獣人達の家作り
翌朝目覚めると、骨と1の状態を確認する。
MPは2体とも満タンで、骨のHPは30%、1は40%位だ、昨晩の集団回復スキルで少し回復している。自然回復があるか微妙な所だがとりあえず単体回復スキルを骨に使ってみる。
「マイナーヒール」
あれ?骨のHPが一気に80%まで回復した、やけに効きがいいな?
「マイナーヒール」
1のHPも90%を超えた・・・
「グループヒーリング」
両方完全に回復した。
どう言う事だろう?昨日より明らかに回復量が上がってる。
4人組とバイソン倒してLvアップした位しか思いつかない・・・俺、見てただけだけど。
一人で悩んでも分からないし、朝飯(芋)を食おう!昨日晩飯食わずに寝たから腹が減ってるし。
骨と1を引き連れて食堂に入ると、調理場から顔を覗かせた小骨が変形した銀っぽい器に玄米と芋で出来たおかゆを入れて持って来た。(薪で作ったと思われる作りの荒い木製のスプーンが付いてた)
「お!ありがとう。腹減ってたんだ」
と言って、小骨の頭蓋骨を撫でてやると何故か小骨は骨の後ろに隠れてしまった。
久しぶりに焼き芋以外の食べ物を口にした俺は、小骨におかわりを要求し骨&1に笑われた。
いゃ・・・「カカカ」って歯を鳴らしただけだけどアレは絶対笑ってた。
魔法生命体め!やはり人間くさい。芋粥でご機嫌だった俺は小骨をつついてからかってやった。
食後の楽しい一時を過ごしていたら、熊が食堂へやってきて、
「フェイさん、神殿の向かいに我々の家を建てたいのですが宜しいですか?」
と聞いてきた。確かに石造りでろくに毛布も無い神殿にいつまでも大人数で寝泊りするのは辛いだろう。と考え許可することにした。
「いいけど、誰が家建てるんだ?」
「若い衆があの4人の人間に殺されてしまったので、私が娘達に手伝ってもらって作ります。」
「若い衆とやらが何人いたか知らんけど、あの4人にそんな力が有るとは到底思えないんだけど?」
「人間は危険を察知する能力が低く、こんな森の奥まで辿り着いているだけで相当の能力が有ると思います。」
「ふ~ん、昨日のバイソンはこの森でどの位の強さなんだ?」
「中の上と言った所でしょうか?魔法を使う魔獣よりも物理的な力は強いですが、私達も突然襲われても数名の犠牲者は出ますが逃げ延びられる相手です。」
・・・ありえない、あのバイソンで中クラスの森にあんな弱い人間が居る事が信じられない。問い質そうにも死んじゃってるし。つうか、犠牲を出して逃げること前提なんだ。
「そうかぁ、まぁいいや。所でバイソンって食えるの?」
「いえ・・・肉は硬くて食べられなかったです。皮は丈夫で色々な物に使えます」
喰おうとした事が有るんだ?と思ったら怪我して死んでるのを見つけた事が有るらしい。
「そうか、皮は回収しておこう」
「それが宜しいかと、家の件ですが倒壊している建物の木材を使用させて頂いてもよろしいですか?」
「好きにするといい」
こうして熊は家を作る為、獣人総出で材料調達を開始した。
俺は4人組みが持っていたダガーを4本 小骨の道具部屋から取り出し、骨達に1本ずつ渡した。
「バイソンの皮取りに行くぞ~」
バイソンの死体は昨日の場所にそのまま残っていた、食われた形跡等も無かったので昨晩は他の魔物も寄ってこなかったようだ。
骨と1はダガーを使って皮を剥ぐ作業を行っている。腹を割いた所で仰向けにして左右に分かれて作業を再開した。小骨は裂かれた腹の上に上り、肉の塊を切り出している所謂ハラミとかサガリって奴だ、アレなら食えそうだ。
俺?ダガーを刺そうとして皮に弾かれたから作業に参加するのを諦めた。小骨の手伝い?内臓に傷つけて、食える肉を台無しにしたら俺が食う分が減ってしまう。
使えない俺は、バイソンを鑑定してみた。
アイテム名:ホーンバイソンの死体
触媒(ゴーレム作成・アンデット召喚・魔法生命体召喚)
解体すると生産素材・食材が入手可能
おっと、魔法生命体の触媒だ。
