第弐話 残酷な聖女
※一部魔法の発動呪文を変更[11/04/25]
一部段落等を修正[11/05/18]
「私はセリーナ・A・アインスフィア。ラブリオール王国より派遣された魔王討伐隊の隊員。つまり、勇者の仲間よ」
セリーナがそう言った瞬間、そこにいた者たちは凍りついた。
セリーナは何が起こっているのかわからず、しばらく黙ることにした。
黙りつつも今自分のいる場所に気付き、とりあえず壺から脱出し、辺りを見回し、玉座に座った。
すると、凍りついていた黒衣の集団が我を取り戻し、一斉に騒ぎ始める。
「セリーナ・A・アインスフィアだって!?」「なんで魔王様じゃなくて聖女が復活を!?」「何故だ!!何故だ!!魔王様復活のはずが!!」「馬鹿な!?何故聖女が!?」「こんな筈は…。」「嘘だろ…。嘘だよなぁ!!」「どうして!?どうしてなの!?」
次々と飛び出してくる言葉の数々。するとあの恰幅の良い司祭アルベルトが騒ぎを鎮めた。
「静まれーい!!静まらんか!!」
司祭はその場を鎮めた後、玉座に座る少女に向けて言葉を放つ。
「その玉座は魔王様のみが座ることの許される場所なり。貴様のような素姓の知れぬものが座っていい席ではないわ!!」
そう言うとアルベルトは持っている大きな杖をこちらに向けた。そして何かを口ずさみ始めた。
「【現るは始原。其は始まりを示す火なり】」
何を言っていたのかセリーナには理解できなかった。だが、目の前の司祭アルベルトの頭上に火の球ができたことで表情を変えた。
アルベルトが口ずさんだのは呪文。俗に言う魔法を発動させるための手段だ。それは、選ばれた者だけが行使できる奇跡の術。それをこの男は使ったのだ。
「驚いているか?そうだろう。だが、苦しむ暇など与えてすらやらん。死ね!!くらえぇぇい!!ファイアーボール!!」
アルベルトの頭上に展開していた火の球は打ち出された。向かうのはセリーナの元。
迫る火の球にセリーナは短く、しかし、意味のある一言を口ずさんだ。
「【消えろ(デリート)】!!」
その言葉が紡がれた瞬間、セリーナの元に迫っていた火の球は消え去った。
何が起きたのか。アルベルトにはわからなかった。自分の放ったファイアーボールは確かに少女の元へと向かって飛んで行ったはずだ。
なのにもかかわらず、ファイアーボールは少女の元へとたどり着くことなく消え去り、何事もなかったかのように玉座にちょこんと座っている。
確かにアルベルトの起こした魔法はちゃんと少女に向かって行った。しかし、少女が何かを言った瞬間ファイアーボールは消え去った。
彼らの中には何が起こったのか理解できるものはいなかった。
そもそも、彼らの中に魔法が使えるものはごくわずかである。しかも、その知識は魔法学校で習うことのできる初級中の初級の魔法だけである。なので、少女が起こした現象を理解できるほどの知識を持ち合わせているものなどここにはいなかった。
「全く。危ないわね。思わず消しちゃったじゃない」
セリーナは思わず魔法を使った。さすがにくらっても何の影響もないが眼前に突然火の球が迫ってきたら誰だってビックリする。それでとっさに火の球を消した(・・・)。
使う魔力量が半端ではない存在削除の魔法を…。
しかし、セリーナがそれでなにか体に不具合を起こしたりはしていなかった。そもそも、絶対的な魔力量が違いすぎて勝負にすらならないのである。
「何をしたんだ貴様!!」
「簡単な話よ。否定して消した。貴方達ごときが私を打倒し得ることは万が一にもあり得ないことだけど」
セリーナは種を明かしたが、それを理解できているものは一人もいない。
「消した?そんな魔法はないはずだ!!」
「そうだ。そうだ」と、後ろにいた黒衣の集団が口をそろえて言っている。
セリーナは思う。なんて馬鹿な集団だろうと。
「魔法は奇跡を起こすものよ。その魔法という現象で説明できないものはない。つまり、人の思い描くことができるすべてのことは魔法という事象で説明できる。だから、そんな魔法が存在するわけがないというのは凝り固まった考えね」
セリーナは懇切丁寧に説明してやった。簡単なことだ。というよりそれが当たり前だった。
魔法は奇跡の技術である。何時、誰が、どのようにしてこの魔法という奇跡の術を完成させたのかは謎であるが、この魔法という技術において説明できないものはなくなった。故に、魔法とは奇跡の技術なのである。
