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骨とぼっちなVRMMO  作者: 空回りする歯車的な人
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冒険者来訪

 エイミーさんの建築素材生産が完了し本格的な建築作業が開始され、俺の本の選り分け作業が完了した日は、2回目のゲーム終了前日だった。

 その日、精霊魔法入門と言うタイトルの本を読みながら、精霊を探して村内を練り歩いていた。

 本によると自然環境であれば必ず精霊が存在し、火のあるところには火の精がいると書いてあった為、調理場の竈の前に座り込みじっと火を見つめ火の精を探してみたが見つからなかった。

 獣人が農作業中の畑や、川にも精霊が見当たらない。人が住んでいる所には居ないのかと考え、村の入り口から外を見てみようとして森を観察していた時にそれは起こった。


 森の中から、剣を抜いた状態の冒険者6人組が飛び出してきたのだ。

 先頭を走っていた男が、後ろの5人に


「もう少しだ!頑張れ」と叫んでいた。


 その時、俺の背後から背筋がゾッとするような殺気が放たれた気がしたが俺はそれ所ではなかった。

 即座に後ろにいた小骨を小脇に抱え、冒険者達に


「トレインしてんじゃねーよ!」と叫びながら全力で神殿の方へ走り出した。


 冒険者の背後からは大型の狼の集団が冒険者を包囲する様に追いかけて来ていたのだ。

 あいつらが何者であるかはわからないが逃げている以上、戦力的に不利なのだろう。

 俺はゴブリンなら1対多数でも勝てると考えているが、この森のモンスターは1対1でも負ける自信がある。

 戦うなら骨達が居ないと話にならない。


 小骨を抱えた俺・冒険者・狼の順で村の中を走っていると、前方からバイソンが土煙を上げながらこっちへ向かって走ってきていた。

 狼達はバイソンを警戒したのか追跡をやめてこちらを威嚇してくる。


「小骨、神殿に戻れ」剣を抜きながら小骨に命令し、狼の方へ向き直る。


 冒険者達は俺が戦う姿勢を見せたことで、逃げるのを止め狼に包囲されないように剣で威嚇していた。

 俺はバイソンがすぐ近くまで来た所で、


「バイソン、狼共を蹴散らせ」と命じ

「下僕強化」バイソンに強化魔法を掛けた。


 バイソンの突撃によって狼1匹が角で串刺しにされ、もう1匹が踏み潰されていた。

 側面に回り込もうとしていた狼に1が放った矢が刺さった所で狼達は踵を返し逃走に移った。


「バイソン、追わなくていいこっちこい」


 とバイソンに命令しながら冒険者達に視線を送ると、彼らはへたり込みながら


「あぶねぇ~、マジ助かった」

「ここまで来て死に戻りとか勘弁だよ」


 とか言っていた。


 バイソンは冒険者達にいつでも突進できる状態で待機しており、遅れてやってきた骨も冒険者達を警戒している。

 1は橋の袂から冒険者達を弓で狙っている。


 そんな状況の中、冒険者達のリーダーと思われる人物が俺に話しかけてきた。


「助けてもらって感謝する。俺はプレイヤーでギルド 宵の明星のギルマスをやらせて貰ってるノヴァだ。よろしく」

「どうも、プレイヤーでこの村の領主でフェイです。」


「で、なぜにトレインしながらこの村に?」

「説明させてもらいたいが、敵対する意思は無いからそろそろ武器をしまってもらえると助かる」


 骨達に武器を下ろさせ、バイソンに周辺の警戒を命じた後


「ここで話をしてると獣人達が怯えるから取り合えず神殿に入ろう」と冒険者達に声をかけた。


 俺・骨・冒険者・1の順で神殿の食堂まで歩いていった。

 途中獣人たちの姿は無く、どこかに隠れた様だった。


 ノヴァによると、ゲーム開始直後からパーティーを組んでいた彼らは、ギルド結成が可能なことを知り資金調達の為、サウスフォートの町の北側の荒野でMOBをキャンプ狩りをし続けた。

 大金をはたいてギルドを結成し、拠点を確保しようとしたが街中で10人程度が暮らせる家を買おうと値段を調べた所20M(2千万)ゴールドと言う途方も無い金額だった。

 拠点はしばらく諦めようと話がまとまった後ログアウトとなったが、モフモフパラダイスムービーを見たメンバーがどうしてもあそこに住みたいと言い出し、掲示板の情報を元に村を探し続けたそうだ。


 その結果、森の中をずっと彷徨い魔法を使う大型魔獣に襲われ、何とか逃げ延びた所で狼に襲われ逃げていたら村を発見した。と言うことらしい。


「迷惑をかけた上でお願いするのは心苦しいが、この村で暮らせるように計らって貰えないだろうか?」とノヴァ

「この村の住民は人間に酷い目に遭わされた獣人ばかりだから人間を怖がるんだよ。職人さんだって最初は怖がられてたんだから冒険者となるとなぁ」

「完全非武装で村の手伝いをしますんで何とかお願いします」今まで黙っていた宵の明星メンバーの一人が頭を下げていた。


 こいつか、モフモフの虜は。

 断っても居座りそうだから獣人たちに説明してみるとするか、骨を監視につけとけば大丈夫だろう。骨は獣人たちから絶大な信頼を得ている様だし。


「ちょっと獣人と話してくるから待っててくれ」


 神殿の外に出るとお手伝いの骨達が突然いなくなってご機嫌斜めのエイミーさんとおどおどしている熊が説明を求めてきた。

 冒険者がこの村に住みたいと言っている事と当分の間、骨と1を彼らの見張りにつけるのでエイミーさんの手伝いは冒険者達にさせる事でどうだろう?と聞いてみた。


 エイミーさんも熊も不安と不満がいっぱいと言う感じだったが何とか納得してくれた。

 彼らの住まいを川の向こう側にするという条件を付けられたが元々あっち側、正確には転移門のある廃墟の隣にと考えていたのでちょうど良かった。


 神殿に戻り、エイミーさんを紹介する。


「うちで雇っている職人のエイミーさんだ、明日から彼女の手伝いをして貰う」

「ギルド宵の明星です。よろしくお願いします」


「うまく行ったとして、村にいる時は警護役もやってもらう。ギルド拠点となる土地は次週プレイ分は5千ゴールド、その後も使うなら買取10Mゴールド分割可でOK?」

「依存は無い」

「建物は自分達で建てるかエイミーさん辺りに依頼するかしてくれ、エイミーさんは獣人用の家優先だし自分の家も建てるだろうからかなり後になると思うけど」

「当分の間テントで暮らすよ、ありがとう」


 宵の明星メンバーを廃墟横の荒地に案内し、精霊探しは当分あきらめて他の本を優先して読むか考えつつバイソンに狼の死体を運ばせていたら、


 ワールドメッセージ:プレイヤー ノヴァがギルド「宵の明星」の拠点を設営しました。


「このタイミングでワールドメッセージが出たら、次のさらし者はノヴァだな。フフ」と一人呟く俺がいた。


翌日、魔法生命体「2」と「3」になった狼(皮と肉は小骨が徴収していった)を連れて宵の明星メンバーを視察し、精霊探しに村を散策している間にログアウトの時間となった。

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