⑥休日なのに
―――翌朝。
いつもと同じ時間に目が覚める。小窓から入る光はまだ少なく、山の輪郭を照らしているに過ぎない。空気もまだ冷え切っており、種まきの節だというのに、未だ一つ前の寒さを引きずっていた。
「………くそっ」
街の外周を走らなければという義務に近い思考が真っ先にはたらき、脳の中心で胡坐をかいて座る。余りにも自然な流れに初めは違和感を感じなかったが、ようやく今日が特別な日である事に気が付いた俺は、自分の額を二度三度と小突いた。
今日の訓練はない。俺は心中で何度も繰り返す。
さて、ならば今日はどう過ごすべきか。気が付けば俺は、装備を整えて冒険者ギルドの扉をめくっていた。
行き着いた思考が金を稼ぐ。遊ぶ気持ちも、それに必要な資金もなく、かといって何もしない程、落ち着く事も出来なかった。
だが、早朝恒例の依頼の奪い合いが既に終わっている状況で、羽振りのいい仕事が残っているものだろうか。俺は、人の少なくなった掲示板の前に立つと、ゆっくりと左から右へと視線を流していく。
「何もない」
正確には、上位の討伐依頼が何枚か残っているが、俺が受けられる等級の依頼がない。
そんな事だろうと、肩をすくめて粗めの鼻息を吐いた。
ならば、残す仕事は定番の鉱石採掘。ギルド御用達の定期依頼である。
「ま、しょうがねぇか」
俺は慣れた手つきで用紙に手をかけた。
「あ、あのっ!」
幼い声に、呼び止められる。
振り返ると、そこには木製の魔導杖を抱きかかえた少年が立っていた。
上から下へと一往復。首には冒険者の証、色は俺と同じ等級。
少年自身と同じ高さの杖に体重をかけるように彼は腰を曲げているが、それでも俺よりも背が低く、目の殆どを隠すような長く、黄色い前髪、その隙間から見えるそばかす。
強そうには見えない。どちらかといえば、周囲から揶揄われるような印象をもつ。




