第10話 続・解体
申し訳ありません。連休で遊びつくしたので一周遅れました。
もう一つ申し訳ありません。まだ、食事にたどり着けませんでした。
次回ぐらいから急展開目指します。無理かもですが。
結論から言おう。目の中に血が入った。体が脳の管理下になく、流れるように動いてたら、うんまあ、目をつぶらずに血を浴びてしまった。
視界が赤く染まるという体験は、実は人生初じゃなかったりするが、やっぱりなれるものじゃない。しかし今回一番の違和感は、目を開きながら、自分の目の中に何か飛び込んでくるのを凝視している羽目になったことだ。
脊髄反射抑え込むレベルの効果があるらしい、あの魔法。
ってそれ、人間の本能抑えれるレベルじゃん!それ、洗脳とかに使える結構やばい魔法じゃね?
…………気にし過ぎると不安で挙動がおかしくなりそうなので、忘れることにしよう。
「どうしたお主?体が震えておるぞ?」
「わかって言ってるだろ校長!」
あ、いや、心読めるんだからわかって言ってるのも当然か。ってそれ、なおさらタチ悪くね?
何考えてもバレてるってこういうことなのか。面倒だな。もうそれで流そう。
今重要なのは、まず何よりも飯。その一点に尽きる。何のためにわざわざ血を浴びたのか。それは飯のためでしかなかったのだから、これで今夜飯抜きとかになったら、私が体張った意味がなくなってしまう。無意味にただ血を浴びただけって……それ虚しすぎる。
せっかく苦労したのだから、それに見合うだけのうまい飯を得る!
ということで、作業再開。っとその前に、体を洗っておく。
魔法に体をきれいにするための便利魔法なんてものはないようなので、諦めて水浴びをする。魔法って、妙なところで不便だな……それに魔力消費ないのに精神力消費するとかいう謎設定だし……どうせなら無制限にしてくれればいいものを。
なんて魔法をディスっていても意味ないので、さっさと頭の上にでかめの水玉を作り、落とす。
水温はプールぐらいをイメージしたので、それほど冷たくはない。というより、血が温か過ぎて気持ち悪かったので、丁度いいぐらい。私、普段から結構水風呂とか入るしね。
全身から水が滴る。気温も寒さを感じない程度なので、問題ない気もするが、一応乾かしますか。
こちらはドライヤーイメージして、正面から温風吹いてくる感じで。火魔法と風魔法の合わせ技だ。火の玉にすらならない程度の熱を発生させ、そこから威力を抑え、継続時間だけを伸ばした風を発動。
地味に高度な技を駆使した心地よい風を浴びながら、一言。
「やっぱジャージいいな…………」
何がいいかって?それは、ジャージの性能の一つ、『すぐ乾く』である。まあ、本当に校長お手製のこれが本来のジャージと同じものかはわからんけど、深く気にしても意味がないのでそこはスルー。
それはともかく、ホント、すぐ乾くよねぇ〜、ジャージ。温風浴びて1分経たずに乾いてしまった。
髪はいいか。服さえ乾けば気持ち悪さはないし。ということで、作業再開。
途中手元が暗くなってきたので、光球を出しながら、馬の解体にいそしむ。今度は返り血を浴びないように慎重に、だ。さっきはそんなこと考えていなかったせいで、血を避けるなどの動きできなかったので、今度は事前に、無意識の体の動きに少々意識を介入させる。やればできるもんだ。それに慣れてきたら、無意識に血を浴びない動きを体がとるようになった。便利だね、これ。汚れたら、血が固まる前に、水魔法で洗っていく。生臭くなるのはこの際しょうがない。諦めて、匂いになれることにする。
骨などから肉をそぎ取り、いつの間にかそばに置いてあったボウルに入れる。このボウル、一体何なのか、なんて思ったりもしたが、少々怖いので自重。
それにしても、しゃぶしゃぶに合わないところはどうしようかなぁ。
あまり保存聞かないけど、勿体無いし……
「使えなさそうなところは、儂がもらうぞ」
問題解決。
「ありがとうございます。馬刺しとしゃぶしゃぶしたいので、これに合わない部分はじゃあ全部差し上げるということで」
二人だし、あまり多くはいらないだろうから、バラとか、有名で美味しい部分だけを選んで量は控えめかな。
なんてことを考えながら頑張って馬を解体していく。
それにしても、自分が感性ぶっ壊れててよかった。
大型動物の中身見てもなんも思わないどころか、内臓触ってもうまそうとしか思えなかった自分………うわぁ、自分で考えてて人で無しにしか思えない………落ち込むわぁ………
いかんいかん。また思考が脱線してしまった。
とはいえ、こんなマイナス思考に向かっている間に、結構進んだ。
皮は私には扱えないので、骨や内臓と一緒に放置。処理するのも面倒なので、
「このいらない部分の処理お願いします」
校長に押し付ける。それが一番楽な解決方法だからね。
「お主ホント遠慮なくなったのう」
「褒め言葉と受け取っておきます」
楽な解決方法を選択するのはある意味当然のことだし、校長を敬おうという気も湧いてこない。校長がすごいのはわかるんだけど、どうしても、目上と認識できないのだ。不思議だなぁ。
あ、とは言ってもナメてるわけじゃなく、どちらかというと親しみを持っている感じ。いや、それってやっぱり精霊をナメてるってことなのかな?まあいいや。
そんなやり取りをしているうちに、取りたいと思っていた肉は取り終わった。いやー、無意識で体が動くっていいね。
「お主、先ほどはそれで血を浴びていたろうに……」
校長が何か呆れているようだが、何のことだろう?私は過去は振り返らない主義なのだ。
それはともかく、馬は捌き終わったのだ。もうあとは、調理し、食すのみ!
ということで、コンロに火をつけ、鍋を上に乗せる。
食卓には何やら醤油らしきものやポン酢らしきもの、ゴマだれらしきものなど、とりあえず見た目は日本でお馴染みの調味料たちが、これまた見た目はお馴染みの容器に入っている。っていうかこれ、どう見てもラベルまで再現してあるんだけど、そのこだわりの意味って一体……ていうか、やけにデジャヴだ。
「ああ、これ、日本人クオリティだ……」
話していて、ようやくわかってきた。この世界の価値観は元の世界とは異なるはずなのに、やけに校長は日本人そっくりなのだ。変なところにこだわって仕上げてしまうあたりが、血液A型日本人的なのだ。
「それは褒めているのかの?そこはかとなくバカにされているような気がするのだが」
「褒めてますよ」
うむ、周囲から変人だと罵られてきた私の同族ということなのだろうが、それは私レベルと言っているのだから、褒めているのだ。
……褒めているのだ。断じて、褒めているのだ!私レベルとかなにそれ可愛そうなんて自分で思ったりしないからな!
誰に言い訳しているのだろう、私は。
今後も宜しくお願いします。