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何がために君は死ぬ  作者: 小説中毒者
第1章 幼馴染
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第5話 服装

今回字数は前回同様多めです

 にしても、適任者ねぇ……誰なのか聞いても教えてくれないんだろうなぁ……

 とすると、もう説明終了か?


「しかし、口で説明するのが面倒なこともあるのでなぁ…幾つかは直接体感してもらおう」


 悪い意味で期待を裏切られた。何、終わってくれないの?

 この瞬間、私は猛烈に嫌な予感がした。


「いや、結構で――」


 最後まで言わせてもらえなかった。

 視界が一度白に染まる。眩しくはなかったが、眼前が、白で埋め尽くされ、何も見えなくなったのだ。ホライトアウトというやつだ。咄嗟に目を瞑る。そして、浮遊感と、自分の周りが、形容しがたい何かで満たされている感覚。目を開けると一生後悔しそうな予感がした。自分でも、なぜそう感じるかはわからないが、直感が命の危機に匹敵するレベルの警鐘を鳴らしている。肌の表面を、空気とも水とも違う質量を持った何かが撫でていく。鳥肌が……と、鳥肌が立った瞬間、浮遊感が消え、しっかりと地面の上に立っている感覚に戻る。触覚的に、周りも普通の空気に思える。あの何なのかわからない恐ろしいものが肌を撫でていく感覚は、もうない。きっと、あの状態、体感は描写する余裕があるほど長かったが、自分の頭がフル回転していただけで、時間は一瞬だったんだろう……先ほどまで除夜の鐘のように鳴り響いていた脳内警鐘が鎮まっている。直感を信用しているのだ、私は。

 ということで、安心して再び目を開くと、そこは、また先ほどとは違う場所。

 まず、室内だ、ここ。おまけに、まず間違いなく日本にはないであろうもの。

 闘技場だ。

 何故分かるかって?だって、明らかに正面にでかい出入り口があってさ、そこから獣の雄叫び聞こえるドーム状の建造物って、それぐらいしかないっしょ。上見る限り、何なのかよくわからん物質でできた継ぎ目のないドーム状の屋根で覆われている。おまけに、この天井、直視しても目に問題がない程度に発光している。ファンタジーだ。

 ていうか、日本じゃ合成でしか聞けないような相当本能的恐怖呼び起こされる立派な雄叫びである。気が付いた瞬間マジでビビって周り見渡して安全確認してしまった。

 これ、モンスターってやつかなぁ……きっとそうだろう。だって、元の世界に雄叫びと共に雷音する動物とか、少しずつ地面に音だけで放射状にひび入る雄叫びする動物なんていないし。いたら怖すぎる。あ、ちなみに、雄叫びが響く度に放射状に入っていくひび割れは一瞬で元通りになっている。過程がない。

 それにしても、直接体感って、まさか、あの雄叫びの主達と戦えとでも?雷とか、衝撃波使ってそうなやつらと?非戦闘民族な私が?なにそれ無理ゲーっしょ。

 

「いやいや、儂もそこまで鬼じゃない。まずは訓練からじゃな」


 気づけば背後に校長が立っていた。とりあえず正面から向き合う。


「……ってか、いつからそこにいました?いや、それはどうでもよくて、訓練って戦闘技術のことですか?」


「当然。こんな場所で他にやることもなかろう?」


 うんまあ、それもそうだ。

 この世界、そういうの必須な世界だろうしなぁ……んで、指導者は、他にいないから――


「――貴方が指導してくれるのですか?」


「うむ、そうなるのぉ」


 見た目ダンブルOア校長なのだが、精霊なのだから、きっと見た目に反して動けるのだろう。きっと。たぶん。私はそう信じている。


「しかし――」


「ああ、戦闘技術の指導と言っても、儂が教えるのは魔法じゃから、安心してくれて大丈夫じゃ」


 やはり、魔法があるというで、その修行もあるのか。心躍るなぁ。

 それにしても、武術の指導をすると言われなくて良かった。

 遮られてのこの一言。ふむ。


「お見通しでしたか」


「儂も、すでに技術を得ている者に指導するのは暇なだけなのでな」


 そう、私は武術の心得がすでにある。なぜかって?いろいろあったんだよ……いろいろな……

 必要にかられると、人間、結構しっかり身につくものである。


「心配なのは、私の技術はこの世界で通用するのでしょうか?正直、槍・剣系統は趣味程度なのですが。他はともかく」


 徒手空拳での格闘や、遠距離系統はそれなりにできると思う。問題は、ファンタジーに必須の剣などだ。これ、趣味で竹刀振り回すとか、薙刀使ってみるとかぐらいしか経験がない。

