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それから軽く身支度を済ませ、二人揃って家を出た。
入り組んだ住宅街を抜け、市道に架かる橋を渡れば、目的の場所へは徒歩数分で着く。
「暑っ」
梅雨明けの近い空は気持ちよく晴れていて、太陽はもうすぐ真上。
照りつける日差しに早くも心が折れそうになった。
軽く羽織ってきた日除けのパーカーが邪魔になってくるほど湿度も気温も高い。
それなのに、斜め前を歩くハルはどこか涼しげだ。
しかも、白いシャツにジーンズという簡単な服装の癖に、弟の贔屓目に見ても格好良い。
凛とした佇まいも、年齢の割りに落ち着いた性格も、密かに俺の憧れだったりするのだけど、本人はきっと気付いていないんだろう。
俺も、もうちょっと背が伸びてあんな風になれたら。
そう思わずには、いられない。
「千里」
背筋の真っ直ぐ伸びた後ろ姿を眺めていれば、ハルが突然振り返った。
「……どうかした?」
まさか。
食い入るように見つめていたのがバレたのか。
一瞬、訳もなく焦ったけれど、そうではなかった。