかけたことを後悔してます。

 先ほど知的好奇心に勝るものはないと言ったな?あれは嘘だ!

 知的好奇心も大事だが、命の方が大切なのだ!


「έκρηξη」


 後方から、校長の声が聞こえる。もう発動するんかい!まずい、巻き込まれる!

 突如、熱風と、衝撃に襲われる。背後から、ハンマーでは吹っ飛ばされたかのように、体が宙を舞う。

 ああ、空を飛ぶって、こんな感じなのか――なんて思った瞬間に、墜落。思いっきり、地面に落ちる。

 受け身をとれたので、衝撃はそれほどない。が、それ以外に問題があった。


「あっつっ!?」


 地面が、めちゃくちゃ熱かった。それに、止まってから知覚したけど、暑い。校長の言っていた意味がわかった。

 先ほどの呪文は、多分、ギリシャ語で「爆発」や「噴火」という意味だったはず。それなら、いろいろなことに納得がいく。

 目の前。先ほどまで校長がいた場所に、大きな穴が、直径6mほどの穴が空いていた。おまけに、そこから、信じられないほど強烈な熱気が漂ってきている。地面の熱さなどは、これが原因のようだ。

 私の知識によると、ってそれついさっき与えられたものだけど、先ほどの魔法は、炎・爆発系統の魔法だろう。

 魔法では、範囲指定も可能のようだから、この穴は、校長が範囲を絞ったからこの狭い部分に収まったのだろう。範囲を広げると、術者の負担がでかいってのもあるんだろうけど。

 威力は、範囲を絞っても人を飛ばす爆風、この熱気などから嫌という程よくわかった。甘く見ていた。

 深さ?おいおい、あんな深くて熱さそうなところ近寄って覗けるような度胸あるわけないだろ。っていうかそもそも、熱すぎて近寄れん。

 だが、覗くどころか、近づけなくとも、わかることが一つある。この穴の底、確実に地面が溶けてマグマになってるってことだ。

 あれ?そういえば…………校長どこいった?!


「ようやく儂の存在を思い出したか」


「また後ろですか」


 うん、普通にいた。無事どころか、髪の毛の一本も乱れていない。あの爆風があったのに、だ。シールド系の魔法でも使ったのかな?


「残念。ハズレじゃ。達人になると、自分の魔法ごときの影響は受けんくなるだけじゃよ」


 ……だけとか言ってるけど、それ、十分すぎるほどすごいよな。自爆しないって、めっちゃ便利じゃん。

 最近アニメとかで、広範囲魔法を使って自分も巻き込まれる間抜けキャラを見るのだが、そんなことが起こらない、ということだ。広範囲魔法を使えるようになった頃には、普通、達人クラスにはなっているだろうからね。

 

「うむ、まあ確かにそうじゃの。っとそうではなくて。上級魔法の威力は実感できたか?」


「嫌という程」


 即答できた。もうマジで、迂闊に食らいたくはない。

 なめてました、ごめんなさい、という気分だよ。上級魔法は、多分、戦術級、術者によっては戦略級の威力があるだろう。そんだけの魔法を無詠唱で使いこなしている校長のとんでもなさも実感できた。

 また、いい教訓も得た。好奇心は猫を殺す、というやつだ。もう少し、好奇心を抑えないと、今後、9つの命があっても足りなそうだ。


「ならばよし。では、指導も実演も終わったことじゃし、戻るかの」


「そうですね……」


 うん、確かに用事は済んだ。もう教えてもらうことはあまりないだろう。

 でもなぁ。もうちょっと楽しみたかった。だって、誰かに教えてもらうなんて、かなり久しぶりだし。

 魔法以外は、適任者に任せるということだったから、そちらに期待するか。

 …………あれ?そもそも、私、校長から何か教わったっけ?魔法の知識は付与されたものだし、他には、魔法の実演と、説法ぐらいだ。あまり、教わっているとは言えない気がする。残念。


「そう落ち込むでない。今後、お主が他者から何かを教わる機会もあるじゃろうから」


「それは、適任者以外の人物も、ですか?」


 これで、適任者の人だけとか言われたら、マジで落ち込んじゃうよ、私。


「うむ。適任者以外にも、じゃ」


 それは嬉しい。複数の人から何かを教わる機会が再び来るなんて!


