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何がために君は死ぬ  作者: 小説中毒者
第1章 幼馴染
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第9話 解体・続

まだ解体が終わりませんでした。

 土系統、拘束・移動阻害魔法。それを元に、馬の後ろ半身を持ち上げるようにすればいい。

 木と縄を使い吊り上げられている絵ならば、二次元で見た事がある。あ、別に18禁系じゃないからね?至極まっとうな狩猟生活の漫画ですよ。……それもあまりまともじゃないか。

 とにかく、そう言った知識をもとにイメージすれば、そう難しいことじゃないだろう。

 魔法の一番の根っこには、イメージ、つまり妄想力だ。私の得意分野ということ。

 目は開けておく。でないと馬の姿を見ながらできないからね。

 魔法発動。これは、イメージさえしてやればいいのだ。魔法がつけるなら、それで発動する。経過を見ながら修正することができることもある、便利な技術なのだ。

 イメージが完了した。ということで、実行。

 元のイメージが木と縄を使ったものであるからか、まず縄ぐらいの太さの土が植物を押しのけ伸びてきて、馬の後ろ足など後ろ半身に絡みつき、固定。次に、すべての縄もどきがひっついている根幹部分のでかい土が上に伸びていく。

 しかし、伸びていくと言っても、地面が隆起していっているわけではなく、土が発生しているのだ。この世界の土魔法はもとからある土を使うんじゃなくて、発生させた土を使うのか。質量保存の法則本気でガン無視だな。

 植物は、押しつぶされはせずに、押しのけられているようだ。いったいどんな原理なのだろう?

 ていうか、これ、意外と質感含めて葉無しの木の成長早送りを見ている気分だ。私がそうイメージしたからなんだけど。

 ……凝り性のさがで、どうしても、この木の幹の質感をリアルに仕上げたくなってきた。意外と、細かくいじれるようだ。

 ちなみに、土で、そこまでいじれる軟らかさを持っているのに、魔法性能のおかげで、堅いという、不思議物質であります。魔法で発生させたものだから、慣れたらもっと感触とかもいじれそう。これ、元の世界に持ち帰ったら、とんでもなく高い値段で売れるんじゃね?土なのに馬支えれる堅さって、

便利すぎじゃね?なんて思ったりするわけですよ、自分。

 正直、元の世界に戻れたら、これだけで食っていけるんじゃないだろうか。そんなことしたら、私はただの魔法土製造機に成り下がるんだけど。いや、人の役に立つんだし、成り上がるのかな?まあそんなことはいいや。

 魔法を解除した時には、魔法によって発生した土は、小さめの木のように。ってそうしたの私なんだけどね!

 そんなクオリティの高い(自画自賛ですけど何か?)木、さらに言うと山桜にぶら下がっているようにしか見えない馬は、先ほどよりも捌きやすそうに見える。……捌きやすそうということがまず最初に頭に浮かぶ時点で、私もう毒されすぎたな……

 さて、それはさておき、準備万端になったので、もう捌くしかないよね?ていうことで、包丁構えて、いざ!

 と言っても、私の頭ではなく、体が覚えているようなものだから、頭でいざ!とか思っても、体が動いてくれないと意味がないのだけども。やはり、気合い入れるのは大切だよね。

 ……うん、今から起こるであろう未知の出来事に対し、余計なほどハイテンションになっているようだ。自覚はないけど、こうでもしないと不安を消し飛ばせないからだろう。ほら、大会とかの前の緊張を飛ばすためにやるアレだよ。わかるだろ?

