第17話 遭遇
何故か親戚が遊びに来たので、相手をしながらなんとか書き上げました……
今回、視点を主人公以外にも作ってみました。なかなか出来は良くないかもですが、どうぞ。
深夜、いい感じに半月が昇ってきたぐらい、うん、現在、私は、逃走中です。
我ながら何言ってるか全然わからないですねー。思考の入りがこれですか。少々おかしくなってますねー。逃走中なのは事実なんですけど。
何から逃げてるかって?この世界で夜に逃げるとしたら、夜盗または魔物がほとんど。で、この場合は、魔物なわけですよ。
いやー、怖いですねー。
………………………………以上、現実逃避、終了。
最近、連日連夜、魔物に追われ続けている。それも、同じ魔物ではなく、全然違う魔物に。昨日は鹿型、一昨日は猪型、今日は狼型。本当、最悪です。
まあ、こんな状態で、街道を通ろうとするのがいけないのでしょうが……でも、それは、こんな時に召喚しようとする王が悪いのです。
いくら、今年がそうだと言っても、今は難しいのは王も十分ご存知でしょうに……なんて、頭の中で愚痴ってる場合ではないですね。対処しないと。
「スマクさん。後ろからどんな音がしようと。無視して走らせ続けてください!」
声を張り上げてみます。そうでもしませんと、聞こえませんからね。
「それは無茶な相談ですよ、お嬢。お嬢が落ちてしまったら、その時は止まらせていただきます。今までずっと、自分ではなく、お嬢の為に、ここまで走ってきたのですから」
振り向きもせずに、操縦しながら淡々と答えてくれるスマクさん。強情な人ですよね。逃げてしまえばいいのに、そうしないなんて。今時そういう性格は、苦労するでしょうに。
「信じていますから。お嬢の力と、自分の腕を」
私の心を読んだかのような言葉ですね。
それにしても、自分の腕はともかく、私の力、ですか。流石、口説いて3秒で奥さんがOK出しただけのことはあります。なかなかさらっと、的確に人が言われて嬉しいことを言ってくれますね。実際、あの奥さんはチョロインでしたが。
まあ、それは置いときましょう。今は思考以外に、するべきことがあります。
「信じてもらってからには、応えなければいけませんね。貴族の義務として。」
* * * * *
……さて、気づけば気持ちよく爆睡してたのだが。何故だろう、深夜に目が覚めてしまった。
おかしいな。私はなかなか起きないことには定評があるのだが。上に誰か馬乗りしてても、一切目を覚まさず、立ちながらでも寝るという特技を持っているので。
そんな私が起きるときは、危険を感じるとき。で、この世界でなら、それが普通に有り得るわけだ。よくよく考えると、この特技、異世界で最も役立つんじゃね?
んで、何が危険なのだろうか。見渡した限り、何もないんだよなー。いやもう、本当に何も。
獣も、人も。何にもない。
これは、人生で初めての、特に理由もなく目が覚めた、というやつなのか?まさか、私も、異世界にきて、無意識のうちに緊張していたのだろうか?だとしたら、良かった、のかなぁ……
今までの人生で、一切緊張というのと無縁だったからなー。なんか、後輩に、「先輩って、何しても緊張しませんよねー」と言われ、否定できなかったのは、苦い思い出だ。
1000人以上の大人数相手でも、感情が動かないなんて、やっぱおかしいよな。うん。
と、過去を振り返っても、しょうがないか。それに、この感傷、無駄になりそうだ。
遠く、道の東側から、光がきている。先ほどまでは遠すぎて見えなかったようだ。で、それが、結構な勢いで近寄ってきている。
知識では知っている、というか私も使える、光球だな、あれ。確実に、魔法が使えるような、知能を持った生物だろう。んで、それが爆走中と。高確率で馬車系だ、あれ。なんか、光球が、乗り物の揺れで動いてる、ていう感じだ。それにしては速すぎるのだけど。うん。本当に。これ、目測だけど、軽く車に匹敵する速度だろう。
馬車の速度なんて知らないんだけど、流石に、車に匹敵するのは、馬的に無理だろ。これ、馬車じゃなくて竜車的なやつか…………それも、使ってる木材とかファンタジーなんだろうな、きっと。
私が目覚めるだけの、危険なことって、つまり、あの車に乗ってる者が、何か引き連れてきちゃうってことか……いやだなー、モンスタートレインか。
ゲームだと、ただウザいだけで済むけど、リアルにいると、怒りがとても湧いてくるものだねー。
さて、私も光球つけて、戦闘準備しますか。どんな奴が来るかわからんから、逃走準備も抜かりなく。
* * * * *
スマクさんが、竜たちを走らせる。何やら、構造的に衝撃波ある程度吸収されてるそうなんですけど、やっぱり揺れますね。狙いがつけにくいです。とはいえ、本来なら、狙いをつけるどころか、竜車の後ろから落ちてもおかしくない振動があるはずなんですが、そこは、スマクさんの技術でしょうか。
光球の数を増やしながら、さあ、後ろの狼型の数を数えてみましょう!
