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「あんた、ちょっと変だぞ」
「……そう?」
しかしこの変人、よくよく見ると全く見覚えがない訳でもない。
逆光の所為で分かりづらいが、彼はひょろりと長い身体に近所の進学校の制服を纏っている。
白いカッターシャツに濃紺のブレザー。
生真面目にかっちりと締められたネクタイの色は深いえんじ色。
これだ。
このネクタイをごく最近、目にしたような気がする。
「どっかで会ったこと、ある?」
うちの高校は学ランだから、こんな目立つ色のネクタイにはなかなかお目にかかれない。
見た覚えがあるとするならば、他校の制服か、もしくは全く関係ないサラリーマンのものと言うことになるのだけど。
「……ユラ」
「ゆら?」
「鴨井由来と申します」
鴨井由来。
やはりというか何と言うか、名前に心当たりはなかった。
けれど確かに、会ったことがある。
大きくは無いのにしっかりと耳に馴染む声。
それにも聞き覚えがあった。