表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost13 無名の青年が無名で終わる物語  作者: JHST
第一章 初級冒険者、冒険解説職を雇う
8/23

⑥大失点

 彼女の容赦のない説得(攻め)が続く。

「今回初めての洞窟、加えて初めての鉱物収集。魔物の数も今より格段と多いのに………リュウさん、あなた採掘の仕方を知っているのかしら? 石と鉄鉱石の区別は? そもそも鶴橋が見当たらないけれど、ここには持って来ているの?」

「うぐっ」

 鉱物採集に赴く事だけが頭の中で先行し、鶴橋の存在を完全忘れていた。それらしい言い訳も用意しておらず、早速言葉に詰まる。鶴橋だって安い買い物ではない。残金で購入すれば全ての持ち金を失う事になる。


 一方でマーガレッタ嬢は、冒険解説職を雇う利点を次々と挙げていく。

「冒険解説職を雇えば、鶴橋はギルドから無償で貸りられるし、鉱山までの馬車には割引が適用されるわ。使えば有料になるけど、回復薬(ポーション)だって貸し出せる。何よりも、報酬を得ながら的確な助言を貰えるのだから、雇わない方がおかしいのよ」

「まぁ………それだけ聞けば、そうだが」

 だが、彼等を雇う事は冒険者として勇気がない者、半人前を高らかに喧伝する事になる。後ろ指を向けられて笑われる事は、俺の矜持が我慢ならない。


 決断できない俺の前で、マーガレッタ嬢の表情があからさまに曇っていく。

「あなた、自分だけは死なない、大丈夫って思ってない?」

「いや、流石にそこまでは………」

 危険と隣り合わせである以上、最も危険度が低い依頼であっても、怪我は付きものである。依頼内容に関係なく、力量に見合わない魔物と遭遇する事もあれば、道を誤って崖下に転落する事も十分にあり得る。雑魚相手とはいえ、打ち所が悪ければ、死ぬ事だって左程珍しいものではない。

 美談や成功体験の裏には、その十倍に匹敵する別れや失敗、大怪我の可能性や経験を含んでいる。冒険者になって初めて大怪我をして学ぶ事が、それである。


「冒険解説職は、依頼者が死にそうになった時のみ、救助者(ライフセイバー)として行動する事が許されているわ。言わば、冒険者保険の上位版ね。確かに報酬は減るし、半端者として笑われるかもしれないけれど………なら、命と天秤にかけても、まだこの職業が必要ないって言えるのかしら?」

 何も言えなかった。

 元より、経験どころか鶴橋がない時点で詰んでいる。

 今の俺には断れる理由が一つもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