 ……なぜそんなに経験しているのか?そんなの、その必要があったからに決まっているじゃないか……ああ。あの頃を思い出すと、よく生きてるな私と、そう思う。やばい、目から塩水が垂れて……

 そんなことを感がている間に、校長はそれを聞いて、頷く。


「そこは問題ない。剣のみなどでは少々中途半端じゃが、幾つかの技術をくみ合わせれば、十分通用する。儂が保証しよう」


 本来、人一人の保証に今後の安全を委ねるのは危険なのだが、不思議と安心できた。

 にしても、あくまで、幾つかの技術を組み合わせたものでないと、中途半端か……これは、そのあたりももう一度鍛え直す必要がありそうだ。とはいえ今は、ロマンだろ。


「では、魔法の指導をお願いします」


 そう、これだよ。魔法。これは、小説読んでりゃだれでも一度は憧れるものだ。そう、ロマンだ!これ学べるんだからやっぱりこのお方はダンブルドO校長だ。

 校長は、うむと頷くと、くるりと踵を返す。


「ついてこい。いい加減服も必要じゃしな」


 言われてようやく思い出す。ヤベェ、ずっと全裸だったというのに、全然違和感を感じなくなっていた。

 最初はスースーしていて気になっていたのに、いつからだ?いつから私は意識しなくなった?


「ああ、私、もうダメかも……」


 死んだ目状態で校長についていく。きっと、今の自分は傍目から見て目からハイライトが消えているだろう。頭の片隅でそんなことを思いながらも、やはり、ショックから立ち直れない。私にそんな趣味ないのに……いや、確かになかった……はずだ。自分がわからなくなってきた……

 そんなことを思いながら、賢者のローブを追いかける。先ほどから、存在を忘れていたが、未だに雄叫びの聞こえる方とちょうど向き合う位置に、同じように、出入り口があった。ちなみに、雄叫びはこちらからは聞こえない。

 無言で、前のローブを追う。出入り口を通ると、そこは長い通路だった。100mはあるだろう。壁が遠い。また、左右に、いくつもの扉がある。校長は、左側3番目の扉を開け、中に入っていった。先ほどまでの、ネガティブは思考はもうやめだ。何て思っていたら、校長先にさっさと行ってしまったので、慌てて後を追う。

 中は、圧巻だった。服の山である。煩雑に積んであるのではなく、ハンガーにかけられているが、並の服屋なんて比較にならない。今度こそ、壁が見えない。部屋の広さがわからない。延々と、ハンガーの列が続いている。種類・サイズ共に色々あるようだ。

 というか、まさか、こんな中から、服を選ぶのだろうか。だとしたら、地獄だ。女性なら別だが、服なんて最悪着れたらなんでもいいタイプの私にとっては、この部屋は単なる地獄だ。

 こんな量の服を見て、地獄以外になんと思えと?


「うむ、ここにあるのは儂のコレクションなのでな。自由に選んでええぞ」


 コレクションって……どんだけあんだよ……そもそもなぁ……


「貴方、精霊でしょう?服必要なのですか?」


 っていうか、逆に、必要って言われた方がショックだ。私の中での精霊のイメージが崩れてしまう。


「服は確かにいらんのだが、集めるのにハマってな。気づけばこの量じゃ」


 私は改めてこの部屋を見渡す。はっきり言って、何着あるかなんて想像がつかない。それだけ部屋が広く、どこまでも服が広がっている。数えるなんて絶対に無理だ。ただわかるのは、この量は明らかに個人所有のものとしては多すぎることぐらいだ。これを集めただと?精霊が一体これだけのものを集めれるだけの金をどうやって捻出したんだ?っていうか、精霊、何してんだよ。イメージ崩壊だよ……

 というか、あの列とか、あれ、多分制服だよな?あの列も、多分スーツだし。集めたって言っていたが、こんなの、この世界の技術で作れるのか?作れるんだとしたら、この世界の技術が相当進んでいるってことになる。それに、あれら、明らかに同郷のやつらの仕業ってことだよなぁ。そうでなきゃ、あそこまでそっくりにはならん。

 どんな服でもありそうに感じるが、見える限り、女性物がない気がする。


「お前の疑問に答えるとな、まず、この部屋は男物しか置いていない。女物は、反対の扉の方の部屋じゃ。ここは、儂のコレクションを保管してある場所でな。ほら、先ほどの通路、扉がいくつもあったろう?あの部屋には、それぞれ別のものが保管してあるのじゃよ。左側の部屋に男用、右側に女用と分けてな。また、部屋の広さは、空間魔法でいじってあるのでな、好きなだけ拡張してある。あと、あの列、制服で正解じゃ。」


