⑨偶然の産物
ここまで来ると、戦う以外に最早方法が思いつかない。
今一度、後ろにいる幼馴染に目を向けた。下を向き続ける彼女と視線を合わせられなかったが、一際震えている事だけは分かる。
問題は自分自身の事よりも、彼女に傷がつかない事。それは、この試験の条件だからではなく、俺自身の覚悟と誓いからである。
自分の未来を天秤にかけた上で決断する。試験は失敗と言われるだろうが、強くなれる方法は他にもあると割り切った。
「お前等いい加減に―――」「はい、そこまで!」
高い声と同時に、男達は白目をむきながら、その場に崩れ落ちた。
そして、俺の前に立っていた赤髪の女性。
「あ………アルゼット、さん?」
見知った冒険者に、大きな驚嘆と安堵の息が漏れた。
「あらら。誰かと思えば、リュウ君?」
鞘に収まったままの長剣を何度も肩に当てながら、彼女もまた目を丸くさせていた。
成程。そう言う事か。
俺は全てを察した。
途端に体の力がどっと抜けていく。
「まさかアルゼットさんまで登場するなんて………流石に人が悪いですよ」
順調な買い出しの中での恐喝、そして寸での所で仲裁者が現れる。てっきり、ショーン自身が尾行していると思っていただけに、彼女の登場は本当に予想外だった。
だが、アルゼットは首を傾げている。
「ん? 一体何の事?」
会話が噛み合わない。
「あれ?」
俺も首を傾けた。
――――――――――
「成程。そいつぁ、運が良かったな」
「良くない! むしろ悪かったんだぞ!」
一時間後。アルゼットと共にショーンの家に戻った俺達は、彼に腕を組みながら笑われていた。精一杯不機嫌な顔を見せても、この始末である。
「悪いが、何もかも偶然だ。アルゼットには何も話していない。これは本当だ」
「………マジか」
全ては奇跡と偶然の混合物。俺は無理矢理、頭に理解させるとソファーに腰を落とし、項垂れた。
結局、ショーンが何かを仕掛けるつもりは毛頭なかったようだ。




