準備
- 俺 -
朝食後、町から出て東にある草原を歩いていた。
宿屋の女将さんの話だと、この草原はゴブリンが出る初心者の討伐ギルド員が良く利用する狩りスポットらしい。
「見つけた」1匹のゴブリンが背中をこちらに向け、弓を構えて何かを狙っている。こっちに気付いていない。
俺は盾を構え剣を抜き、走って近付いて行く。
ゴブリンは獲物に矢を放った直後に俺の接近に気付いた。まだ距離があった為、獲物とこちらのどっちを優先するか迷った後、獲物にもう一射矢を放ち弓を放り投げこん棒のような物を手に持った。
ゴブリンが身構えた所で俺の剣がゴブリンの左腕を浅く傷つける。目測を誤った、戦闘経験0で移動攻撃は無理が有ったらしい。ゴブリンがこん棒を振り上げていたので盾で受けてみた。
シールドスキルを入手しました。
「痛い!」ってかそうでもないか、おそらくダメージが来てる。
骨とかはHPバーが有るのに自分のも敵のも見えないから不便だ。
こん棒攻撃を防がれて胴体がら空きになってたから突きを放ったら、ゴブリンはそのまま倒れた。
片手剣スキルを入手しました。
ゴブリンを鑑定してみる
アイテム名:死体 ゴブリンの死体
触媒(ゴーレム作成・アンデット召喚・魔法生命体召喚)
魔法生命体召喚の触媒に使える。
ゴブリンが弓で狙ってた方を見るとデカイ鼠に矢が2本刺さっていた。
アイテム名:死体 スカベンジャーマウスの死体
加工素材・触媒(ゴーレム作成・アンデット召喚)
スカベンジャーって腐肉食べる鼠か・・・放って置こう、美味しく無さそうだし。
草原を眺め、近くに人が居ないのを確認してからゴブリンを触媒に魔法生命体を召喚する。
名前を付けますか?でnoを押した。やっぱり「2」になった。
骨だけになったゴブリンはこん棒を持って立ち上がる、こいつは破壊実験に供される予定なので名前等何でもいい。もう一狩り行ってみよう。
3匹連れ立って歩いているゴブリンを発見した俺は「2」に突撃を命じた。
走っていく2の後を普通の速度で歩いて追跡すると、2のHPバーがガリガリ減っていく。3割に減ったら単体回復魔法を掛ける簡単なお仕事を2回行った(掛ける度に完全回復してた)所で、2匹を倒し1対1になる。
敵はほぼ無傷、2はHP半分位なので回復魔法はもう使わない。ゴブリンを2回ほど攻撃した所で2は敵の攻撃でHPが尽きボロッと崩れた。
若干傷ついたゴブリンがこっちに向かってきたが、一撃当てたら倒せた。
アイテム名:死体 ゴブリンの死体
触媒(ゴーレム作成・アンデット召喚・魔法生命体召喚)
3匹とも同じ表示だった。
どうやら、俺もしくは召喚した魔法生命体が倒した敵は召喚媒体として使えるらしい。骨と小骨と1は何か特殊な条件なのだろう。あの村で見かけた骸骨は片っ端から鑑定したが、魔法生命体の触媒として使えたのはあいつ等だけだったし、ゴブリンが狩った鼠は触媒にならなかった。2は崩れた後、アイテムとしてさえ認識できない様だ。ハイスペックな骨達を破壊しないよう気を付けないと。
名前を決めなかったら数字になるのは、たぶん数を頼みに運用するのが正しい?使い方なんだろう。この町からスタートしたら召喚できるのは自分が倒した敵だけで、回復魔法も強化魔法も無しで使い潰して行くしかなかっただろう。掲示板でアンデットの人が弱いって言ってたし。
ぼんやり考察しながら、ゴブリンの討伐証明部位である頭を3つ紐でくくって町へと歩いていく。
- エイミー -
フェイ氏のモフモフパラダイス行きの仕事を手に入れた。しかも土地付、使えない判定され無い様に準備しておこう。
工房で親方の息子に「建築関係の仕事を受けんだけどどんな準備したらいいかな?」と聞いてみた。
「家は家具工房だから建築関係は全くの素人だね、親父が昔ログハウス作ってたから聞いてみたら?」といわれ、ちょうど工房にいた親方に目を向けると、
「この辺じゃ普通、家は石で作るから期待するなよ。ホレ」といって物置サイズのログハウスの設計書をくれた。
「ちなみに、俺が建てたやつは1ヶ月で壊れたけどな、ガハハ」
ダメじゃん!
仕方なく住み込みで長期間の、おそらく十分な設備も無いであろう仕事であることを説明し、アドバイスを求めると親方と息子は難しい顔で
「嬢ちゃん、その仕事はやばい仕事だな。荒野のモンスターが徘徊する地域に村を作ろうって腹だろう」
「どうしても受けるんですか?」
と口々に反対される。
「もう仕事は引き受けましたし、どうしても行かないといけない理由が有るんです!」と言うと、いつ出発だ?と聞かれ、明後日と答えると、最低限必要なものを見繕ってやるよ、中古でいいだろ?500ゴールド出しな。新品なら10倍でも安い位集めてやるよ、知り合いの倉庫に転がってるやつを集めてくるからな!
親方が頼もしい、NPCだけど。私は親方に着いて行って道具類の使用方法等を都度教えてもらった。
待ち合わせの朝、冒険者ギルドの前には巨大なリュックサックを3つ地面に置きフェイ氏が現れるのを待つ私の姿と、見送りの親方の姿が有った。