エピローグ ~インターバル~
いよいよ最終話です。短いですが、お楽しみ下さい。
エピローグ
チャイムが鳴った。
「はいっ、やめぇ!」
先生の声と共に、生徒達の様々な思いをのせた吐息が漏れる。
「はぁー、終わったぁー!」
首をコキコキいわせながら、田辺は後方から回ってきた解答用紙に自分のものを乗せ、前に回した。こうして二学期中間考査の全日程は終了したのであった。
「あー、何か、今回のテストは乗れなかったなぁ」
堅吾の席へ来てそうこぼす。
「…人にさんざん教えてもらっといて、その言い草か」
苦笑する堅吾。約束通り、月曜日から放課後3人は毎日勉強会を開いた。場所は近所のハンバーガーショップ。副制御機構の更なる性能向上のため、アルマエロは未来マテリアル研究所に再び出勤していた(クロイスパイアヌⅠー0008に使用した物は、高負荷により壊れかけていたという)。プリヌフも半分は輸送艦、半分は芦屋家という状態で、田辺達と鉢合わせを避けるため適当な理由を付け自宅を断ったのであった。
「いやいや、それには立派な理由があるのだよ、友よ」
「あの不発弾処理の事だろ?」
「おお!さすがは友、良く判っている!」
「…さんざん疑惑だ何だ言っといて、判らない筈無いだろ?」
日曜日朝、急に発生した霧によって多賀湖周辺は避難所からの視界から隠されたのであった。そして、音。
「ありゃ絶対、不発弾処理なんかじゃないって!きっと悪の宇宙人と秘密戦隊が戦ってたんだって!」
事実と当らずとも遠からず、の持論をまくし立てる。
「秘密戦隊って何だ?幾ら日曜の朝だからって」
「茶化すなって!あの一件を俺みたいに疑ってる連中が大勢いるんだからさ!雑誌に調査依頼の投稿してる奴も居るんだぜ!」
スマホを取り出し、ツイートを見せてくる。
「判ったよ。何か望み通りの結果が出ると良いな」
宥める様に手をかざし適当に答える。余りこの件で話をしたくなかったのである。多賀上湖に沈む輸送艦の電力を用い超音波で霧を発生させたのであるが、視覚はある程度遮断出来たとしても、聴覚に関するものは無理であった。銃撃音等を不発弾処理の音というのは少々無理があったか。しかし、昼のニュースで不発弾処理に成功した旨が、過去のニュース映像を加工したものと共に報道されていた。たとえ田辺が読者である様な雑誌に記事が掲載されたとしても、いつものネタとして半笑いで済まされるであろう。むしろ、そういった雑誌が取り上げる事で、信憑性が薄れる効果も期待出来たのであった。
「ま、馬鹿にしてられるのも今のうちだぞ?真実はいつも1つきり、だぜ!」
人気アニメの決め台詞を臆面もなく言い放ち、自信満々の田辺であった。
買い物を済ませ帰宅すると、アルマエロがリビングから出てきた。
「あ、早かったのか?」
靴を脱ぎつつ声を掛けると、1つ頷く。彼女は別に社員でも何でもないので、時間に縛られる事は無いのであるが。
「当面、月で強襲揚陸艦の修理に集中する。新しい副制御機構も完成し次第クロイスパイアヌⅠー0008に搭載する。私達は、急がなければならない」
田中姉妹も言及していた通り、帝国からの更なる艦隊派遣は予測されていた。しかも今度は正式な艦隊派遣であろうと。それが田中姉妹、アルマエロ達の共通認識であった。
「そうか…じゃあ、今日は少し気合いを入れて料理するか」
「はい。お願いする」
暖かな笑顔で見交わす。賽は投げられたのである。どの様な目が出ようと、結果を受け入れる覚悟は出来ている。廊下に上がった堅吾は、レジ袋を置くためダイニングに入っていったのであった。
END
これにてひとまず、序章は一巻の終り、となります。感想など頂ければ幸いです。