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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第七章 初級冒険者、特訓を始める
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③体力こそ全て

 ショーンが壁掛けの時計を見上げる。

「食べ終わったら、昼の鐘がなるまでは自由行動とする。買い物に出かけても、そこのソファーでいびきをかいても一向に構わない」

「………ういっす」

 これもいつもの流れ。午後の訓練に備えて、休める時に休む。ショーンの中では休憩も訓練の内だという。

「あ、なら先生! もう一回だけ手合わせを願いますか? さっきの動きで気になる所があったので」

 アルゼットが元気よく立ち上がり、裏庭を指さす。

「お前は休憩という意味が………まぁ、いいが」

 アルゼット(この人)ショーン(あの人)も大概である。

 俺は(ねる)くなった珈琲を一気に飲み干すと、夜な夜な徘徊する死霊の様にソファーへと向かって歩き出し、そのまま倒れ込んだ。

 テーブルの上で気絶していた以前と比べれば、大きな進歩である。



 午後は、実戦形式の訓練。ギルドでいつもの洞窟で採掘作業の依頼を受け、なるべく早く、そして無傷で帰還する事。

 冒険解説職(チュートリアラ―)としてショーンを指名して帯同する事で、お互いの収入に繋がり、かつ訓練としての助言も出せる。万が一には、仕事として彼が救助者として行動できる一石四鳥の方法であった。

 片道に二時間を要していた最初が嘘のように、俺は一時間とかからず背嚢と左右の荷袋に鉱石を溜めて帰れるようになっていた。


「二か月で、作業時間が半分、収入はほぼ倍、か。滑り出しとしては大分順調な方だな」

 午前の厳しさとは変わって、ショーンが珍しく頷き、感心する。

「確かに………自分でも信じられないぜ」

 俺も正直に答えた。

 二か月にわたる地獄の走り込みが、体力の向上に大きく繋がっている事は間違いない。体力が上がるだけで敵の攻撃を避けやすく、また防ぎやすくなった。何より疲労による思考の停滞や安易な行動を取らなくなった。

 何度も手を握っては開く事を繰り返している俺の横で、ショーンが自慢気に語る。

「体力が残っていれば、いざという時に逃げられる。兎角、冒険者は派手な技や魔法に目を奪われがちだが、正直な所、体力さえあれば一つ上の等級くらいは簡単に狙えるのさ」

「………成程」

 訓練を受ける前ならば、話半分に聞いていただろう。だが、実際にその成果を見せられては、彼の言葉に頷くしかない。

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