表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革命的サヨク女子な私は、打倒すべき資本主義の権化(御曹司)に全力で買収(プロポーズ)されています  作者: 三不可多 輝生亜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/7

第五話:~夏休み合宿編~『キャピタル・アイランド』は理想のコミューンか? ――私有財産が廃止された島での強制連帯

「……おかしいわ。私たちは確かに、千葉の九十九里浜で『貧困と連帯を骨の髄まで叩き込む飢餓合宿』を計画していたはずよ」


 左門(さもん) 左愛さえが、設定温度が『富裕層の体温』に最適化されたキャビンの窓から外を見て呟いた。

 目の前に広がるのは、九十九里の荒波ではない。エメラルドグリーンに透き通った海と、真っ白なプライベートビーチ。そして、どこからともなく聞こえてくるウクレレの調べ。


革命(レミ)……大変だ。俺たちが乗った格安夜行バスは、いつの間にか『三井菱専用超音速リニア』にすり替わっていたらしい。ここは……太平洋に浮かぶ三井菱所有の個人島、通称『キャピタル・アイランド』だ!」

 前進ぜんしん ゲバラが、カーボン製白ヘルのバイザーを上げて絶叫する。彼の首には、いつの間にか「三井菱ロゴ入り冷感ネックリング」が装着されていた。


「ふふ……。みんな、遠路はるばるご苦労様。闘争には休息も必要だろう?」

 砂浜に設置された特製カバナ(豪華な日除け)の下で、三井菱(みついびし) 権力(けんりょく)が、1本数万円するオーガニック・デトックスウォーターを飲みながら微笑んでいた。

「権力くん! またあなたね! 私たちは、労働者の苦難を分かち合うために、畳が腐りかけた民宿で『ノミ・ダニとの階級闘争』を繰り広げる予定だったのよ! こんな楽園(ブルジョワの温床)に連れてこられて、革命の火が湿気たらどうするのよ!」

 私は、新調された(勝手に送られてきた)耐爆仕様のフリルビキニの裾を気にしながら、拡声器で詰め寄った。


「落ち着け、革命レミ。……ここでは、全てのサービスが『無償フリー』だ。つまり、この島においてのみ、僕は私有財産制を廃止した。君たちが望んでいた、貨幣の存在しない理想の共産社会コミューンの完成だよ」

「な……っ。それはただの、あなたのポケットマネーによる『疑似共産主義』じゃない!」

「同じことさ。……おっと、先客が来ているよ」

 権力が指さした先には、パラソルの下で、山盛りのトロピカルフルーツを前に「総括」を続けている女性がいた。


 成田(なりた) 闘争とうそう先輩だ。彼女は、三井菱ブランドの最高級サングラスをかけ、国家権力の介入を許さない最強のサンオイルをSPに塗らせながら、うわ言のように呟いている。

「……あ、あかん。このリクライニングチェア、私の腰椎を『全会一致の可決』で支持サポートしている……。檻の中のコンクリートとは比較にならない……これこそが、全人類が享受すべき正当な『重力からの解放アジテーション』……」

「成田先輩! 目を覚ましてください! 先輩の闘争心は、そのマンゴーと一緒に胃袋で『日和見主義ひよりみしゅぎ』的に消化されちゃうんですか!?」

 私が駆け寄ると、先輩はサングラスを少しずらし、虚ろな、しかし至福に満ちた瞳で私を見た。

革命(レミ)よ……よく聞け。……この島には、搾取がない。……なぜなら、働く者が一人もいないからだ。……全ては三井菱の全自動アンドロイドが……私たちの欲求を先回りして……ココナッツジュースを運んでくる……。これぞまさに、『能力に応じて尽くし、必要に応じて受け取る』というマルクスの預言の成就(自動化)だ……」」

「それ、ただの極致的なディストピアですって!」


 その時、左愛が深刻な顔でタブレットを見せてきた。

革命(レミ)、まずいわ。……この島のWi-Fi、爆速すぎて、仲間たちがみんな『革命理論の暗記』をやめて、三井菱が配信する『高画質の猫動画』と『資産運用シミュレーションゲーム』に没頭し始めているわ。……これこそが、……これこそが、帯域幅による真の精神的収奪……!」

「ハハハ! 見てくれ革命(レミ)! この海、潜ると三井菱が放流した『純金製の真珠』が落ちているぞ! これを拾えば、部室のバリケードを全てプラチナ製にアップグレードできる!」

 ゲバラまでもが、カーボン白ヘルをシュノーケル代わりにして海に飛び込もうとしている。


「みんな、しっかりして! 団結よ! 私たちは、この甘い誘惑という名の『見えないバリケード』を突破しなきゃいけないのよ!」


 私が叫んだ瞬間、権力が背後から私を抱きかかえるようにして、砂浜に敷かれた最高級シルクのシートに座らせた。

革命(レミ)。この島ごと、君に贈るよ。…………君がここを拠点に革命を叫ぶなら、僕はその『革命の筆頭株主パトロン』になろう。」

「……っ、そんな……公私混同も甚だしいわよ……!」


 権力の顔が近づく。潮風の香りと、彼自身の持つ圧倒的な「富」の香りが、私の脳内の階級意識を麻痺させていく。


 いけない……。ここで彼に屈したら、私の革命は「三井菱グループ・エンターテインメント事業部・革命セクション」として連結決算(グループ入り)されてしまう。

「――離れなさい! この、搾取者カピタリスト……! その、あまりにも完璧な資本主義の夕暮れ(サンセット)』を私に見せるのはやめてぇぇぇ!」


 水平線に沈む、あまりにも美しい夕日。それは、私たちの闘争の灯火が、三井菱の莫大な電力消費の中に飲み込まれていく予兆のようだった。


 万国の労働者よ、助けて。

 私たちの夏合宿は、開始数時間で「三井菱による完全買収フル・テイクオーバー」を許し、全員の魂が『特別配当金』として一括決済されちゃったみたいです……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