⑤先輩の流儀
シランドが地図を広げ、通路の数と位置から目的地を確認する。
「一番近い採掘場を目指そう。冒険者が少ないならば、近くの採掘場でも十分な鉱物が確保できるはずだ」
距離にして三十分程度。第一層の採掘場とほぼ同じ質になるが、彼は臨時のパーティである事を踏まえ、安全を優先すると決断する。
まだ十分に戦えると考えていた俺の意見とは、真逆だった。同業者がいないからこそ、競争率と換金率の高い鉱石を狙いに行くべきではないのか。
だがここで逆らう訳にもいかず、俺は無言のまま警戒を強める先輩達の傍を歩くしかなかった。
広間に入る度に、俺達は複数の魔物達と戦い続ける。
「リュウさん! 一旦離れてください!」
ロロの声を背中で受け取り、俺は横へと飛び退ける。
「ロロ、ウテ!」
「はい! ファイア!」
事前に詠唱を終えていた彼は、炎の塊を杖から放ち、俺が対峙していた大黒蟻と、こちらの側面を突こうと突撃してきたもう一匹を巻き込んだ。初級の魔法だが、大黒蟻よりも大きな炎は外骨格をごと中を焼き尽くす。
ダッカ―の指示を受けたとはいえ、実にいいタイミングだった。側面を突かれる事を防いだだけでなく、一度の魔法で二匹を仕留める事が出来た。
「これが青銅級か」
一つしか等級が変わらないはずだが、落ち着いた洞察力と冷静な指示で、俺は適度な緊張の下、体力を無駄に消費する事なく、安心して戦えていた。
いつになるか分からないが、俺はあの力量まで到達できるのだろうか。
「………ふん」
鼻息で小さな不安を吹き飛ばす。自分らしくもないと、戦いが終わった広間で長剣
を納めた。
それにしても魔物の数が多い。
シランドが予測した通り、冒険者の数が少ない分、魔物が狩られずに増えているという主張は正しいように聞こえてくる。
「もうすぐ、目標の採掘場だ。そこで一度休憩を取るから、二人とも頑張ってくれ」
「はい!」「………分かった」
不思議と体力の消耗を感じない。連戦といっても、次の広間までに呼吸を整える猶予はある。常に走り続ける訓練の方が余程辛い。
俺は大きく一度だけ息を吐くと、襟首の隙間に指を入れて服と体の間にある空気を入れ替える。流石に肌が汗ばんでいたが、新たに入ってきた冷たい空気が服の中の湿気を追い出した。




