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Lost13 無名の青年が無名で終われる物語  作者: JHST
第六章 初級冒険者、試験を受ける
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⑨偶然の産物

 ここまで来ると、戦う以外に最早方法が思いつかない。

 今一度、後ろにいる幼馴染(ティリア)に目を向けた。下を向き続ける彼女と視線を合わせられなかったが、一際震えている事だけは分かる。

 問題は自分自身の事よりも、彼女に傷がつかない事。それは、この試験の条件だからではなく、俺自身の覚悟と誓いからである。

 自分の未来を天秤にかけた上で決断する。試験は失敗と言われるだろうが、強くなれる方法は他にもあると割り切った。


「お前等いい加減に―――」「はい、そこまで!」

 高い声と同時に、男達は白目をむきながら、その場に崩れ落ちた。

 そして、俺の前に立っていた赤髪の女性。

「あ………アルゼット、さん?」

 見知った冒険者に、大きな驚嘆と安堵の息が漏れた。

「あらら。誰かと思えば、リュウ君?」

 鞘に収まったままの長剣(ロングソード)を何度も肩に当てながら、彼女もまた目を丸くさせていた。


 成程。そう言う事か。

 俺は全てを察した。

 途端に体の力がどっと抜けていく。

「まさかアルゼットさんまで登場するなんて………流石に人が悪いですよ」

 順調な買い出しの中での恐喝、そして寸での所で仲裁者が現れる。てっきり、ショーン自身が尾行していると思っていただけに、彼女の登場は本当に予想外だった。

 だが、アルゼットは首を傾げている。

「ん? 一体何の事?」


 会話が噛み合わない。

「あれ?」

 俺も首を傾けた。



――――――――――


「成程。そいつぁ、運が良かったな」

「良くない! むしろ悪かったんだぞ!」

 一時間後。アルゼットと共にショーンの家に戻った俺達は、彼に腕を組みながら笑われていた。精一杯不機嫌な顔を見せても、この始末である。

「悪いが、何もかも偶然だ。アルゼットには何も話していない。これは本当だ」

「………マジか」

 全ては奇跡と偶然の混合物。俺は無理矢理、頭に理解させるとソファーに腰を落とし、項垂れた。

 結局、ショーンが何かを仕掛けるつもりは毛頭なかったようだ。

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