女神顕現
小骨がお菓子を作ってる間にノヴァ達5人は執務室で1冊の本を5人で身を寄せ合って読んでいた。
俺が栞を挟んでいた部分から後ろのスキルに関する部分だけを読んでいるが、やはりスキルは取れないようだ。
やることが無くてぼんやりしていた俺の視界に表示されていた3(狼)のライフがガッツリ減った。
「ちょっとトラブルが発生したっぽいから様子見てくるわ」
と、緊張感のかけらも無い感じで5人に声を掛け、一緒に行こうかと聞いてくるノヴァに必要ないと答えて外に出た。
神殿の入り口には骨が辺りを警戒する様に立っており、橋の向こうに村の入り口に向けて移動するバイソンと1の姿が確認できた。
村の入り口方向に歩いていると、思ったよりも状況は悪かった。
ノヴァ達のキャンプ地付近でバイソンが狼の群れに攻撃を仕掛けている。
その近くには4人の獣人を守りながら盾を構えて「フォー!」と奇怪な叫び声をあげているケモナーもいた。
恐らくヘイト上昇系スキルと思われるが、叫ぶたびに狼がケモナーに引き寄せられるように攻撃を仕掛けていた。
取り合えずケモナーのライフがどの位減っているかわからないので単体回復スキルで回復させる。
バイソンと1・2・3に強化スキルを使用したら、側面から狼が飛び掛って来た。
向き直って剣を振るのは間に合いそうに無かった為、シールドで思いっきりぶん殴ってみたが押し倒される。
喉に噛み付かれそうになった時、1が弓を槍形態にして俺に圧し掛かっていた狼を刺し殺した。
「1GJ!狼怖えぇ!」
立ち上がり、側面の狼を警戒していると
「回復欲しい、フォー!」とケモナーが声を掛けて来たので単体回復スキルを使用。
ついでに集団回復スキルを続けて使用する。
「おいケモナー、今回復した後すぐに集団回復スキル使ったけど回復した?」
「いや、してないと思う」
ケモナーは俺の指揮下に入っていないらしい事を確認。
バイソンと1・2・3の攻撃とケモナーの奮闘によって、狼は既に10匹倒されているが逃げる気配を見せない。
この間はすぐに逃げたのに何故だろう?と考えていたら神殿の方で物凄い火柱が上がった。
小骨のMPが8割位一気に減ってた。
火柱を見た為か、残っていた狼が一斉に逃げ出した。
「ふぅ~、神殿の方が心配だな急いで戻ろう」
と振り返ると、ラブラドール獣人に抱きつかれて違う世界へ旅立っているケモナーが目に入った。
「え?なにこれ、爆発しろって言っていい場面?」
ノヴァ達5人が走ってきたと思ったら第一声がこれだ。
「神殿の方は?」
「狼6匹が1発で消し炭になってた」
「・・・小骨ぱねぇ」
「それよりあれは一体・・・」
「頑張ったケモナーへのご褒美?」
倒した狼をバイソンに運ばせて神殿まで皆で戻ってくると、小骨に手を引かれ調理場へ移動する。
小骨が水の中から何かを取り出し皿に乗せて持ってくる。
差し出された物を食べてみる。流水で冷やされたそれは、芋餡の水饅頭だった。
「うん、冷たくて美味しい」
続いて蒸し器の中から芋羊羹?を1切れ皿に乗せて持ってくる小骨。
「これは・・・ういろう?」
もちもちで甘さ控えめだ。
「小骨、ありがとうな」
声を掛けると小骨が腕に抱きついてきた。
宵の明星メンバーに水饅頭とういろうを渡し、礼拝堂に移動すると骨と1が祭壇に布をかけ、椅子をセットし直していた。
準備が終わったのか、骨と1は祭壇の両脇に移動してこちらに視線を向ける。
小骨が俺の手を引いて骨の横に移動し、明星メンバーを指差した後に祭壇に指を移動させた。
「お供えしろ的な感じだと思うよ?」
と俺が声を掛けるとメンバーが順に祭壇に皿を置いて下がる。
骨と1が膝を突いて祈りを捧げる様なポーズをとると同時に、小骨が闇に包まれた。
何が起きているか良くわからないが、取り合えず様子を見ていると
「早く椅子まで!」
と鈴の鳴るような声が闇の中から聞こえてきた。
「???」
小骨がしゃべった?骨の方を見ると早くしろ見たいな感じで合図をしていた。
良くわからないまま、取り合えず闇の中に一歩踏み込んでみたが真っ暗で何も見えない。
小骨を探して両手を伸ばすと、何かやわらかい物に手が触れたと思ったら首周りに誰かの腕が纏わりついて来た。
「ほら、早く」
とせかされ、そのままお姫様抱っこで椅子のある方向へ向けて一歩進むと闇が消え去った。
小骨がいなくなって物凄いかわいいロリエルフが俺の腕に納まっていた。
服は小骨が着ていたエイミーさん作のワンピースだ。
そのまま椅子まで運んでそっと椅子に座らせた後、おもむろに質問してみた。
「えっと、女神様?」
「うん、なに?」
「さっきから俺のMP吸い取ってる?」
「顕現するのに必要なの」
「さっき、戦闘で魔法使い過ぎて既に気絶しそうなんだけど・・・」
「・・・」
俺の苦情を華麗にスルーし骨の方を向いて口をあける女神、水饅頭とういろうを女神の口にせっせと運ぶ骨。
シュールな光景は俺の意識が無くなるまで続いた。