「人以外かもしれんがのう」


「それもそうか……」


 異世界なのだから、人以外から教わることだって十分ありえるのだ。


「そもそも、わしも精霊じゃしのう」


「――忘れてました」


 そうじゃん、言われてみれば、校長、人じゃないじゃん。そうすると、校長のいう適任者だって、人じゃないかもしれないのだ。なにそれ楽しそう!


「では、戻るぞ」


 ……思考に水を差された気分だが、確かに、そろそろ戻るべきか。


「わかりました」


 帰りは、行きと同じだった。面白くない。

 空を見上げみると、夕焼けだった。気絶に時間を費やしていた結果、もうかなり時間が経っていたらしい。


「ちなみに経過時間は8時間21分32秒じゃ」


「細かい情報どうもです」


 うむ、慣れたおかげで減らず口を叩けるようになった。


「生意気になった、というべきじゃな。」


「人の思考タイムにまで割り込まないでくださいよ校長」


「何せ精霊じゃからなぁ。人のプライバシーなんぞ知ったことではないわ」


「知っときましょうよ校長。どうせ校長は何でもお見通しでしょう?」


「知っていると理解しているは別物じゃということじゃよ。それに、未来まではわからないものじゃ。そちらは不確定要素が大きすぎるしのう、何よりも時々確率論を根底から覆すものがおるのでのう」


「言い訳のためにそんなスケールでかい話ぶちこまないでくださいよ」


 なんだかんだ言って、やはりこの存在も話し相手を求めていたのだろう。こうして話してみて、ようやくそう感じてきた。

 しかし、らしくもなく、この存在との会話を楽しく感じてきた。そう、楽しいのだ。

 だが、無情にも時は過ぎ、くだらない話をしているだけで、もう日も殆ど沈んでしまった。熱中すると周りが見えなくなる癖はどうにかした方が良さそうだ。まぁ、治らないだろうけど。

 どんなに聞いても、この世界のことは答えてもらえなかったが、他のことなら、会話が続いた。

 とはいえ、流石に長く話しすぎた。もう、夕飯時だ。ということで、


「なんか食べさせてくれません?」


 あまり腹は減っていないが、何も食べないのは不健康すぎるだろうし、なんだかんだで今日はエネルギーを使った。ということで、食事である。

 流石に自分で全部狩れとは言われないだろう、きっと。

 ここに何が生息しているかもわからない状態でそんな無謀な真似はしたくない。自分の命はかわいいものである。

 それに、見渡す限り、ここ、植物以外何もないんだよなぁ……。ここに生えてる植物は、先ほど鑑定した通り、あまり食べたいとは思えないものばかりだったしなぁ……。


「ふむ。そういえばそうであったな……。何がいい?」


 ああ、しっかり事前に確認してくれるんだ。咲良なんて、あいつに食材準備させると、いつもトンデモないものばっか買ってきたもんなぁ……しかし、おかげで、初見の食材でも、毒がなければ対応できる。


「何でも構いませんよ」


 これは本気です。いつもいつも、咲良がもってくる食材はゲテモノだったのだよ。ゲテモノには慣れた。よく食べていたし、よく調理していたので。咲良もよく道連れにして。見た目などに何があったり、独特の風味があったりして、すごくいい体験ではなかったが、おかげで好き嫌いはなくなった。代わりに、何か大切なものを失った気がするが。人としての尊厳みたいな何かが。だが、その過去が、私を強くした。

 さあ、なんでもどんとこい!


「ふむ、では期待にお応えしようか」


 ………いや、別にそこまで張り切ってもらっても困るんだけどね?校長クラスの期待の応え方は予想の遥か上をいきそうで怖い。

 さて、何が来るだろうか?虫の死骸がたくさんとかだと、少々精神衛生上よろしくないのだが。

 と、唐突に校長が手をかざす。すると定番、そこには輝く魔法陣が!

 周囲が目を開けていられないほどの光に満たされる。

 ここまでの演出したのだから、期待してもよさそうだ。

 再び目を開ければ、そこには…………馬が横倒しになっていた。

今後も時間に余裕があれば投稿してきます。よろしくお願いします。

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