「どうしたのかしら?もう終わり?」
セリーナはアルベルトを挑発するように言葉を並べた。
「終わるものか!!死んで、そこからどいてもらう!!皆のものあやつを殺せ!!」
アルベルトがそう言うと黒衣の者たちが次々と武器を取り出し始める。中にはアルベルトと同じように杖を持ち出し呪文を唱え始めた者もいる。
「そう。まあ、いいわ。殺される覚悟のある奴だけかかってきなさい。その覚悟がない奴は戦う価値もない!!」
セリーナはそう言うと立ち上がり、空間に手を突っ込んだ。そこから取り出したのは無骨な二本の大剣。先端が垂直に曲がったまさに狩るための剣。
「そうそう言っておくわ。貴方達みたいのを放置して、本当に魔王に復活されると困るから全員殺すつもりだから」
セリーナがそう言った瞬間、戦いは始まった。いや、戦いではなく虐殺が始まった。
そう、勝負になんて一切なっていなかった。
セリーナは考えた末、最後にアルベルトと名乗った司祭を殺すことを決め、黒衣の集団から片付けることにした。
考えなしに向かって来る男を右腕に持った大剣で袈裟切りにする。その一撃で男は左の肩口から右の腰辺りまで真っ二つに切り落とされる。血が飛び散りかかるが気にせず、次に向かってきている人間を左に持った大剣で水平に切り、これまた真っ二つにする。
それを見ても、黒衣の集団は怖気づいたりせずに向かってくる。
「そうでなくちゃね。かかってきなさい殺してアげル」
そこからは本当に虐殺としか言えない光景が広がっていた。
セリーナは素早く動き回り次々に黒衣の人間の死体を量産していく。あるものは首を切り落とし。あるものは四肢を切断したり。また、あるものは脳天から真っ直ぐに切り下ろし殺したりした。
まさに一方的、黒衣の者たちが放つ魔法はセリーナにはあたらず、味方にあたったりしている。
そうして、殺し、殺し、殺し続けアルベルト以外のすべてのこの玉座の間にいた人間はこの場にはいなくなった。
「さあ、どうするのかしら?他の人間は全員死にましたよ?」
地獄絵図が広がっている。人間からただの肉塊になり下がったものが広がっているこの空間でセリーナとアルベルトは対峙している。
「関係あるものか!!人ならまた集めればよい!!貴様のような正体の知れぬものを放置するよほど危険だ!!」
そう言うと魔法を起動させる。
「【噴き出すは魔炎。顕現せしは焼き尽くす業炎なり。我は業なる炎を背負いて全てを燃やしつくさん】!!ムスペルフレイム!!」
発動させたのは火の上位呪文。その炎に狙われたものは必ず灰となると云わしめた最強クラスの呪文であったが、
「ふうん。よくわかんない呪文けど火の魔法が得意みたいね。でも、効かないよ。【すべてを守りし絶対の盾】!!」
セリーナの発動させたのは絶対防御の盾の魔法。すべてのものから使用者を守るその盾に守られたセリーナにムスペルフレイムが届くことはなかった。
二つの魔法による勝負は見ずともわかる。阻まれたムスペルフレイムは消え去り、無防備に立つアルベルトだけがその場に残された。
「嘘だ…!!そんな馬鹿な…!!防ぐことができるはずがない………!!」
アルベルトは自分の魔法が防がれたことにパニックを起こし、なにもせずただただ突っ立っている。
「確かによく練られた魔法だったけどただそれだけ。制御がなってない。まあ、どちらにせよアイギスを貫けるほどの威力はなかったけど」
感想を述べたセリーナはゆっくりとアルベルトに近づいてゆく。
「来るな!!来るな!!この化け物め!!」
必死に逃げようとするアルベルト。だが、足がまるで動かないまるで何かにつかまれているかのように。
「化け物であることは否定しないわ。でも、醜い欲望をなすがままに垂れ流す貴方のほうがよっぽど化け物にみえるわ」
ゆっくりゆっくり近づいてくるセリーナに半狂乱になって叫ぶアルベルト。もはやアルベルトには逃げるすべもなく、立ち向かう気力も残されてはいなかった。
そして
「さようなら。もう二度と会うことはないと思うわ」
そう言うと、大剣を振りかぶり振り下ろした。
アルベルトの体は裂け血を噴き出している。
「ふぅ。疲れた」
セリーナはその場で座り込み、今、自分の置かれている状況を把握するために考え始めるのだった。その、血に塗れた服のまま。
内容が稚拙すぎるのかなぁ…。
もっと精進したい…。




