プロローグ 前兆
初投稿です。文章がまだまだ拙いかもしれませんが、読んでもらえると嬉しいです。
重々しく居座る黒き雲。
荒れ狂う嵐。
全てを舞わせる竜巻。
鳴り響く雷鳴。
地に落ちし閃光は、周囲を巻き込み猛威を振るう。
世界の中心ともいえる場所では、いまだかつてないほどの災厄が襲いかかっていた。
その中にそびえる、――の頂上には、様々なものの血で、魔法陣がかかれていた。
それは、太古の昔、神が行使した、禁断の魔法。
それは、今世に生きるものが、この世にその姿を現わすよりも以前、一度だけ大地にえがかれた、神の魔法。
本来、封印され、行使した神自身さえ、もう2度と振るうことは叶わぬ力であった。
それを行使するのは、“モノ”。
狂気のみで動くそれは、陣の中心で叫ぶ。液体に満たされた聖杯を掲げ、狂気に満ちた声で。
「フッフッフッ、アーハッハッハッハッハッ!」
その声は、まるで、怨嗟の声。呪詛の声。あるいは、悲鳴。この世全てを憎悪しているかのような、そんな声。
笑ったら気が済んだのか、“モノ”は、詠唱を始める。
独特の言い回し、抑揚、複雑な呪文、長い詠唱を行う。
神すらも最早知らぬはずのその魔法。
本来それは、もっと神々しいような方たちが行う、神聖なことであり、その声には、願いが、そして希望が込められているはずだった。過去、一度だけ行われたその儀式は、未来への希望といった、尊いものを具現化させたかのようだった。
しかし、“モノ”の行う詠唱には、いや、儀式全体には、負の感情しか、込められていなかった。
詠唱を唱え終わった“モノ”は金属が擦れる摩擦音のような大声を叫ぶ。今まで自分を虐げてきたと、少なくともその”モノ“が思っている、全ての被造物に向かって。
「見よ、愚か者どもよ!我は、遂に、神の領域にまでたどり着いたのだ!」
”モノ“は狂気に、そして狂喜に満ち溢れた声似て高らかと叫ぶ。誇らしげに、愉悦をにじませて。それは、あまりにも見苦しいものであった。いっそ、醜いとも言えた。
「ハハハッ。神よ、見ているがいい、我が覇道を!そして出でよ!次元を超越し、我が召喚に馳せ参じる者よ!我が正当なる権利を代行する者!世界を震撼させし、我の代行者よ!汝の名は――」
”モノ“は結局最後まで言い終えることができなかった。
天より天罰が如き雷が落ちた。寛容とされる神でさえも、見ていられなかったのかもしれない。
轟音により声はかき消され、聖杯が宙を舞う。
聖杯の中身は撒き散らされ、雨のように大地に注がれる。
再び、大地に、輝く災厄が襲う。
聖杯は砕かれ、塵となり、災厄は無慈悲に大地を猛威を振るう。
まるで、それは、神の怒りの手のようであった……
…………………………そして、その日、全てが始まった。
できれば今後も読んでいただければ幸いです。