1体、2体、3体、……………………無理ですね。結論、多すぎます。人生、諦めが肝心ですね。いや、ここで諦めたら死んじゃいますか。
と、いけないいけない。また思考が脱線してしまいました。悪い癖ですね。
気を取り直して、想像しましょうか。狙いはつけられなそうなので、範囲で吹き飛ばすのが一番手っ取り早いですね。炎系で一気に消し炭にすれば、周囲に燃え移ることもないでしょう。
そうと決まれば、早速やりましょうか。
上級魔法の大盤振る舞いです。過剰かもしれませんが、仕方ないですよね。
――――――――燃えることすらせずに、消えてください。
* * * * *
馬車が竜車だと確実にわかるようになった。うん、あれはきっと竜車だ。二足歩行をしているから、イメージは恐竜にも近い。
そんな奴が二頭で、それなりに豪華そうな車を引いて走っていた。んで、その後ろに、狼みたいなモンスターが沢山。ありゃ、群れごと引き連れ来ているなぁ……
幸い、操縦者の腕がいいのか、まだ追いつかれてはいないようだが、それはつまり、そのまま私のところまで来ちゃうということだ。
とりあえず、光球はつけたから、向こうもこちらの存在に気づいてはいるだろう。が、残念。
あの量のモンスターを相手にしたくないから、見捨てさせてもらおう。最初の人との遭遇にしては、ハードル高すぎだろ、これは。
というかことで、いざ、ずらかりますか、と思った瞬間、
――――私は、空を飛んでいた。
猛烈な、衝撃だった。全身を、叩きつけられたような、いや、斜め上に打ち上げられていくような。そんな、人を軽々と吹き飛ばす、圧倒的衝撃。それは、竜車の後方から、街道東側、つまりはモンスターの集団に向けて、熱の塊として、叩きつけられ、次の瞬間には、――爆風が、激震として周囲を襲った。
結構頑張って、空中でも様子がわかるように体勢を整えたので、着地はうまくいった。
どうやら、竜車は、防御系の魔法のおかげで影響を受けなかったようで、道の方も、どうやら魔法で手が加わっていたようで、特に影響がないようだ。だが、周りはそうはいかない。
道ではない部分は、表面部分が吹き飛び、北の森の木が、少々倒れている。木が倒れるほどとは、その威力のトンデモなさがよくわかる。こりゃ、私が飛べるわけだ。ちなみに、南の森は、一切影響なし。これはこれでトンデモない。
そして、そのトンデモ魔法の対象であったモンスターといえば――当然、消え失せていた。文字通り、言葉のままに。完璧に、炭すら残さずに、跡形もなく。
どうやら、私が目を覚ましたのは、モンスターのせいではないらしい。あんなのは、私の眠りを邪魔にするには到底足りない存在だったようだ。そんなものより、
――――――そんなものより、あの魔法の術師の方が、余程ヤバイ。
来週、なんとか今より執筆速度を上げたいかなぁ(願望)。
努力しますので、どうか今後もよろしくです。