⑩二層へのチャンス
ギルドの定期依頼を解約しても違約金は発生しない。いつ終わるか分からない採掘を待つよりかはと、俺は決断する。
「仕方がない。今日は大黒蟻の素材で—――」「お、そうだ!」
目的を素材収集に切り替えて、少しでも稼ごうとした瞬間。目の前の中年冒険者が声を上げた。
「お前等、今から俺達と下に潜って、鉱石を掘りに行かないか?」
「舌って………だだだ、第二層にですか!?」
ロロは素っ頓狂に驚いたが、俺にとっては渡りに船だった。
中年冒険者が親指で背後の仲間を指す。
「見ての通り、こっちは盗賊と弓手の二人だ。本当はもう一人、回復役の仲間がいるんだが、今日は体調不良で出られなくてな………金は稼ぎたいが無理は出来ないってことで、今回の採掘を受けてきたんだがが」
中年冒険者が俺達を上から下へと視線を流す。
「見た所、お前達は戦士に魔法使い。編成としては悪くないと思うぞ?」
「確かに、悪くはない」
取り敢えず頷き、俺は顎に指を置いて考えを巡らせる。
異なるパーティの臨時編成は、現場で良くある話。互いに採掘依頼という事もあり、達成に向けての効率は悪くない。何よりも、今まで行きたくて仕方がなかった第二層への挑戦が叶う。
加えて彼の口ぶりから、第二層の状況は心得ていると考えられるし、ある意味冒険解説職を帯同していると考える事が出来る。
「分かった。互いの報酬に関与しないという条件なら、構わない」
後出しで、こちらの報酬の何割かを寄越せと先輩面されても困る。
「構わないぞ? 流石に後輩から金を毟る程、大人気ない事はしねぇよ」
中年の男は肩をすくめて首を左右に振る。
そして細い腕を伸ばしてきた。
「俺は盗賊のシランド、後ろの弓手はダッカ―だ。等級は二人共青銅級だ」
「ダッカ―、ダ。ヨロシク」
後ろにいた褐色肌の大男が小さく手を上げる。背中に弓と矢筒を背負っていなければ、ただのスキンヘッド重戦士にしか見えない。
言い忘れたとシランドが苦笑する。
「あぁ、気にしないでくれ、こいつは南の国にある少数部族の出身でな。訛りが強くて聞き取りづらいだろうが、勘弁してやってくれ」
言い慣れた説明に、彼が後頭部を掻きながら最後は小さく笑って見せた。