骨になっても触媒のままのはずだから、解体しても平気だろう。骨達の作業が終わったら召喚してみよう。
皮を剥ぎ取り、小骨の肉収集が終わったのはお昼前だった。
俺は周辺に獣人がいない事を確認し(NPCとは言え厨二的呪文を聞かれるのはいやだ)、ホーンバイソンの残った部分に魔法生命体召喚スキルを使った。
残っていた筋肉部分その他が黒い塵の様になって風に乗って飛んでいった後、骨だけになったホーンバイソンがゆっくり立ち上がった。
肉が残ってても骨になるのかよ!と思ったけど、筋とか内臓が剥き出しで動いてたらキモイからこれで良いか。
魔法生命体に名前を付けますか? yes/no
noを押したら名前が2になるのは予想できるyesを押してバイソンと名付けた。
バイソンは骨だけになってもデカイ。力も強そうだから農作業にでも酷使しよう、早速解体したホーンバイソンの皮をバイソンの背中に乗っけて、小骨が切り出した肉は皆で分散して持って神殿に戻って行った。
神殿の前に到着すると、お向かいの獣人の家建設予定地で雑草抜きを終え休憩していた獣人達がすごい速さで逃げ出していたのが見えた。
俺が獣人達に向かって手を振っていると、恐る恐る熊が近付いてきた。
「これは、昨日のホーンバイソンですか?」
と聞かれたので「そうだ」と回答しておいた。
「重い物を運んだり解体するならこいつに頼めばいい、バイソンこの熊さんの手伝いをしろ」
「助かります。こっちへ」
熊はバイソンを連れて倒壊した建物の方へと移動していった。
獣人たちは熊に従うバイソンを見て安心したのか作業を再開した。
肉を調理場に一旦保管し、骨達に風呂を沸かして体を洗うよう指示を出し(川だと脂がこびり付きそうだ)俺は書庫で調べ物をする事にした。
「転送魔石の事が載ってそうな本はどれだ~」と呟きながら本をタイトルを確認していく。
気になる本を手にとっては斜め読みしていたが見つからない。
気付くと日が傾き夕方になっていたので今日の所は諦めて、明日もう一度探すことにする。
神殿の外に出て獣人たちの様子を見ると、バイソンが運んだと思われる廃材の山とバイソンの体によじ登る子供達の姿が有った。
俺が外に出たのに気付いたのか骨達がバイソンの肉に木の棒をさした物を持って来た。
焚き火で焼いて皆で食おうと言う感じだ。その日の晩飯は焚き火を囲んで焼きあがった肉を小骨が切り分け、獣人達と一緒に食べた。塩とかたれが無いのが非常に残念だった。
その翌日4人組みを川に流しその日から5日間、転送魔石の情報を得る為に書庫に篭っていたが家の書庫には転送魔石に関する情報が無く調べるのを諦め食堂でぐったりしている所に
システムメッセージ:領地住民の税率を決定して下さい(現在の住人53名)
と言うウィンドが開き首を傾げ、獣人達の事かな?重税課してもアレだし10%にしておこうと、操作していると熊が食堂にやってきた。
「家が完成しました。今日からは皆そちらで寝泊りします。」
「そうか、家の中見ても良いか?」
「もちろんです。どうぞ」
熊と一緒に家を見に行ったが、廃材で適当に作られた家と呼ぶ事をためらう何かがそこにあった。
「これ・・・壁叩いたら崩壊するんじゃ?」
「数名ずつに1軒家を建てたいので、それが完成するまでの繋ぎに急いで完成させました」
熊のどや顔が痛々しい。熊に任せたら次に建てる家も風が吹いたら飛んでいくに違いない。
俺は職人を探しに行こう、出来るだけ早急にと決意を固めた。
その日、熊に人間の町まで行ってくるから場所を誰かに案内して欲しいと言うと反対された。
獣人が町に行くと殺されるから無理と後、骨達が居ないと村が危険だと言うので骨達は村に残すことを約束し(町で見た目スケルトンの魔法生命体を連れ歩くのは無理だろうし)、森の入り口から町までの道を詳しく聞きだし、森の道案内と帰ってくるときの迎えを頼んだ。
そして初回のゲーム終了時間、俺は都市国家連合の最南端に有るサウスフォートと言う町の宿屋でログアウトを待っていた。