 ………………私、先ほどから誰に同意を求めているのだろうか。一人で頭の中で語ってるのって、虚しいなぁ……


「ワシに同意を求めておったのか?」


「っ!?はい、当然そうですよっ!?」


 急いで後ろを向く。目の前には、どこからか出てきた調理台と、切られた野菜、コンロ、水入りの鍋、準備された食卓、そして校長がいた。まあ、予想通りの光景だ。

 …………すみません、嘘です。存在忘れてました。自分の作った木に意識を傾けてました。

 唐突に話しかけられたものだから、びっくりして声が上ずり、肩もはね上ってしまった。絶対変な声だったな、あれ……


「まあ、裏声にはなっておったかのう」


 ………………………さらに酷いことに、校長が心読めること忘れた。一つのことに集中すると他のこと忘れる癖はやはりまずいなぁ。

 それに、あのコンロ、どう見ても元の世界のと同じ見た目なんだが、あれも自作なんだろうなぁ。

 と、それはさておき。微妙に緊張もとれたことですし、馬の解体を――


「反省しておらぬのう」


 思考途中に校長が口を挟んできた。それも、人が次につながることを考えようとしていたのに、失敬な。迷惑かつマナー違反である。にしても、反省ねぇ……反省とは、この場合、校長のことを忘れてたことだろうか。だがまあ、私が何かに没頭して人のこと忘れるなんて――


「――当然です」


 実際にいつもそうだったのだ。だから、今回もそうだったし、反省をするわけもない!と、内心全力で開き直ってみた。人のこと忘れる方がよっぽど失礼じゃないかとかいう心の呟きが聞こえるが、気にしない。

 とにかく、ここまで開き直られれば、文句も言えまい!


「呆れすぎて、だがな」


 皮肉なんて気にしない、気にしない。気にしたら負けだ。私はどうせすでに全戦全敗、それも大差の完封負けだ。つまり、気にし過ぎなのだが、今はそんなことより、血抜きが優先だ。

 全く、余計なことばかり考えさせられたせいで、心拍数が上がってしまった。一体誰のせいだ。クレームつけてやる!=自分で自分に文句言いたい。雑念多すぎ!

 馬の方に改めて向き直り、深呼吸しながら、包丁を下段で構える。つまりは、持ち上げずに垂らしておく。

 目標、頭。意識を集中し、馬の首付近をじっと見ながら、呼吸を、日本武道のイメージで整える。要するに、決して息を止め切らずに丹田に力を込めて肉体・精神を整えていく。一応、そっちも少しは齧ってたから、なんとなくわかる。

 自分の息づかいすら聞こえず、鼓動も聞こえない。対象すらも意識せずに、半ば自然体で構える。

 そこまですれば、考えずとも、体が勝手に動いた。


「ふっ!」


 振り抜き、残心の姿勢から、自然体に戻す。

 首が落ち、血が地面に滝のように流れていく。下に生えていた植物たちが、美味しそうに血の洗礼を浴びている。

というか、ここの植物の凶悪さを考えると、本当に何かの血を栄養分にしてそうで怖い。

 にしても、頭が下を向いているので、返り血がなく、地面がどんどん血を吸っていってくれるので、足元も汚れない。意外と上手くいったな。

 上手くいったというか、斬った感触がなかった。ただ振り抜いた感がある……

 手元の包丁を確認。包丁をふるって包丁に血のりが残っていない+骨ごと斬ったのに欠けない+抵抗なく斬れる、これ、相当熟練の技じゃね?私、そこまで包丁使い上手かったっけ?体に覚えさせられたこの動き、もう達人級のような気が……

 なんて頭が考えていたうちに、体が動き出した。包丁をまじまじと観察していた姿勢から、先ほどと同じ下段の構えへ。これ、頭の命令無視して体動いてない?自分の体の状態を、自分のことじゃないように分析・解説できるんだけど。

 解説を実際にしてみよう。今度狙うは腹、つまりの内臓方面のもよう。おまけに、体がそこまで力んでないことからして、返り血を避ける気は無さそうだ。いや、脳を除いた体に気なんてあるわけないのだけれども。

 つまりこれが、魔法によって付与された技術の限界なのだろう。

 でも、限界があると言われれば、それを超えたくなるのが、人というもの。ということで、次回からは、頑張ってこの体が勝手に動いてる状態を抜け出して、自分の意思でこの動きを再現できるようにしていこう!

 え?今回?そりゃもう素直に諦めて……白いジャージを赤く染めますよ、はい。

 包丁が馬の腹を綺麗に捌いていくのと同時に、いつもよりもスローに感じる世界で、私の視界を鮮やかな赤が染めた。




体調不良でやばげなので、食事にたどり着くにはまだ時間がかかるかもです。すみません。

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