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革命的サヨク女子な私は、打倒すべき資本主義の権化(御曹司)に全力で買収(プロポーズ)されています  作者: 三不可多 輝生亜


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第三話:敵対階級による市場介入(アプローチ)は、バリケードを無力化する暴力装置である

「な……なんなの、これは……っ! 階級的裏切りが、物理現象として観測されているわ……!」


 数日後。私、赤嶺(あかみね) 革命レミは、三井菱グループ本社前での抗議活動の最前線で絶句していた。

 本来なら、ここは搾取に抗う労働者の怒号が渦巻き、インターナショナルの歌声が響き渡る、階級闘争の最前線(フロントライン)のはず。

 なのに、今の光景は「資本主義という名の末期癌が、あまりにも煌びやかな転移メタスタシスを見せている」地獄絵図だった。


革命(レミ)、見て。私たちのプロパガンダが、三井菱の資本によって『広告』としてSEO(最適化)されているわ……」

 左門(さもん) 左愛さえが、冷徹にタブレットを叩きながら言った。

 私たちが掲げた「団結」の二文字は、いつの間にか三井菱が提供する超高精細ホログラムに置換され、あろうことか『団結(※今なら新規契約で三井菱ポイント3倍!)』という無慈悲なバナー広告に成り果てていた。  

 仲間たちは、拳を振り上げる代わりに、銀のトレイに乗ったキャビアのカナッペを貪っている。


「『非正規搾取を許さないぞー!』……モグモグ、この白トリュフ、舌の上で剰余価値が爆発して、味のヘーゲル学派が脳内で殴り合いを始めたぞ!」

「『剰余価値を返せー!』……おい、この炊き出しのドン・ペリニヨン、ヴィンテージすぎて喉越しが『もはや弁証法的なアウフヘーベン』だ! 喉を通るたびに俺の貧困が止揚されていく……!」


「こらぁぁぁ! お前ら、階級意識はどうしたんだ! 胃袋をブルジョワの毒で満たして、魂まで三井菱の連結子会社に落ちぶれるつもりかぁぁ!」

 前進ぜんしん ゲバラが、カーボン製の白ヘル(権力から『デモ中の転倒事故は労働災害に該当し、我が社のレピュテーションリスクを毀損する』という理由で無償供与された特注品)を地面に叩きつけながら絶叫する。

「いいか! そのフォアグラを一口噛むごとに、お前たちの革命精神は一株ずつ減資されていると思え! 今のお前たちの排泄物は、ただの『資本主義の老廃物』だ!」


 だが、彼の怒りも、本社のバルコニーから現れた「彼」の姿を見た瞬間に凍りついた。


「やあ、革命レミ。君の『怒り』という名の無形資産を、今日もしっかり買い取らせてもらったよ」

 三井菱(みついびし) 権力(けんりょく)が、まるで全能の市場そのものとしてバルコニーから見下ろしていた。

「君たちが叫ぶたびに、僕のAIが『反権力エネルギー』を電力に変換し、本社ビルの照明として再利用リサイクルさせてもらっている。……君たちのシュプレヒコールが大きければ大きいほど、僕たちの夜景は美しく輝くんだ」

「ひゃ、反逆のエネルギーを自家発電に利用……!?私たちの闘争が、ただの『クリーンエネルギー源』にされているっていうの!?」


革命(レミ)、気をつけて。彼は私たちの『反抗』さえも、再生可能エネルギーという名の商品コモディティとしてロンダリングしているわ」

 左愛(さえ)が眉をひそめ、高速でハッキングを開始する。「……でも、甘いわ。権力、あなたのメインフレームに、マルクスの『資本論』の全データをウイルスとして流し込んでやったわ。システム全体が自己矛盾を起こして崩壊しなさい……!」


「おっと、それは困るな。左愛さん」権力が優雅に指を鳴らす。

「君が『資本論』を送り込んだ瞬間に、僕のサーバーはその膨大な文字数を『世界で最も高価なNFTアート』として自動出品した。今、君のウイルスはオークションで100億ドルの値がついている。……おめでとう、君は今、世界で最も裕福な共産主義者(コミュニスト)だ」

「……っ! この……悪魔的な裁定取引(アービトラージ)……っ!私の革命理論が……三井菱の内部留保を増やす資産に変えられるなんて……っ!」  

 左愛の指が、利益確定の恐怖で止まる。

「……やめて! 私を……私をこれ以上、フォーブスの長者番付に近づけないで……っ!」


革命(レミ)!」 権力が専用のリフトで、まるで天から降りてくる神のように私の前に着地した。

「君の『打倒三井菱』という叫びは、僕にとっては最高のラブコールだ。……君が僕を憎めば憎むほど、三井菱の株価は上がり、僕の君に対する投資アイも加速する。これこそが、僕たちの構築する新しい経済圏だと思わないかい?」

「な……なによそれ……。そんなの、ただの『資本の暴走』よ……!」

「いいえ。君という『革命』を独占モノポリーするための、正当な市場介入だよ」


 権力が私の顔を覗き込む。札束の香りと、吸い込まれそうなほど深い瞳。そして、なぜか「守られている」と感じてしまう自分への、猛烈な階級的罪悪感。


「――っ、離れろー! この、人類史上最悪の搾取者カピタリストめぇぇぇ!」

 私は思わず、権力の胸に赤旗を叩きつけた。でも、彼はその旗を「株主総会の記念品」のように愛おしそうに受け取ると、私の手にそっと最高級のチョコレートを握らせた。


革命(レミ)ィィ! 仲間たちがみんな、権力から貰った『生活保護(スイス製高級スマートウォッチ)』の生体認証に魂を売って、『デモの代行サービス』をアプリで発注しながら解散し始めてるぞーッ!」

 ゲバラが、誰もいなくなった交差点で、『三井菱製フルカーボンバリケード(Wi-Fi完備)』を抱きしめながら慟哭する。

「見てみろ! 奴ら、自分の代わりに歩く『全自動プロレタリアート・ロボ』をサブスクで契約して、デモ会場に放置していきやがった!残されたのは、無人のプラカードを持った最新鋭の機械軍団と、残飯のドン・ペリニヨンだけだ!俺たちの『聖なる闘争』は、今や完全自動化オートメーションされた無人産業に成り下がったんだぞーッ!!」


 万国の労働者よ、助けて。  

 私の「燃え上がる革命精神」が、三井菱の『持続可能な開発目標(SDGs)』の一環として「多様な意見を認める優良企業」のIR資料に掲載されていく――!

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