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Lost13 無名の青年が無名で終わる物語  作者: JHST
第一章 初級冒険者、冒険解説職を雇う
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④恐怖の受付嬢

「鉱物、鉱物………よし、これだ。こいつにするぞ」

 後ろめたく周囲を一度見渡し、誰も見ていない事を確認して大きく息を吐く。そして、同じ依頼書が束になって貼られている一枚をめくり、手元で内容を改めて確認した。

「アリアス西部の鉱山洞窟、そこでの鉱物採掘。ギルドからの定期依頼。危険度は青銅半級(ハーフブロンズ)

 森林地帯での薬草採取等、最も簡単で安全な白級(ホワイト)の次、初級冒険者卒業の証である青銅級(ブロンズ)の一つ前の難易度に相当する。単身(ソロ)で受ける事が出来る依頼は、自身の冒険者等級の半級上までと定められており、実質俺が受ける事が出来る最高難易度の依頼となる。


 俺はその依頼書を受付へと提出した。

「うげ」

 思わず声が半分出る。相手は、聞こえているのか聞こえない振りをしているのか、淡々と依頼書の内容と俺の容姿を何度か往復するように、鋭い瞳で比べていた。

 受付の女性は複数いるが、今日に限って中年のマーガレッタ嬢の当番(シフト)だった。通称、『節介焼きの銭失い』と呼ばれ、まるで母親のように誰よりも準備に口うるさく、逆らえない冒険者は軒並み不足している薬品や装備を買わされていく事から、その名が付いている。

 元気の良い若い受付嬢は常に混んでいる。決意の方が上回り、何も考えずに依頼書を空いたカウンターに出してしまった事は、本日最初の不覚となった。


「………それでは、身分証をお願いします」

「あ、あぁ」

 だが、今回は等級以上の準備を済ませている。怒られる理由は一つもないはずだ。それでも脳裏を通過する恐怖が手の震えとなり、俺は首から下げた白色の冒険者証を外してカウンターに提出する。

「んもぉ、そんなに緊張しなくても大丈夫よ。取って食ったりはしないから」

 あらやだと手を前に振られ、朝から中年女性にからからと笑われた。

「ひっ」

 鳥肌が両腕から一斉に現れる。

 マーガレッタ嬢を食事に誘う事が、このギルドの最高難易度だという冗談を酒場の冒険者達から聞いた事があるが、次の日からその冒険者の姿を見た者はいない。そんな冗談にならない話もある。それがホラ話の類だと分かっていても、俺の喉はそれを口にする許可を出さず、黙っていろと言わんばかりに唾が胃の中へと落ちていく。

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