平和な日常?
日の光で目が覚めると礼拝堂だった。
小骨が俺の横にちょこんと座っていたし、ノヴァ達6人は長いすで寝ている。
「おい、そこの終電乗り遅れちゃった人たち朝ですよ」
6人を起こしつつ、入り口に目をやると骨と1が見張りをしている。
いつにも増して頼もしい感じを全身から放っている、様な気がする。
「何か、体が軽いな」と呟きつつ自分の体をチェックしていたら、剣が変わってる。
何これ?日本刀?
シミターが日本刀に・・・
佩いている日本刀を取り合えず抜いてみると刀身が1m位あるな、刀じゃなくて太刀か。
「これはいただけないな、片手じゃ扱い難いじゃないか」と一人で呟く
盾持ち片手剣スタイルの装備なのに太刀とかゲームデザイナーめどうなってるんだ。
目貫と鍔に月影の女神のシンボルの飾りが入っている、これはすごく良い。
太刀を納めて盾を見てみると、大きさや形は今までと変わってないが素材が軽量な金属に変わったようだ。
「そこの6人、説明を求む」
俺の要求にノヴァが回答したが、女神がおやつを食べ終えた頃に俺は意識を失い倒れたらしい。
女神は「久しぶりに美味しいお菓子が食べられたからご褒美上げる」と言って俺と骨と1の装備を強化?して帰ったらしい。
女神が消えると同時に小骨がスケルトンの姿に戻ってしまいガッカリしたとか言ってる。
「シミターの方が使い勝手が良かったのに・・・デザインは太刀の方が良いけど」
「そんなことより、あれはあの娘の本当の姿か?」とノヴァが食いつく
「・・・知らん。ケモナーの次はロリコンか?確かにやばいくらい可愛いのは認めるが、小骨は俺のだからやらんぞ」
「エルフは他にいないのか?この近くに住んでたりしないのか?」
「だから知らんと・・・」
「俺達の改宗も済んだし、回復スキルも覚えた!エルフを探しに森を探検しよう!今すぐに!」
「家の建築が先だろうが!」
こいつらはダメかもしれん。と思いつつ会話をしていたら、エイミーさんが2階から降りてきて、
「午前中に今作ってる家完成させるんだからサッサと来なさい」とまだご機嫌斜めなようだ。
ゾロゾロと移動していく集団を送り出し、小骨に「ところで朝飯は?」と聞いたら慌てて食堂の方へ走っていった。
小骨が料理を作る間に、黒焦げの狼の内4体を使用し魔法生命体を増やした。MPの余裕がまだありそうな事に疑問を感じつつ、朝ごはんを食べる。
今日は家が一軒完成するらしい。いい一日になることを期待しよう。
― 町での出来事 -
「主教様、討伐済みのエルフの集落に獣人共が住み着いており、人間の邪教徒が統率しているとの噂が広まっております」
臣下の一人が到底信じられない報告を持って来た。
10年ほど前に国の騎士団と合同で討伐した事になっているエルフの集落だが、実際には討伐に参加して帰ってきたのは今の近衛騎士団長と自分の2人だけだ。
エルフ討伐も完了寸前と言う所で突如現れたドラゴンになす術も無く壊滅させられたのだ。
希少な金属が採掘できる鉱山での採掘拠点に丁度良いと言う理由で村の占領が決定されたが、維持する事が出来ないと結論付けられその後放置されたはずの場所だ。
だが、自分達で維持できないとはいえ他人に利益を掠め取られるのは赦せない。
「あのような場所に獣人や人間が住めるとは考えにくいが、調査は必要か。調査と討伐の為に人を派遣しろ」
「しかし、森の奥に入って行ける程の者となると・・・」
「我が神殿からは見張りの1名だけでいい。最近勢力を伸ばして目障りなギルドの連中に高額の報酬を約束してやればいい」
「それでは神殿の予算を圧迫してしまいます」
「成功報酬で生還者のみで良いのだ。てだれのギルド員が100人程いれば森の奥までたどり着けるだろう、生きて出てこられるのは何人いるかなフフフ」
「・・・畏まりました」
数日後、討伐者&冒険者ギルドによる大規模討伐説明会場
「魔の森の奥で勢力を蓄えていると思われる邪神教徒の殲滅が決定されました。報酬は各自1万ゴールド、100名の募集となっており危険に見合う破格の待遇となっています。参加希望者は直ちに登録をお願いします」
「魔の森の奥?無理ゲー、無理ゲー」
「邪教徒の殲滅?チート野郎と頭のネジがぶっ飛んだ戦闘狂相手にたった100人?だいたい、蜘蛛が出たら全滅しかねないよ」
「魔法の勉強会と日程が被ってるな無理無理」
・
・
・
美味しい仕事だって言うから話を聞きに来たのにと、口々に文句を言いながら会場を去っていくPC達。
討伐ギルド職員は困惑していた。
当てにしていた主力メンバーが軒並み辞退し、参加を表明するのは到底森に入れる訳にはいかない様な駆け出しばかりだ。
辞退した主力メンバーは敵の実態を知っているような口ぶりの者までいたし、討伐以前の問題として森のモンスターに勝てないと苦言を呈する者もいた。
神殿から派遣されてきた司祭は満足そうに登録している者達に声を掛けているが、これは中止するべきだ。
冒険者ギルドの職員に目をやると、あちらも焦った顔でこっちを見ている。
司祭へ中止の進言をギルドの連名で行ったが、人数は揃っているとの理由から討伐の実施を覆すことは出来なかった。