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死を恐れた投資家、全財産を地雷系少女の肉体にBETし、「ぴえん」と呟く

鏡の向こう側に立っているのは、かつて私が軽蔑していたはずの「過剰」そのものだった。


フリル、レース、黒とピンクの暴力的なコントラスト。

厚底の靴は歩行の効率を著しく損ない、不自然なほど大きなカラコンは視覚情報の純度を歪めている。

しかし、かつてウォール街の要塞で1ビットの無駄すら削ぎ落としてきた私は、今、この「地雷系」と呼ばれる装束に、究極のミニマリズムを見出していた。


「……あー、まじ尊い。この完璧なUI、エグくない?」


私の喉から漏れたのは、NYの市場マーケットで70年の歳月で磨き上げた知性とは程遠い、粘り気のある甘ったるい音響だった。


20年で累計数百億ドル。


死という最大の「非効率」を回避するために私が投じたリソースの結末が、この19歳の日本人少女「りのあ」の肉体だ。

未完成な転移技術は、私の冷徹な論理回路と、彼女の浅薄な大脳辺縁系を強引にハンダ付けしてしまったらしい。


だが、それがどうしたというのだ。


かつての私は、物質的な所有を拒絶することで精神の自由を得ようとした。

今の私は、倫理や自尊心、地位や名誉という「精神的な贅肉」を削ぎ落とし、純粋な自己顕示と数字の増殖のみを追求する、より洗練された地雷系少女ミニマリストへと進化したのだ。

このフリフリの服は、カモ……失礼、投資家パパから効率的に資本を回収するための、最小限にして最適な兵装に他ならない。


「ねぇ、パパ。今日、お財布くん寂しいって泣いてるよぉ? ぴえん超えてぱおん。死ぬまで一生いっしょにいてあげるから、30万、振り込んで?」


私は対面に座る中年の男に対し、極めて高度な経済交渉を仕掛けていた。

私の脳内では、相手の心拍数、瞳孔の開き、資産背景から導き出された「投資リターン率」が複雑な関数となって処理されている。この「ぴえん」という語彙は、相手の庇護欲を最短距離で刺激し、こちらの論理的整合性を検証する思考能力を麻痺させるための、極めて合理的な暗号プロトコルなのだ。


「……君は、以前よりずっと魅力的になったね。なんだか、目が吸い込まれそうだ」


男が心酔したように呟き、スマートフォンを操作する。私の脳内に、快楽物質が奔流となって押し寄せた。

かつて一晩で数億ドルの利益を確定させた時の静かな高揚感とは違う。

肉体の隅々までが痺れるような、卑俗で、それでいて神聖な陶酔。

それが彼女——現在の私——が何よりも求めているもの「自己承認欲求エゴ」だ。


「えーっ、嬉しい! 超絶愛してる! まじ結婚しよ? あ、でも結婚はコスパ悪いから、とりあえずパパのクレカの枠、全部私に捧げてくれるのが一番の愛の証明だよね。ねっ?」


私の口は、自分でも驚くほど流暢に、地雷系女子の定型句を吐き出し続ける。

合理的な私が「もっとも効果的な交渉用語を選定せよ」と命令すると、彼女の肉体が「ぴえん、お金ちょーだい」と翻訳して出力する。


この倒錯。

この不一致。


私は、この壊滅的なギャップに、えも言われぬ美しさを感じていた。


かつてウォール街の影と呼ばれ、数十億ドルの空売りを何食わぬ顔で行ってきた冷徹な私の魂が、今や「パパ」の財布から端金を掠め取ることに全力を出している。


しかし、本質は何も変わっていない。

無駄な感情を排除し、目的のために最短ルートを通る。


以前の私は、白い壁だけの部屋で瞑想していた。

今の私は、ピンク色の液体に浸された脳で、数字(残高)の増殖を眺めている。


「……はぁ、まじ最高。私、天才すぎて死ぬわ」


一人になった私は鏡に映る自分に向かって、指でハートを作った。

自尊心という不要な重荷を捨て去った私は、今、かつてないほど軽やかに、そして醜悪に、この新しい世界をハックし続けるだろう。

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