獣人
骨に稲刈り、小骨に掃除を命じたまま爆睡したら一晩中作業してたらしい。
神殿は1階も2階もぴかぴかになるまで掃除され、稲は全て刈り取られ柵に干されている。
小骨に朝食の芋を焼いてもらい朝食にした後、小骨には村内に有る壊れていない物を集めて簡易宿泊部屋の1つに保管するように指示し、骨には食べられる物を集めて来いと命じた。
水も食料も目処がついたので書庫の本を物色する。ちなみに日本語で書かれていた。
料理の献立から魔道書まで幅広く置いてある様だ、とりあえず月影の女神 神官心得集という本を手に取り執務室へ移動する。椅子に座り机の上に足をのっけて持ってきた本を読む。
最初の半分は女神が降臨した際にどの様にもてなすか、が延々と書かれていた。
椅子に座らせる際はお姫様抱っこ必須とか、口をあけてたらお菓子をそっと食べさせるとか、どんな駄女神だよ!と突っ込んだ。
後半は実に有用だった、普通なら1/3読んだ時点で放り出すレベルの書物だが、自分が信仰している設定の神様の本を読まないわけにはいかないと我慢して読んだかいがあった。
収穫として、魔法生命体の召喚には上限が無い事が分かった(触媒が必要だから無限に出せる訳ではない)
それにスキルがいくつか手に入った。
単体回復:キーワード「マイナーヒール」ターゲットの傷を癒す
集団回復:キーワード「グループヒール」指揮下にある者全ての傷を癒す
魔法生命体強化:キーワード「下僕強化」ターゲットの魔法生命体のあらゆる能力を上昇させる
魔力充填:キーワード「マナチャージ」魔力結晶に術者の魔力を充填する
キーワードは自分で適当に決めた、厨二的呪文を設定されたら使えなくなってしまう。
この4つは、宗派固有の魔法の様で夜間に使うと効果がUPすると書かれていた。※似た様な名称・効果の魔法は複数存在し、熟練度・使用者の魔力量が上がると効きが良くなるらしい。
前半は読むのが苦痛でペースが遅く、後半は興味が有り過ぎて1冊読み終わったら昼を大幅に過ぎていた。時計が無いから正確ではないがおそらく2時から3時の間位だと思う。
さっそく魔法生命体の触媒を探しに行く、骨が収穫して視界が開けた稲畑(たぶん昔は水田だったと思われる)の畦道を散策する。畦道から骨っぽい物が見えたらじっと眺めると言う地道な作業を繰り返し、鑑定スキルで使える骨を見つけ出す。明らかに頭蓋骨なのにアイテムとして表示されないものもあり、基準が分からない分見つけるのに時間が掛かった。
厨二的呪文で新たに呼び出した魔法生命体だが、いい名前が思いつかないので名前を付けますか?でnoを押した。
「1」と言う残念な名前となった骨は埋まったままの体を起こした際にわずかにダメージを食らっていた、手には骨素材の弓を持っていたが弦が張られていない?矢(骨素材)は2本腰にぶら下がっている。
俺はためにし全焼している小屋を指差し、アレを1回攻撃しろと1に命令する。
腰の矢を手に取ると同時にMPが減少し弓に青白い光の弦が発生し矢を放つ、小屋に突き刺さった矢は数秒でボロッと崩れ1の腰には2本の矢がぶら下がっていた。
「川で汚れを落とせ」と命令し骨と小骨を探し、神殿に戻れと命じていると川から上がってきた1がこちらに向かって歩いている所だった。
骨と1に神殿前で見張りをさせ、小骨に芋を焼いてもらった後 今日集めた品をきれいに掃除しろと命令した。
料理中の小骨から火を分けてもらい2階にある風呂釜に火を入れる、水から沸かすのは時間が掛かりそうなので薪を突っ込んだ後、芋を食べ小骨の集めた道具類を鑑定スキルで鑑定し時間をつぶしてから風呂に入る。仮想空間だと言う事を忘れそうだ、石鹸もシャンプーも無いから湯船に一度潜ってから風呂を出てベットに潜り込んだ。
~~~ 4日目 ~~~
朝食の芋を食べながら今日の作業予定を考えていたら、小骨が慌てた様に俺の袖を引っ張った。
何事かと思いながら小骨に促されるまま外に出ると、傷だらけの熊っぽい獣人(たぶん♂)が神殿の前に倒れていた。
骨に「お前らがやったのか?」と聞くと、骨が首を横に振った。
「マイナーヒール」昨日覚えたスキルを獣人に掛けてみる
傷が塞がった熊獣人が「助けてくれ!人間に村が襲われてるんだ」と言いながら俺を見た途端に「人間!?そんな・・・」と絶望したように呟いた。
「おいおい、失礼な奴だな。せっかく助けてやったのに」
と言った所で、川の向こう側から獣人の集団(見た感じ女・子供)が手を取り合ってこっちに走ってくるところが目に入った。
後ろに気を取られながら、必死に逃げている様だったが子供やけが人が居る為速度は速くない。
その後ろから、明らかにこちらを警戒しながら獣人を追いかける4人の人間が居た。
「熊さんよ、あいつらは何で獣人を追い掛け回してるんだ?」と問い掛けると
「お前たち人間は女・子供を売り物にするんだろ、何故今更そんな事を聞くんだ!俺の傷を治してどうするつもりだ」と力なく俯いた。
「あぁ、奴隷商人の手先か」俺の中で人間側が悪と決定された
熊の獣人と話していたら、俺に向かって飛んできた矢を骨が剣で叩き落した。
連中も俺を敵と認識したようだ、小骨が俺の剣と盾を持って来ていたので受け取る。
「下僕強化」骨に強化魔法を掛け「敵を排除しろ」と命令する。
骨が剣を掲げて走っていく、1が弓を2射して俺に矢を放った人間を倒した。骨が逃げて来る獣人とすれ違った辺りで魔法を発動した様だ、MPが半分減って敵が二人倒れた。血の霧みたいなのが発生したが何の魔法だろう?逃げ出そうとする最後の一人の太ももに1が放った矢が刺さり、骨に追いつかれて切り伏せられた。
「・・・弱!」
「え?そんなはずは・・・」熊が呆然としている。
「熊さんよ、奴隷商人の手先はあの4人だけか?」
「はい、そうです」何故か熊の言葉遣いが丁寧になった