⑤単独には重すぎる
「白級のリュウさんで………うーん、因みに、単身での依頼かしら?」
「あぁ、そうだ」
依頼書と俺を交互に見るマーガレッタ嬢の目がどんどんと細くなる。そしてふくよかな顎を撫でると、一瞬迷いながら、一枚の羊皮紙をカウンターに示してきた。
「あなた、冒険解説職って知ってるかしら?」
「そりゃぁ、まぁ」
冒険者を支援するギルド公認の職業。
だが、支援といっても回復や戦闘の手伝いではなく、戦い方や土地に関する情報を安全な後ろから口を出すだけ。代わりに荷物を持ってくれる訳でも、食事の準備をしてくれる訳でもない。その癖、依頼成功の有無に関わらず、きっちりと料金だけは持って行く。
故に『報酬泥棒』、『玉なし冒険者』、『魔物より憎い存在』といった不名誉の称号には事欠かない。依頼の最中、死んだ冒険者ですら運ぼうとしないとまで耳にする、悪名高き職業である。
「あなた、初めて洞窟に潜るのでしょう? それも単身で。どうかしら、冒険解説職に帯同してもらって色々と教えてもらっては」
「冗談だろ!? そんな恥ずか—――」
大声を上げた所で、咄嗟に口を塞ぐ。幸い、背後に人はおらず、遠くで聞こえていたとしてもすぐに視線を戻す者ばかりであった。
深呼吸し、可能な限り冷静に言葉を返すよう心掛ける。
「俺には、必要ありません」
丁寧に、きっぱりと断る。それが最も賢い逃げ方である。
「あら、それならギルドとしてこの依頼は受理できないわ」
説得から始まらず、初手から逃げ道を塞がれた。
マーガレッタ嬢がやや睨むように、しかし丁寧に理由を話す。
「あなたは、このギルドに来て一年。達成率は素晴らしいけれど、こなしてきた依頼の八割以上が、薬草等の収集依頼―――」「いや、俺だって小鬼くらいっ!」
それだけではないと声を挟むが、彼女の右手に阻まれる。
「確かに、小鬼や害獣の討伐も何件か達成しているけれど、それは臨時に編成されたパーティでの成果、単独での成果は殆どないのよ?」
マーガレッタ嬢が避けられる容姿以外の理由、それがこの理攻めである。相手が反論できない事実を並べ、その情報から、まるで一緒に住んでいる母親のように全てを見透かしてくる言動。それを、数々の困難を生き抜いてきた冒険者相手に、堂々と返してくる。




