⑦足元注意
「罠とか………大丈夫ですよね」
「まだ二層だぞ? あったとしても、それ程酷いものじゃないはずだ」
宝箱と罠は切っては切れない関係である。だが、冒険者の一般論として、階層の浅い所では石礫や毒針等の物理的な罠が殆どと言われている。仮に毒に侵されたとしても、手持ちの薬で何とかなる。
思わず後ろを確認する。
シランド達は、この事に気付いていない。基本的に各々が見つけた報酬は、各自に所有権が与えられる約束だが、人間、欲が出た時でも、それが守られるとは限らない。会って半日も経たない関係など、たかが知れている。
「ロロ。開けてみろよ」
「え、良いんですかっ!?」
貴重な体験を譲ってもらったと受け取ったロロが、隠しきれない笑みで腰を屈め、宝箱の両端に手を伸ばす。罠の存在を意識しているのか、宝箱の側面に膝をついている。
「おおおおい馬鹿っ! 俺に正面を向けるなって!」
気が付けば、宝箱がこちらを向いていた。
「すすす、すいません!」
失敗失敗と、彼は宝箱の向きを自分に戻す。
さて、隠し部屋にあった宝箱の実力を拝見である。
「………あ、開けます」
「………おう」
恐る恐る宝箱の口が開いていく。
特に音はしない。どうやら罠はかかっていなかったようだ。
「………薬草です」
「おぉ! って薬草かよぉぉぉぉ。しかもまぁ、四束も」
箱の底には、五枚の葉が一まとめにされた薬草の束が置かれていた。
値段にして、銀貨一、二枚あたり。全く使わない訳ではないが、『宝箱』としては、ハズレである。正直、一枚の方が酒の肴になる。
「何だよ。ぬか喜びさせやがって」
「………まぁ、早々都合の良いものは入っていないって事ですね」
何もないよりマシだと、ロロも苦笑して誤魔化した。
そして薬草の束を握り、手元へと運ぼうとした。
その瞬間。
俺達の床が一斉に崩れ落ちた。




