⑤成長には休日も必要
―――数時間後。
俺はギルドから受け取った大銅貨と銀貨の束を食堂のテーブルの上に積んでいた。
「大銅貨と銀貨が五枚ずつ。冒険解説職への依頼料を抜いても、これだけ稼げるようになったか」
思わず笑みが零れる。
この稼ぎならば、二日、三日は食事付きの宿に泊まる事が出来る。
「顔に出ているぞ。新人」
冒険解説職としての報告を終えて来たショーンが、テーブルを挟んだ向かい席に着く。
「その名で呼ぶなって言ってるだろ? 俺だって、もう随分と戦えるようになったんだ」
「はっは。そうムキになって返している間は、まだまだ、だ」
「ちぇ」
早く白級を卒業したいものである。そうしなければ、永遠と同じ流れで揶揄われかねない。注文していた料理が次々と並べていく様子を見ながら俺は頬杖をつき、次の段階に進みたい表情を必死に抑え込んだ。
「ぁ、いつもの事だが、明日の訓練は休みだ」
スープの中に隠れていた肉塊を見つけたショーンがスプーンでそれをすくい上げると、下を向いたまま思い出すように口にしてきた。
「毎週の事だからな。多分そうだろうなと思っていたさ」
別段、驚く事ではない。
週末になると、彼は休日も必要だと主張して訓練を行わない。こちらとしても訓練の疲労が溜まっている事に加え、自由な時間が手に入る嬉しさもある為、彼の主張に反論をしていない。
以前、日頃の鬱憤を込めて彼の自宅の戸を早朝から何度も叩いてみたが、その度にティリアが一人で留守を任されていただけで、中には誰もいなかった。
「自主練に励んでも、冒険者として依頼を受けてもいいが、この街からは出るな」
「それも分かっている」
そもそも東にある隣街への移動だけでも、往復の馬車で半日以上かかる。移動にかかる費用も馬鹿には出来ない。特に用がなければ、安宿のベッドで同じ時間横になっていた方が遥かに良い。
「ギルドの依頼を受けてもいいが、知らない場所には一人で―――」「分かってるよ………ったく、あんたは俺のおふくろかっつぅの」
いつもの言葉に辟易する。あれも駄目、これも駄目と言われれば何も出来なくなる。
冗談ではない。俺は一日も早く強くなり、金を稼がなければならない。
雑談の半分以上を占める彼の小言を全て聞き終え、ようやくショーンとの夕食から解放された。
「それじゃぁ、気を付けて帰れよ?」
「あぁ、あんたもな」
最早真面目に怒る気力もない。
俺はショーンとギルド前で別れると、慣れ親しんだ安宿へと足を向けた。