 いろいろと目の前の精霊が規格外なことがよくわかった。それに、制服って………私たちの前の代の人たちが頑張ったとか?この世界の技術が高いって方なのだとしたら、この世界、少々危なさ増すな……銃とかありうる。


「ふむ、幾つかのものは儂の手作りじゃよ。こうも長生きすると時間が余ったのでな。元は、お前の先代たちに教えてもらったものを再現したものじゃ。材料は魔法で創造した」


 この世界の一般人作ではないと。とはいえ、材料とか聞いて創造できちゃうものなんだ……後、やはり、校長、先代たちに会ったことあるんだ……きっと会話盛り上がったのだろう。その結果のこのスーツと制服ってわけだ。

 うん、やっぱりいろいろおかしい。スーツなんて、元の世界じゃ全部機械が作っているものだというのに。それを手作り?一体、どれだけ器用で時間があるんだ?

 この世界の普通がわからないが、多分校長基準ではないはずだ。もしそうなら、この世界の住民、ありとあらゆる方面で化け物級ということになってしまう。


「まあ、儂は休息を必要としないのでな。その分効率はいいのう。飽きたりもしないしのう」


 そうはいっても、この量は……幾ら何でもやりすぎ感が否めない。

 それに、時間だけの問題でもないと思う、これは。なるほど、これが長寿な精霊というものか(偏見)。


「うむ。儂としても、折角作ったのに、誰も使わんかったものを使ってもらえるのじゃから、喜ばしいのう」


 ……………………気がつけば、私、さっきから口に出さずに会話を成立させているんだなぁ。


「今更か」


 とはいえ、この方が楽なので、このままで。

 意識切り替えて、さて、動きやすそうな服を選ぶとしますか。

 だが…………この山の中から探すのか…はぁ。憂鬱だ。つい、ため息が出る。

 自分で自分に喝を入れる。よし、頑張ろう。死地に乗り込むのだ!


「ああ、言い忘れておったな。服……というか、この建造物内にあるものは、イメージしただけで自らこちらに寄ってくるぞ」


「いや、それを先に言えよ!」


 いかん、つい大声かつ常体で突っ込んでしまった。にしても、私の先ほどの決心はなんだったのだろうか。

 意識を再度切り替えて。イメージする、か。はっきり言って、それがどんなものなのか想像もつかない。つかないが、きっと、本来これは相当とんでもないことなのだろうとは思う。イメージしただけで来るということは、頭の中で何を考えているか完全にバレているという子なのだから。とはいえ、テレパシーどころか、こちらは先ほどから頭の中で考えているだけで校長は返事してきているし、今更感もある。ということで、意識を切り替える。

 今、私が欲しているもの。とりあえず下着はつい先ほどまで身につけていたものをイメージして。服は、あんまり寒くないし半袖と長ズボンのジャージでいいか。

 とまあ、そこまで考えたところで、唐突に目の前で、服が動く。列ごと移動して、並びが変わっていき、先ほどまで見える範囲にはなかった服たちが寄ってくる。なるほど、こういうことか。なんか、ハOー・ポッタOみたいだと思う。

 まず、下着は何も考えずにいつも身につけているようなものを選ぶ。んで、服はどうするか。一瞬迷ったが、中学の頃のジャージと同じ色のものを選ぶ。

 選んだものを身につけると、中学生に戻ったかのような錯覚を覚える。まさに、これから、実技の勉強しに行くわけだし。


「ふむ……もしやお前、裸足で運動する今時珍しいタイプのやつか?」


 それまで空気化していた校長が唐突に喋り出す。


「裸足って……もしかしてここ、靴もあるのですか?」


 驚きのあまりついしゃべってしまった……ってしゃべるのが普通か。

 校長が当然だと言わんばかりに頷く。


「分ける意味があるまい?」


 うーん。若干納得がいかないが、靴も適当に元の世界で履いていたような運動靴をイメージする。靴下もだ。すると、今度は靴の並べられた棚と靴下が並べられた棚が寄ってきた。適当に選んで履く。うん、ますますこれから体育の授業に行く学生だ。


「ふむ……準備はできたようじゃな。ひとまず今はそれで十分じゃな。それでは、いくか」


 再び校長の後に続いて、闘技場に戻る。さっきの部屋は言うなれば控え室か。


「では、まずは魔法の基礎からはじめるとしよう。とはいえ、儂は時間に余裕があるが、お前は違うからのう。通常は1年かけるところ、1時間で済ますぞ」


 1年を1時間って、スパルタどころの騒ぎじゃない。8760時間を1時間なんて、一体どんな反則技を使うんだ?

 害があるとか、そういうオチがありそうだ。

 結論。なんというか、それ、猛烈に嫌な予感がするのですが……

また読んでいただければ幸いです

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