第13話 腕試
ギリギリ5月に間に合ったと言えるでしょうか……お待たせしました。ようやく、戦闘ありです。
さて、冒険を始めようなんて言ったはいいが、どうしよう?
何ができる?森から出ようと先ほどは思った。いや、でもそれ、よくよく考えるとどこが出口かわかんねえよ!
何もすることないと、私がイタイ子になっただけになってしまう…………考えろ、私の灰色の脳みそ!絶対灰色じゃないけど!
自称精霊の言う通り、西に向かうか?いや、でもそれ、太陽が見えないから方角もほぼわかんねえよ!
そもそもこの森どこまで続いてるんだ?知るわけねー。
ここでどうにか暮らしながら探索を地道に続けるか?危険かもだし、飯が無い。
うーん。どうするべ?………………あれ?そういえば私、何かとっても単純でお役立ちなもの忘れてないか?こんな時にピッタリのもの………………
「あーーーーー!!!!」
いかん。つい大声を出しながら立ち上がってしまった。とそんなことより!
そうだよ!あるじゃないか!こんな時にピッタリなもの!そう、鑑定だよ!
鑑定で食えるかどうかを見ればいいんだ。食えない、毒があるようなものは説明の部分にそう書かれているはず。
なんで気づかなかったんだろう?自分が思っている以上に気が動転しているのかな?
今後はこういったミスでさえ命に直結しそうだからね。注意しなければ。
まず、ギゼン草は食べられそうだということがわかっている。薬になると書かれていて、毒性は書かれていないからね。
鑑定だけに頼ってしまうのは危険かもしれないが、ほかに方法がないのだからしょうがない。
ギアク草やキバク草は、体に害がありそうなので却下だな。ハッパ草は、ドーピングだしな……食べてしまえば、瞬間的には役立ちそうだが、後が怖い。想像するに、そこまで効力は強くなさそうだが、やっぱ気持ち的にも、リスクは冒したくない。
とすると、新たに幾つか食えそうなのを見繕う必要がありそうだ。
では、比較的数が多そうなミヤマオダマキから行いますか。
ギコウ草
品質:低級
状態:良
特徴:芳香剤の原料となる。特定のものと混ぜ合わせることで、様々な香りに変化させることができる。そのレシピは無限にあるとされ、料理などにも重宝される。しかし、ギコウ草のみでは、逆に消臭剤の代わりとなる。このため、ギコウ草の群落がある地は、一切の匂いがなくなる。
また、魔力のたまりやすいところに生えているギコウ草ほど、品質は良い。最高級のギコウ草は、1本にて空気・空間の正常化すら成し遂げ、芳香剤として用いれば、匂いだけで快楽が得られるほどであるとされる。
伝説では、さらに上の品質があるとも言われ、それは、時空の正常化・聖域の発生すらをも成し遂げるという。
うん、低級で安心した。それにしても、香り系か……便利そうだなぁ。
……まあ、想像はしていたけど、植物って、超最上級までなると、神に手が届いたり、時空干渉できてしまうほどの可能性秘めちゃってるわけね。エネルギー源が魔力とはいえ、結構無茶な設定だよな――ていうか、あれ?
今更ながらに疑問に思ったのだが、魔力ってなんだ?
マナと精神力については知識が付与された。だけど、魔力ってなんだ?
最初は、マナと同一かと思っていた。のだが、よくよく考えると、それだと話がかみ合わない。
マナってのは、星全体に同じ密度で存在し、魔法で消費はされない。それに対し、魔力はたまりやすいところ、そうでないところがあるようだ。これでは、根本的に性質が異なるようだ。
一体なんなんだ?おまけに鑑定って能力もわけわからないしなぁ……
校長に聞いとけばよかったなー。
後悔しても意味がない。ということでさて、自分で仮設でも立てよ――
――殺気を、感じた。
気づけば、体が勝手に動いていた。咄嗟に前転し、勢いよく、その場から離脱する。
わけがわからない。――一体、何があったんだ?
目の前には、明らかに知能の低そうな、ゴブリンが一人…一体?……一匹?とにかく、いた。緑色の肌にボロ切れをまとい、棍棒を持ち、下品に口を開け、犬歯の覗いた小鬼。これはもう、定番でしかないよね。うん、どこから見てもゴブリンですよね。
それが、私を、襲ってきた。それは、当然だろう。モンスターと称されるであろう存在が人を襲うのは、極めて当たり前で、自然の摂理とさえ言えそうである。それまでは、いいのである。問題はそこからだ。
気配が、なかった。足音も、匂いも、草を掻き分ける音も。姿は、森の中を歩かれてしまえば、気づきにくいのは確かだ。しかし、他が一切なかったのは、おかし過ぎる。
とまあ、ここまで思考を終えたところで、とりあえず、打ち切り。
ゴブリンが動き出した。思いの外素早く、静かに、動き出す。そう、静かに。
とりあえず難しいことは考えず体の反射に任せる。
ゴブリン、直進す。私に向かってまっすぐ、棍棒振り上げて。横に避ける。避けきれる。
剣はまだ抜かない。今回はちょうどいいから、腕試しだ。どこまでやれるか、やってみようか。
ゴブリン、また意外と素早く向きを変えてくる。棍棒に振り回されてもいない。
本能的に、体の動かし方を理解しているようだ。足音も、やはり無い。厄介である。
ゴブの振り回す棍棒を避け続ける。1回、2回、3回、4回、5回。次、カウンターでいくか。
6回目の攻撃。懐をくぐるのは無理そうだ。相手が小柄すぎる。しょうがない。ゴブが振り切ってから、首に一撃。
完璧に勢いを乗せ切って、ストレート。ゴブは避けきれない。
――入った。嫌な感触である。首の折れる感触。
一歩下がり、構えたまま様子を伺う。死亡確認かな?
以上、戦闘終了。構えを解く。
腕試しとしてはまあまあであった。
どうやら私の拳は、ゴブを仕留めるには問題無いよう。
問題は、やはりそこでは無い。
ゴブは、棍棒に振り回されるほど無様ではなかったが、足音を消すほどの体術を会得しているようには見えなかった。こんなに静かな戦闘、初めてである。
…………………うん?静か?音がなかった?あれ?私の足音、どこいった?
今後も、更新危うげですが、よろしくお願いします。あと、話ごとの名、なんとなく2文字にしてみましたが、もう限界がきそう……
ダメそうだったら諦めるかもです。その時はなんかすみません。