④未知への挑戦権
「なぁ、これなら二層も―――」「まだ早い」
最後まで言い終えられず、ショーンがぴしゃりと断ち切る。
「何度も言っているが、死因で最も多いのが油断だ。未知の場所に赴くなら、地図、敵の情報、回復薬に食料、水、武具の手入れ………これでもかという位に入念な準備が必要だ」
大袈裟だと思う位が丁度いいと彼が語る。
「確かにここの二層は既に調査し尽くされているし、杞憂で終わる可能性も大きいのだろうが、お前さんには、それが普通だと思って欲しくはない」
このやり取りは初めてではない。俺は何かにつけて、二層への挑戦を口にしてきたが、決まって彼はまだ準備が足りないと言って許可を出してくれない。
「それじゃぁ、何処まで出来たらいいんだよ?」
やや不機嫌な声色で返す。
「二層の敵だけでなく、地図に関する情報収集。装備や消耗品の調達が一人で出来る様になったら、だ」
抽象的な答えが返ってくる。これも、いつもの定型文だ。
そこから先は自分で考えろと言う意味なのだろうが、出来るのならばさっさと具体的な指示を受けて動き出したい。時間や金をかけた挙句、無駄だった、意味がないと後から言われるのは真っ平御免である。
だが、思った事を言えば絶対に怒られる。俺は諦めたかのように溜息を吐くと、鉱石で一杯になった背嚢に手を通して背負い、残りの荷袋を左右の手に持った。
「………終わったよ」
「それじゃぁ、戻ろうか」
敵が現れては荷物を隅に置いて撃退、再度荷物を持って来た道を戻る。これを繰り返す。
大黒蟻は複数で襲い掛かってくるものの、動きは突進を繰り返すだけで単調。体力に余裕があるこの状況ならば、簡単に側面へと回れ、一刀両断の下、無傷で討伐出来る。
気が付けば、出来るようになっていた。
決して油断している訳でもない。だが、この結果が俺の二か月の成長である。




