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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第七章 初級冒険者、特訓を始める
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②異常な訓練、異常な男

「よし、それじゃぁいくぞ。打ち合い百回だ」

 ショーンも木剣を握る。剣と剣が当たれば一回として数えられるが、回避や籠手での防御は数に含まれない。相手の体に当てられれば十回として稼げるが、逆に俺の体に剣が当てられば、罰として数えた一回が減る。分かりやすいが、下手をうてば、地獄の無限回廊が構築されてしまう。

 一気に相手を狙うべきか、それとも堅実に剣を交わしていくか。

 単純な様で、体力と頭をかなり使う。


 俺は木剣を持ったまま、ショーンとの距離を維持し続ける事に専念する。

 初めは、体力のある間に数を稼ごうと躍起になって攻めたが、後半は体力が尽き果て、ついには防御すらままならなくなっていた。

 そして、あの手この手で戦い方を変えた頃に、ようやくこの訓練の意味を理解できるようになる。

 これは、体力を維持しながら戦い続ける訓練である。

「攻めてこない、か。ふ、随分と慎重になったな」

「へっ、あれだけボコボコに殴られれば、流石に考えるさ」

 軽口を叩きながら、僅かでも体力の回復に専念する。

 だが、あからさまな姿は見せられない。いつでも攻めるぞと思わせる様に、半歩単位で足を前後左右にずらし、相手の動きに即応するフリを続ける。


「なら、こちらもそろそろ戦い方を変えるとしよう」

 ショーンが地面を大きく蹴り出し、攻勢に出た。


――――――――――


「………死ぬ。このまま俺は魔物じゃなく、人間に殺される」

 テーブルに突っ伏したまま、俺は呪詛のように怨み辛みを唱えながら、食後に置かれた珈琲を手探りで見付ける。

「まぁ、実際に死因の相手は、半々だからな」

 何事もなかったかのように、対面に座るショーンが二杯目に口を付けた。

「………そういう事じゃねぇって」

 おかしい。絶対におかしい。

 あれだけ打ち合っても、彼には一撃も入れられなかった。

 冒険解説職(チュートリアラ―)は、冒険者を続けられなくなった半端者ではなかったのか。俺の中の常識は既に崩れている。


「いやぁ、やっぱり先生は強いですね!」

 笑ってはいるが、アルゼットも所々に包帯を巻いている。俺との訓練を終えた後、二人はより実戦形式の訓練を狭い中庭で行っていた。

 動きの半分も見切れなかったが、二人の動きはまるで事前に打ち合わせていたかのように舞い、しかしどこかで相手の裏をかこうと不規則な動きも混ぜていた。それすら予定調和の様に立ち回っているのだから、結論として二人が異常である事を叫びたい。

 それでも結果として、彼女もコテンパンと言う言葉がふさわしい終わり方となった。

 やはり、あの男は異常である。

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